世界最強格闘映画『マッハ!弐』は超弩級ヒロイック・ファンタジーだったッ!!

■マッハ!弐 (監督:トニー・ジャーパンナー・リットグライ 2008年タイ映画)


滅法強いアイツが帰って来たッ!!ヤツの名前はトニー・ジャー、タイ映画『マッハ!!!!!!!』、『トム・ヤン・クン』でムエタイ最強伝説を作った男!!今回ヤツが引っさげてきた映画のタイトルは『マッハ!弐』!!トニー・ジャー・デビュー作にして超弩級のアクション映画だった『マッハ!!!!!!!!』の続編だッ!今回の舞台はなんとタイの歴史を遡ること600年あまり前まで存在したスコータイ王朝!そこでトニー・ジャーは暗殺された国王のただ一人の息子ティンとなり、生き残った彼を救った山賊団《ガルーダの翼峰》から武術の特訓を受け、父母を殺した逆賊たちに復讐を誓うんだッ!!

アユタヤ王国によって侵略を受けていたスコータイ王国、その王朝末期の時代のタイの情景描写がひたすらエキゾチックなんだッ!基本的にはひたすらジャングル!もとよりタイの歴史のことは何にも知らないオレであるが、だからこそといってはなんだけど、その風景は、見た事も聞いたこともない不思議に満ちていた!登場人物たちにしても、アジアの様々な諸国から集まったと見られる多種多様な人相、服装、文化背景を垣間見せ、その中には、なんと日本人までも存在する!その混沌の度合いは、時代も国家も超越した、「遠い昔、どこかの世界で」という言葉を当てはめたくなるような、なにか架空の世界の出来事のようだ!

そして、その種々雑多な文化・国家を代表する、様々な武術・武具が、この映画の中に登場する!カンフー、ムエタイ、剣術と棒術、サムライの刀技など、これらが渾然一体となり、映画で観られる全ての格闘が、既にして異種格闘戦になっているんだッ!その中で、今回トニー・ジャーが披露するのは、ムエタイとタイの舞踏"コーン"を融合した、《ナーターユット》!!そして映画の中でほぼ半分は、これまでの格闘一辺倒から、刀を使った戦闘を披露している!これまでの作品で見せたムエタイ中心からさらに一歩踏み込んだ、様々な格闘技の坩堝と化した戦場は、これもまた、今まで誰も見たことが無かったような、凄まじい気迫と緊張に満ちているッ!!

そう、遠い昔、どこかの世界で、復讐に燃える孤独の王子が、凄まじい戦闘を繰り広げるこの物語は、実は「剣と魔法の物語」と呼ばれる、映画で言うと『コナン・ザ・グレート』みたいなヒロイック・ファンタジーをテーマとした物語だったんだッ!ヒロイック・ファンタジーという言葉を生み出したL・スプレイグ・ディ=キャンプによると、その定義は「魔法が働き、近代科学や技術がまだ発見されていない空想世界を舞台にした戦いや冒険の物語」ということだが、魔法こそ登場しないけれども、超人的な身体能力を持った英雄と敵役が、善と悪の最終決戦を繰り広げるこの『マッハ!弐』では、その超絶的な格闘技術こそが、ひとつの《魔法》と捉えられないだろうか!?

トニー・ジャー映画の最高傑作にして格闘映画の最高傑作と言ってもいいこの『マッハ!弐』、もはやトニー・ジャーを超えられるものはトニー・ジャーしかいない!と思わせるものがあるが、今回トニー・ジャーは武術指導のみならず原案と監督もこなしている!しかし、ここでただひとつ残念なことがある。クライマックスに次ぐクライマックスを見せるクライマックスだらけのこの映画、本当のクライマックスであるラストで、なんと尻切れトンボのまま終わるのだ!どうも製作サイドとのトラブルや資金難があったらしく、トニー・ジャーの失踪騒ぎまであったという。だから未完成のままの公開となったようだが、しかし案ずることは無い!トニー・ジャーは現在『マッハ!参』の撮影に入っているようだ!『参』ではこの『弐』さえ超える恐るべき最強格闘伝説を披露することになるだろう!刮目して待て!!!