「失神してみる?」…ハイハイハイ!リナティーのキックだったら何度でも!

■ハイキック・ガール! (監督:西冬彦 2009年日本映画)


チョコレート・ファイター」に続き、今度は日本の格闘少女がワイヤー無しCG無しのガチファイトを繰り広げるという映画である。主演は10歳から空手を習い現在黒帯の武田梨奈17歳だ!じょ、じょ、じょしこーせーだ!でもナメちゃいけない。身長168センチ、すらりと伸びた細い体のいったいどこにそんなパワーが秘められているのかというぐらい一撃必殺のハイキックを披露するぞ!この足がまたなっげーんだ!

物語は空手道場に通う女子高生・土屋圭(武田梨奈)が、なかなか実力を認めてくれない師匠への反抗心から"黒帯狩り"をやってみたり、"壊し屋"と呼ばれる格闘技を使った暴力集団と係わってしまってえらいことになったり、というもんなんだが、物語性は格闘を見せるための方便と割り切ってあんまり期待しないほうがいい。ここでの武田の強さ、というかアクションのキレは、ホンモノの空手家だけあって確かに観ていて小気味いいものがある。勿論「若くて可愛くてそして滅法格闘の強い女子!」という格闘ヒロインとしての華も十分で、今後の活躍にも期待が持てそうだ。

格闘シーンでは技がヒットする度に同じシーンをくどいぐらいスローモーションで再現するのだが、ここは賛否が分かれるところだろう。ただ監督の西冬彦は日本でも「マッハ!!!!!!」のピンゲーオ監督のような格闘映画を撮りたい、という熱意からこの映画を製作したという話で、だからこのスローモーション・シーンも彼が見出した武田梨奈と、自らの元に集った格闘家たちの、その技の美しさを愛するが故のものなのだろう。監督はきっと観客を魅了するより前に自らが魅了されてしまったのだ。そういうオレ自身も何度も繰り返されるスローモーションは決して観ていて飽きることは無かった。

ただ問題も無いわけではなく、特にアクションシーンにおいて、技がヒットする部分をクローズアップさせたいばかりに、戦っているもの同士が妙な画面の切り方をされたり、弾かれたり倒れたりした人間がすぐフレームアウトしてしまう撮影の仕方がいただけなかった。やはりね、敵が無様に地面にくずおれたあとの這いつくばった姿とか苦悶の表情を観たいわけですよ、観客は。それが、技がヒットして倒れた後見えなくなっちゃう。この辺、アクション映画を観る者の心情を察してもらいたかったな。

それと、後半、空手の師匠が活躍しすぎで、まあホント息を呑むような強さなんだけれども、この映画は仮にも「ハイキック・ガール!」と名付けられた武田梨奈主演のアクション・アイドル映画であるわけなんだから、最期まで武田梨奈を活躍さすべきで、この戦いの配分の拙さは観た人が納得しないんじゃないかなあ。西監督はこの師匠役の現役武道家・中達也へのリスペクトも相当高かったのか、"空手の精神"なるものも物語の主題になっているけれど、そういった精神論を並べられるのもちょっぴり辛かった。

西監督の熱意と武田梨奈の実力は十分伝わってきたので、次回は空手の上手な女子高生としてではなく、もっとオトナな武田梨奈のダーティー・ファイトも観てみたいな。

■「ハイキック・ガール!」予告編

http://www.youtube.com/watch?v=A5ycnDa1KF4:MOVIE

映画「ハイキック・ガール!」オリジナル・サウンドトラック

映画「ハイキック・ガール!」オリジナル・サウンドトラック