国際的な陰謀に巻き込まれた少年の決死の逃避行を描く傑作コミック『ミラン・K』

ミラン・K ティーンエイジャー編 / サム・ティメル(作)、コランタン(画)

ミラン・K

ロシアの大富豪アンドレイ・コドロフとその家族が、大統領ウラディミール・パーリンによって暗殺される。ただ一人残されたアンドレイの息子ミーシャは、腹心のボディガード、イゴールに守られ、慎ましやかな生活を送っているが、やがて、彼のもとにもパーリンの魔手が迫る。逃亡生活を送るミーシャは、やがて亡父が彼のために、莫大な財産を隠していてくれたことを知る。第一の財産は、莫大な不動産を有する会社を子会社に持つハリケーン社の株。ミーシャは、ミラン・キングという偽名のもと、父親の財産の回収に奔走する。はたして彼は独裁者パーリンに一矢報いることに成功するのか?国際経済・金融界を舞台に繰り広げられる冒険BDの傑作!

この『ミラン・K』、表紙の拳銃を構えた少年の姿や、「ティーンエイジャー編」という副題からジュブナイル系の冒険活劇かと思われるかもしれないが、実際は相当に骨太かつ血生臭い傑作社会派サスペンスなのだ。物語は国家による財産を狙ったロシア富豪一家の暗殺事件に始まり、ただ一人生き残った少年がボディガードと共に身を隠し、世界各国を転々としながら陰謀の真相に迫り、なおかつ殺された家族の復讐を誓う、というものだ。なにしろ物語の最大の敵役がロシア大統領である、という設定から驚かされるが、たった一人の少年を亡き者にするため国家ぐるみで陰謀と殺戮と破壊を繰り返してゆくという展開は、ハリウッド映画でさえいまだ存在しえなかったのではないかと思えるほどに凄まじい。少年はまず軍資金として亡き父が残した莫大な隠し財産を追ってゆく、というのが物語の大まかな流れになるが、ここでもともと映像ジャーナリストであった作者の国際経済・金融業界に対する知識が生かされることにより、単なる陰謀活劇にとどまらず、国際金融のダークサイドと奇妙なからくりをも描いた大変ユニークな作品として仕上がっているのだ。主人公を追撃するロシア政府が次々に築いてゆく死体の山と爆破された瓦礫の数も大盤振る舞いであり、アクション・コミックとしても破格のものがある。その中で主人公は体力だけではなく高い教育に裏打ちされた知識でもって様々な危機を乗り越えてゆくのだ。これまでもその潜在的なポテンシャルの高さを知らしめてきたバンドデシネではあるが、このような作品まで飛び出してくるとはさすがに唸らされるものがある。アクション映画、スパイ・冒険小説の好きな方に是非お勧めしたい。この巻はティーンエイジャー編ということだが、この先にどんな冒険が待っているのか早く読んでみたい。続巻刊行を熱烈に希望する。

ミラン・K

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