『マッハ!』『チョコレート・ファイター』のアクション監督パンナー・リットグライ監督作品〜映画『マッハ!ニュージェネレーション』

■マッハ!ニュー・ジェネレーション <未>(監督:パンナー・リットグライ 2010年タイ映画)


香港カンフークション全盛時代にそれらの映画をことごとくスルーしてしまった自分にとって、格闘アクションに開眼させられたのはトニー・ジャー主演のタイ映画『マッハ!』だった(実際にはその前にチャウ・シンチー映画をとても面白く観ていたのだが、結局数作観て興味が薄れてしまった)。『マッハ!』は本当にビックリさせられる映画だった。拳も蹴りもマジ入ってるんだもの。綺麗な殺陣を見せるんじゃなくてストレートにぶっ殺しに行ってるんだもの。確かにアクション映画は「本当に打撃が入ってなくたってそれらしく見えればいい」ものなんだけど、トニー界隈のタイ映画って、そこから一歩突っ込んで、「本当にぶっ殺すつもりなんかなくたってぶっ殺しにかかっている様に見えればいい」という所までやっちゃってるんだよなあ。特に頭部を狙った蹴りや膝は見ていて「うわあああ」と怖気だってしまうよ。ドニー・イェンカンフー映画などは観てるともはや芸術的なものさえ感じるけど、タイ映画にはそういった洗練とは無縁な剥き出しで原始的な凶暴性を感じるんだ。要するにね、元気がいいんだ。

この『マッハ!ニュー・ジェネレーション』もタイ製のアクション映画。タイトルに"マッハ!"とは付いてるけどトニー・ジャーは出ていない。でもウィル・フェレル映画の日本タイトルがいつも『俺たち〜』なんて付いているみたいに、タイ・アクション映画になんでもかんでも『マッハ!』と付いたからってオレは気にしない。だって分かりやすいもの。監督は『マッハ!』や『七人のマッハ!!!!!!!』、『トム・ヤン・クン』や『チョコレート・ファイター』、その他多数のタイ・アクション映画でアクション監督を務めるパンナー・リットグライ。映画の中でも最後のボスキャラ役でそのとてもとても怖い顔を見せ、重量級のアクションを披露する。

物語はハリウッド映画出演のオーディションに受かったスタントマン・チームが何者かに拉致監禁されるところから始まる。実はオーディション主催者たちは格闘家にデスゲームを強要し、それを金持ちたちに見せて賭け事をさせる、という犯罪組織の連中だったんだ。逃げられない状況の中、次々と刺客がスタントマン・チームの前に送られてゆく。彼らは刺客を倒し、無事生き延びることが出来るのか?というのがこの映画のお話なんだね。お話それ自体は無理矢理な設定なんだけど、この映画の見所は次から次へと休むことなく繰り出される格闘に次ぐ格闘、戦いに次ぐ戦いなんだ。

それは1対1、1対多数、集団での乱闘などさまざまな形で行われ、その戦いは素手で、武器で、そして車やバイクを使ったエクストリームなもの、さらに火や水を使った戦いまでが用意され、しかもそれら全ての戦いが恐るべきスピードで展開してゆくんだ。金網の中を縦横無尽に虫みたいに跳ね回りながら戦う場面と、デスゲームにかけたのか、映画『デスレース』そっくりな改造車と金属のお面被った敵が出てくる場面が面白かったね。後半なんか走行中のトレーラーの下で戦っちゃったりしてるんだよ!?これらどれをとってもガチンコ勝負な映像に、観ていて「痛いよ!それ痛いよ!」と思わず突っ込みたくなること必至、こいつら命が惜しくないのか?という危ないアクション満載、お話なんか全然ないけど、王道B級格闘アクション路線なこの映画、観終わった後の満腹感は十分補償します!やっぱりタイは元気がいいな!