デリーの下痢便!?新感覚スラップスティック・クライム・コメディ『Delhi Belly』

■Delhi belly (監督:アビネイ・デーオ 2011年インド映画)


薄汚いアパートで共同生活するボンクラ野郎3人が、マフィアのヤヴァいブツに関わったばかりにさあ大変!?というスラップスティック・クライム・コメディです。そしてこのお話、なんと「下痢便」が物語のキーワードになっている、という大変キチャナイ物語でもあるんです!だってタイトル自体が「デリーの下痢腹」っていうぐらいですから!

ボンクラ3人の名はライターのターシー(イムラーン・カーン)、カメラマンのニティン(クナール・ローイ・カプール)、グラフィッカーのアループ(ヴィル・ダース)。アリやらGやらが(全然関係ないけど『アリ・G』って映画がありましたな)這い回る汚い部屋に住む3人でしたが、ターシーにはソニア(シーナーズ・トレアスリー)という婚約者がおりました。ソニアはターシーに、空港でどっかのオジサンに頼まれた封筒を宅配所に届けてくれ、と頼むんですが、なんとその封筒、下痢便に悩むニティンが病院に送る筈だった検便の容器と取り違えられて配達されちゃうんです。そしてニティンの下痢便が届いた先は、なんとマフィアのアジト!「なんだこのクソは!?俺等のブツはどこだ!?」そう、空港でソニアが知らずに預かったのは、マフィアに届けられる筈だったヤヴァいブツだったのですよ!ブツを取り戻すためにボンクラ3人を追い回すマフィア!ボンクラどもに明日はあるのか!?

次から次へとトラブルが巻き起こり、それらが連鎖しながらとんでもない大騒動へと膨れ上がっちゃう、というこの『Delhi belly』、大変楽しめました。ギャングとボンクラの応酬、というメインの物語だけでなく、最初から様々な小ネタを盛り込まれてており、終始ニヤニヤして観ておりましたよ。そしてこの物語、トッド・フィリップス監督の『ハングオーバー!』シリーズを思わせるハードクライム&ハチャメチャ・ギャグ、といったテイストを感じさせます。歌も踊りもなく、個性的でボンクラな連中が主人公、危ないマフィア連中との巻き込まれ型ドラマ、絶体絶命のサスペンス、銃弾飛び交うバイオレンス、しょーもないギャグ、お下劣で汚くて4文字言葉多用、100分前後というインド映画にしてはタイトな上映時間、その中にたくさんのアイディアを詰め込んで楽しませよう、といった脚本は実に軽妙で、時々「これホントにインドが舞台なの?」と思ってしまうぐらいでした。これそのままハリウッドでリメイクしても面白く出来ちゃうんじゃないかなあ。

ただし、とても面白く出来てはいるんですが、説明不足だったり無理があったり無駄だったり場面が繋がらないシーンがたまに見受けられます。冒頭でソニアが知らずにヤヴァいブツを預かっちゃうシーンは、よく見てないと分かんないし、そもそもどういう経緯でソニアがこんな仕事を引き受けちゃったのかが説明されません。また、マフィアのブツを後先考えずに売り払っちゃっうボンクラ連中も理解に苦しむし、ドタバタを盛り込もうとしたのでしょうが、売っちゃった後からマフィアから「ブツを返さないとお前の女を殺す」とか言われて再びブツを取り戻そうとする、なーんて物語の流れはテンポが悪く感じました。さらにクライマックスであいつ、いつトイレ入ったの?なんてシーンもあったな。とはいえ、そういった惜しい部分はあるにせよ、実に斬新で意欲的な作品であることは間違いありません

そしてこの作品、インド映画ファンなら「おっ?」と思っちゃう俳優カメオ出演しています。エンディング・クレジットで流れる「ディスコ・ファイター」という曲でプレスリーみたいな恰好で歌い踊るんですが、いやー『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』にトム・クルーズが出てきたぐらいにびっくりしたわ…。まあ主演のイムラーン・カーンの伯父さんが製作に関わってるからなあ…。あと多くは語れないのですがニコ動にこの作品が…あ、誰かが訪ねてきたようだ…。