最近観たDVDなぞなぞ

姑獲鳥の夏 

京極夏彦原作による”京極堂シリーズ”1作目の映画化。
京極夏彦のこのシリーズはかなり好きでよく読んでいるんですが、「映画化」と訊いて「あれ映像化するの?」と思っておりました。映画化困難な超絶的設定とか言うわけではなく、原作って本の半分のページがゴチャゴチャと小理屈述べていることで占められていて、活字として読むのは面白いが、あれ映像化してもどうしようもないだろう、と思った訳です。
でまあ映画なんっすけどねえ。監督の実相寺昭雄は一般的には評価が高いのかもしれませんがオレはどうも苦手で。この人ってシチュエーション端折り過ぎません?それともういい歳のせいだと思うんだけれど、最新の映画技術に付いて行ってないような気がする。20年前でも同じような絵撮っただろうなあ。
配役は撮影決定当時からあれこれ言われてましたが、ファンの多い原作なので誰もがしっくり来る配役というわけにもいかないのでしょうが、オレとしては全体的に若いなあ、というかつるつるした今風の顔ばかりで、昭和中期のちょっと貧乏臭い雰囲気とか出せる俳優はいないなあと思って観てました。これはこの映画に限らず、日本映画って全体的にリアルにまみれた”いい顔”の俳優っていないか使わないんじゃない?層が狭いというか。平べったく言えば”猟奇探偵モノ”なわけでしょ、この原作は?ある意味市川崑通俗的だったが偉大だったのかも、と思った。セットも小奇麗なだけで観るものが無かったなあ。
それとオレだけなのかもしれんがなぜかこの映画、観ていてエヴァンゲリオンが被るんだよなー。何故なんだろうなー。
文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)


■奇談

諸星大二郎の伝奇連作漫画、「稗田礼二郎のフィールドワーク」の一編、「生命の木」が原作の映画。観るともう一編、”神隠し”を題材にした短編漫画を物語に織り込んでいるようだがタイトルは失念した。原作は東北に伝わる隠れキリシタン伝説を材に取り、エデンの園で「知恵の実」ではなく「生命の実」を齧ってしまった別の人類の末裔達を描く、恐るべき想像力に満ちた傑作である。
俳優はどうなんだろう、主人公を演じた阿部寛は幾ら眉間に皺寄せても「TRICK」にしか見えないのがなんとも。ヒロインの藤澤恵麻は実際は素敵な方のようだが、映画では陰鬱な表情や研究者らしい野暮ったい雰囲気を上手く演じており、映画世界に馴染んでいたと思う。あとオババの人は怖かった。それと、白木みのるさんが出てたんですねえ。へえ。
映画に関して2,3言うなら、話を膨らませるために盛り込まれた”神隠し”物語が上手く噛み合ってなくて本筋とちぐはぐな気がした。あと”はなれ”に住んでいた人間達が妙に小奇麗で、原作にあるような廃疾や貧困、汚辱の様を再現して貰いたかった。そういった”汚し”の感覚がないのはホラーとして視覚的につまらない。一回「テキサス・チェーンソー」でも観て勉強するべきだ!ただ、呪いや祟りや霊魂ばかり登場する日本のホラーの中で、伝奇を扱ったホラーが作られることは貴重であり、また、諸星大二郎を原作に映画が製作されるのはファンとして嬉しいものなので、また別の原作で映画化して貰いたいと思った。


(追記)なにぃいぃい〜〜〜!?セルDVDには「映像特典として諸星大二郎・映像インタビュー」だとおぉおぉ〜〜〜!?生・諸星大二郎!!!


真夜中の弥次さん喜多さん

ヤク中でモーホーの弥次さん喜多さんのディープでダウナーな内宇宙への旅。…なのだが、正直乗れまシェンでした。ひたすら軽いから軽く観てしまうのかなあ。所謂小劇場の舞台見せられているような作りで、そういうのが好きな人にはアピールするのでしょうが、自分には一昔前の深夜TVの感触でありました。
合本 真夜中の弥次さん喜多さん

合本 真夜中の弥次さん喜多さん