『大神 絶景版』は流麗かつ美麗なジャポネスク・グラフィックが心を洗う大傑作日本神話ゲームだ!


血塗れFPSを愛好し毎晩殺伐としたゲームプレイに勤しむこのオレが最近やっているゲームは、古代日本を舞台にしたワンコロ・アクション・ゲーム『大神 絶景版』なのである(ワンコロではなくて本当は神の宿った白狼なんだけどね)。なぜにそんなゲームを!?と訝しがられるかもしれないが、実はこのゲーム、以前から注目していたのだ。この『大神』、もともとは2006年にPS2用ゲームとして発売されたもので、2009年にはWiiにも移植されたが、今回はそれをPS3用にHD画質でリマスター、『大神 絶景版』というタイトルで販売したものなのである。

あらすじ
日本がまだ神話の時代にあった太古の昔、神木村の人々は怪物ヤマタノオロチに毎年若い娘の生贄を捧げることを要求され、苦しんでいた。英雄イザナギは怪物退治に立ち上がるが、怪物の力はあまりにも強大であり、イザナギは次第に劣勢へと転じてゆく。そこへ現れたのが神秘の力を持つ白狼・白野威(しらぬい)。イザナギは白野威の助力によりなんとかオロチを封印するが、白野威も手傷を負い、事切れる。村を救った白野威を村人たちは「大神」として崇めその像を作って祀った。しかしそれから100年後、オロチの封印が何者かによって破られ、邪悪な魑魅魍魎たちがナカツクニに放たれる。これを憂いた木精・サクヤ姫は白野威を復活させ、「大神アマテラス」としてオロチと魍魎どもの討伐を命じるのだ。

PS2版が発売された時に興味を惹かれたのはその徹底的に和物であることにこだわったグラフィックだ。そして白狼を主人公として操作する、というプレイ・スタイルも実にユニーク、さらに「筆しらべ」というシステムは画面上のグラフィックにコントローラーを操りまさに筆で絵を描くが如くに線を引き、それでもって霊力を発動させる、というのもので、この辺も非常に斬新なものを感じていたのだ。
というわけでHD版発売でやっとプレイすることができた『大神 絶景版』だが、これが最初の予想と想像を遥かに上回る極上の世界観と美しさを持った素晴らしいゲームで、「ゲームをプレイすることの喜び」を再発見したような思いで一杯だ。単にありていの「ジャポネスクぽいもの」を羅列しただけではない非常に深い民話・神話世界をシナリオ構築しており、そして「日本的な美」への高い理解力と再現力を持ったグラフィックはこのゲームでしか堪能できないであろう唯一無二の圧倒的なクオリティを誇っている。墨絵を元にした描線はもとより、大神アマテラスが疾走するその後には次々と花が咲いては消えてゆき、魔物によって汚濁と化した大地を解放した時に画面いっぱいに大量に舞い散る色とりどりの花びらの華々しさ、魔物を封印したり動物たちの世話を焼いた時に幾つもの「幸」という文字が宙に浮かび大神アマテラスのパワーの元となる「言霊」的な概念、これらの演出とコンセプトの確信に満ちた「日本的な美」へのこだわりは、このゲームをほぼ「完璧なゲーム」として完成させているではないか。
ゲーム・システム自体も「宮本茂メソッド」とも呼ぶべき「アイテムを手に入れそれを使用することで少しずつ世界が広くなってゆく」といったもので、いわばゼルダ的な面白さを踏襲した作りになっており、プレイヤーの「この世界の全容を知りたい」という欲求はゲームをいつまでも止められない面白さへと繋げてゆく。ジャンルとしてはアクション・ゲームになるのだろうが、難易度は決して高いものではなく、そのアクションも敵との戦闘に終始するものではなく、村人たちのお願いを聞き届けたり、大地に草木を取り戻したり、アイテム探しをしたりといった、ゲーム世界との対話に重きを置いたものとなっている。そしてなにより、物言わぬワンコロ、もとい白狼、アマテラスが頼もしくもまた実に可愛い。そしてその相棒、小妖精イッスンとのやり取りがまた楽しい。それにしてもよくもまあこれだけ鬼完成度のゲーム作品を生み出したものだ。そしてこのゲームのディレクターというのが『デビルメイクライ』『ベヨネッタ』の神谷英樹氏だというではないか。おいおいなんと…もう【神】って呼ばせてもらっていいでしょうか。


大神 絶景版

大神 絶景版