『ゲーム・オブ・スローンズ』の新作スピンオフドラマ『ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ』を観た

ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ(シーズン1)(U-NEXT) (監督:オーウェン・ハリス、サラ・アディナ・スミス 2026年アメリカ作品)

鉄の玉座から遠く離れた、騎士道と友情を描く小さな冒険譚。『ゲーム・オブ・スローンズ』ユニバースの新作スピンオフドラマ、『ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ』は、ジョージ・R・R・マーティン原作の「ダンクとエッグの物語」(『七王国の騎士』)を基にしたHBOの最新ドラマシリーズだ。全6話で構成され、『ゲーム・オブ・スローンズ』の約100年前を描いている。

ターガリエン王朝が平和を保っていた時代。師匠を亡くした長身の放浪騎士ダンクは、馬上槍試合で名を上げようとアシュフォードを目指す。道中で出会った頭を剃った生意気な少年エッグを従士に迎え、二人は身分を超えたバディとして旅を続ける。しかし、試合を巡るトラブルが決闘裁判へと発展し、ダンクは死を賭した戦いに駆り出されることになる。

「『GOT』の約100年前」と書いたが、それは同時に『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の約100年後ということでもある。ドラゴンは滅び、ターガリエン家が安定した時代を描きながら、エッグが実は……という重大な秘密を抱えるため、後の王朝史(例:ブラックファイアの反乱など)に繋がる伏線が随所に散りばめられている。

『GOT』ユニバースの大ファンとして、配信をとても心待ちにしていた。そして第1話を観始めて、最初はその物語運びに拍子抜けしてしまった。『GOT』や『HOD』と同様の血塗られた暗黒群像劇が展開するのかと思いきや、気は優しくて力持ちの大男と、くりくり坊主の小さな従者とが、真の騎士になるためにコミカルな騒動を巻き起こす、というゆるふわ展開だったのだ。

全体の構成も小ぶりで、1話の配信時間も30分程度と短く、映画をも凌駕する超大作だった『GOT』や『HOD』と比べるなら、まさに「お茶の間サイズのTVドラマ」である。とはいえ、こういうドラマなのだと視点を切り替えれば、これはこれで十分楽しめる。奇妙な二人の珍道中を、ほのぼのと眺めていたのだ。ところが、そこへ波乱が巻き起こる。

時のターガリエン王朝国王の息子、エイリオン・ターガリエンが登場することで、物語は次第にきな臭くなる。残忍で傲慢、かつ精神的に不安定なこの男の陰湿な行為にダンクが否を唱えたばかりに、エイリオンは貴族への謀反を言い立て、遂に死を賭けた「決闘裁判」へとなだれ込んでゆく。騎士の精神を貴んだがゆえに、窮地に立たされる――。その苦渋の決断を迫られるシーンで、『GOT』のテーマが厳かに響き渡る。ここは思わず身を乗り出した。

本作の根幹にあるのは、『GOT』や『HOD』で描かれた陰謀術数や大規模戦争ではない。「騎士道とは何か」という、史劇ファンタジーにおける最も根源的な問いだ。それをストレートに描きながら、庶民目線のコミカルで軽快な冒険譚としてまとめた点に、このドラマの真骨頂がある。ある意味では、『GOT』や『HOD』との差別化が明確になされた構成とも言えるだろう。そういった意味で、本作は独自の魅力を持つドラマとして、しっかりと完成していた。


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