■キャプテン・アメリカ / ウィンター・ソルジャー (監督:アンソニー・ルッソ/ジョー・ルッソ 2014年アメリカ映画)
- 強靭な肉体と強靭な盾を持つマーベル・ヒーロー、『キャプテン・アメリカ』のシリーズ第2作。前評判も高く期待して観に行ったが、面白く観られた部分が半分とタルかった部分が半分。
- アクションは押しなべてよかった。キャプテン・アメリカは超人的な身体能力と最強硬度の盾を持つが、逆に言えばそれぐらいしかウリのないヒーローで、1作目『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』ではそれを「強烈な愛国心」で補ってはいたけれども、『アベンジャーズ』ではその存在が持てあまされ気味に見えた。しかしこの『ウィンター・ソルジャー』では盾のアクションを進化させることで、よりトリッキーかつ強力な戦闘描写を可能にしていた。肉体と盾だけで戦闘機一機撃墜するシーンなどはその真骨頂だろう。
- ただやはり、「盾を拾いにいかないとどうにもならん」のは相変わらずで、この辺後半からまだろっこしく感じてしまった。そろそろ「なにものも突き破ることのできない盾」に合わせて「なにものも突き破る矛」ぐらい持たせてあげてもいいように思えた。
- ポリティカル・サスペンス風味のストーリーにはあまり関心が持てなかった。
- 「誰も信じるな」とは言いながら敵味方の区別はあからさまで、敵か味方か?といったグレイゾーンのキャラクターや敵だと思っていたら味方で、あるいはその逆で…みたいなシチュエーションがあるわけでもなく、そういったサスペンスは期待できない。
- もう一つは現実のアメリカが抱える暗部をポリティカル・サスペンス寄りのアレゴリカルなシナリオで描こうとしたばかりに、SFXスーパーヒーローものの自由さ、荒唐無稽さが殺がれている、といった部分だ。これは個人的な趣味なのだろうが、もうちょっと馬鹿馬鹿しい部分、ヌケのある部分が欲しかった。例えばその点、空飛ぶ翼を持つファルコンの登場はその荒唐無稽さ、馬鹿馬鹿しさにおいて溜飲が下がるのだ。
- 一番白けたのは「S.H.I.E.L.D.の内部に敵がいるってなんで今まで気づかなかったの?」という迂闊さだ。S.H.I.E.L.D.には内部監査というものが無いのだろうか。確かにS.H.I.E.L.D.高官が実は…ということにせよ、それまで数10年に渡り極普通に通常営業してきた筈のS.H.I.E.L.D.が今更のようにいや実はすっかり病根抱えてまして…というのもどうも理解しにくい。
- 作品の中で「S.H.I.E.L.D.」の名前が出されるとき、それはすなわち「アメリカ」のことを暗喩していると取って間違いないだろう。では「アメリカの内部の敵とは何か?」となるとそれは一種の腐敗した構造、あるいは先鋭化した急進的な思想、ということになるのだろうが、この作品では1作目でキャプテンにナニされたアレである、ということになっていて、それだとあくまで外部因子になってしまうからテーマにブレが出てしまうし、今更それを持ち込むのか?と思えてしまった。
- それとクライマックスのあの大破壊は、見た目も派手だしスペクタクルも十分ではあるけど「いろいろ事情もあるのはわかるが相当高くついてるんだろうし全部税金で作ってるんだろうしそれ勿体なくないか?」と妙な心配をしてしまった。まあアメリカ人の税金とはいえ、あんな莫大ともいえる損害出しちゃったら経済的にもいろいろ難儀するんではないのか?普通のアメコミヒーローものでどんなに戦艦やビルが破壊されてもなんとも思わないが、妙にシリアス路線だとそんなこともシリアスに気になってしまうのであった。
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