美少女ファイターは今日もヤツラをブチのめすのだ!

■戦うヒロインが好きなんだッ!

マッハ!!!!!!!!』『トム・ヤム・クン!』で"ワイヤーもスタントもCGも使わないガチファイトアクション映画"*1を世に送り出し、そのあまりにマジ過ぎる痛映像でオレと世界を驚愕させたプラッチャヤー・ピンゲーオ監督の最新作である。しかも今回主人公として暴れまわるのはうら若き女子だというではないか。

主演のヤーニン"ジージャー"ウィサミタナンは1984年生まれだというからまだ20代半ば、若い血潮の熱く滾るお年頃である。いいねえ。いいっすねえ。一見小柄でか細い女の子が巨体の怪力男をあっという間に伸してしまうのを見せられるのってなんでこうも気持ちいいんでしょう。女子の方がそれを見て胸がすくというのならまだしも、むくつけきオッサンであるこのオレでさえ「キャー!やっちゃえやっちゃえー!」と黄色い声出して声援を送ってしまうんである。自分が一般的な女子並みに弱々しい男だからであろうか。まあ見た目は小柄でか細いどころか大柄で太目、平たく言えばピザなんであるが。

しかし考えてみるに、格闘ゲームをやる時のオレというのは、結構女子キャラを使うことが多いのである。ゲーム「バーチャファイター」シリーズでは、オレは一貫してマーシャルアーツ使いのサラという女子ばかり使っていた。なぜならサラは美しくてセクシーだからである。ガチムチで汗臭そうなオトコどもが筋肉ヒクヒクさせながら雄叫びを上げて体を絡み合わせる、という絵が単に嫌いなのである。美しくないのである。汚いのである。オレは美しいものが好きなのである。そして美しいものが勝利することが好きなのである。好きなのよったら好きなのよ!オ〜ホホホッ!そして筋肉ヒクヒクが強いのなんて意外性が無いのである。まぁ〜野蛮ねぇ〜、なのである。だからこそ、美しいヒロインが戦い、勝利する映画が好きなのである。「キルビル」のユマさまとかね!

■オネーチャンは取り立て屋だったッ!?

という訳で映画『チョコレート・ファイター』である。まず日本ヤクザとそれに対立するタイヤクザの情婦の間に子供が出来ちゃうんだな。この日本ヤクザを阿部寛が演じていい味出してるね。で、この子供っていうのがジージャー演じる主人公ゼンなんだが、生まれ付き障害持ってるの。自閉症とかサヴァン症候群とか呼ばれている病気ね。このサヴァン症候群って映画「レインマン」で有名になった、「障害はあるが物凄い能力も持っている」って症例なんだけど、これって多分主人公の飛びぬけた格闘能力に理由付けするための設定なんで、実はあんまり深い意味は無いではないかと思うね。

で、このゼンが、難病になっちゃったお母さんの薬代を稼ぐ為に、お母さんが昔貸したお金を取り立てにいく、というのがこのお話の主題なのである。でもこのお母さんって昔ヤクザの情婦だったわけだから、貸した金って言うのも実はヤミ金なわけで、だからこの映画って、障害のある年端も行かない少女がヤミ金取り立てに行って金を払わない連中を端っこからボコボコにしてゆくという、考えてみれば物凄いムチャクチャなお話なんですね〜!もっとなんか正義とか自己犠牲とか高潔な使命とかあんだろピンゲーオ監督よお〜!

■イタイイタイそれはイタイ!

…とは思ったが、大体監督のピンちゃん、『マッハ!!!!!!!!』は「仏像盗んだヤツはぶつぞう」だし、『トム・ヤム・クン!』は「象を盗んだヤツはゾーッするお仕置きするぞう」だし、そういう駄洒落みたいなストーリーしか作ってこなかった監督なんで、細かいところでいちいち目くじら立てちゃいけないのである。そもそも『マッハ!!!!!!!!』にしても『トム・ヤム・クン!』にしてもそしてこの『チョコレート・ファイター』にしても本当の主役はアクション!なにしろ観客は、一番最初のアクションシーンでジージャーの繰り出す超絶ハイキックを見せられ、「おおおおおおおおお!」と画面に釘付けになること必至だ!

そしてジージャーが戦いに赴くたび、どんどんその舞台は難易度の高いアクロバティックな動きを要求されるものになって行き、たちの悪いヤクザどもと最後の死闘を演じるクライマックスでは、「うあ!」とか「あう!」とか「イタイイタイそれはイタイ!」とか自然と口から出てしまうほど映画に入り込んでいる自分に気付くであろう!「観る」ことが「体感」することに直結する、そんな醍醐味がこのピンちゃん映画にはあるのだ!ホラーなんかでもそうだけど、「苦痛」っていうのは映画を観ているものに物凄くダイレクトに訴える生々しい感覚なんだろな。それを不快ではなく爽快に描くところがこのピンちゃん映画のアクションの良さなんだろうね。

*1:実際は多少ワイヤーを使っている