ちょっと無謀か!?全?京極本 一口レビュー

京極堂シリーズ
姑獲鳥(うぶめ)の夏
姑獲鳥の夏 (講談社ノベルス)
全てはここから始まった。最初読んだときはいきなり延々と認識論の講釈が始まって面食らったもんです。昭和中期の雰囲気がとてもよかった覚えがあります。そして中盤の視覚化不可能と思われる超絶トリック!これ、本当に映画化するんですか?悲劇的なラストも大時代的でよかった。
魍魎の匣
魍魎の匣 (講談社ノベルス)
京極作品の中では一番陰惨で血腥い話のような気がします。丸尾末広の漫画や残虐絵の雰囲気そのままで、逆にその辺のファンには堪らないかも。後味は悪いです。
狂骨の夢
狂骨の夢 (講談社ノベルス)
記憶とは何か?という論議が楽しかった覚えがあります。前作から一変して、薄幸な女の物語でもあり、その淋しげな生い立ちが哀れでした。その分最後の憑物落としが全ての蟠りを綺麗に解した様は鮮やかでした。幕引きが綺麗で読後感がよかった覚えがあります。
鉄鼠(てっそ)の檻
鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)
そもそもこの本で京極夏彦の評判を知りました。この本を読みたい為に1作目の「姑獲鳥(うぶめ)の夏」から遡って読み始め、ここまで辿り着いた時は嬉しかったです。825Pに及ぶ大著であり、しかもその半分のページが「禅とは何か?」に費やされています。凄かったー。その半端じゃない費やし方が。オレはミステリファンじゃないんですが、ミステリのアイディア、質も上質なんではないでしょうか。「雪降る旅館の庭先に忽然と出現した凍った禅僧の死体の謎」、くぅぅ〜〜っ、いいっすね!こういうの。話はどんどんミステリアスに進んで行き、そして辿り着いたのは人も訪れぬ山深くの…ああこれ以上は言えねえ!歯ごたえ十分の1冊です!
絡新婦の理
絡新婦の理 (講談社ノベルス)
829P。前作より4P多いです。多分知っててやってるんだと思います。これだけ分厚いと喧嘩売られているような気になります。喧嘩上等!です。物語のほうは京極版「アッシャー家の崩壊」といったところでしょうか。狂った殺人鬼「目潰し魔」と旧財閥の崩壊は何処で結ぶ付くのでしょうか。そこには悲しく救いようの無い人間の業があったのです…。美しく陰惨で謎に満ちたストーリー。これまでの京極小説の集大成という気がします。オレも京極堂シリーズの中で一番好きな作品です。それにしても胸を掻き毟られるような鮮やかなラスト。
塗仏の宴 (宴の支度)
塗仏の宴 宴の支度 (講談社ノベルス)
613P。しかし、この本は、前編に過ぎなかった!主役を異にする6つの短編が収められていますが、それらはその背後でうごめく1つの巨大な陰謀の断片でしかなかったのです。だからどの物語も気持ちよく終わってくれません。つまり全編不完全燃焼のまま後編を待たなければならないんです。ある意味野心作と言うべきかも。
塗仏の宴 (宴の始末)
塗仏の宴 宴の始末 (講談社ノベルス)
宴の支度は整いました。というわけで後編です。こちらは前編で解き明かされなかった謎を一気に(と言っても635P)解き明かします。なにしろ前編から半年ぐらい焦らされての刊行だったので、貪る様に読んだ記憶があります。なにしろお膳立ては前編で済んでるので、この長さなのに物語の展開がスピーディーに感じたぐらいです。京極小説の面白さがぎゅうぎゅうに詰まっていると言っていいでしょう。お腹いっぱいになれます。
陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず)
陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず) (講談社ノベルス)
超大作だった前作から5年のインターバルを置いて発表されました。今作はシリーズの基本に立ち返ったような気がします。物語りもストレートに進んでゆき、ミステリのアイディアもシンプルすぎるほどです。その為、読んで直ぐネタバレしちゃうのですが、そんな事じゃ京極小説の面白さは半減しません。しかも今回、何より凄かったのは、全749Pある本書の、半分まで読んでも、何一つ事件が起ってないことです!!事件が起っていなくてネタバレしている!それでもグイグイ読ますところが京極小説の恐ろしさです。
京極堂シリーズ番外編
百鬼夜行―陰―妖怪小説
百鬼夜行-陰 (講談社ノベルス)
これまでの京極堂シリーズの様々な物語の、その前、その後を描いた小編集。あの犯人の意外な生い立ちとか、なんかもうひたすら暗い話ばかりで意外と面白いんですこれが。物語というよりもこのほの暗い雰囲気を楽しむ作品ばかりで、ストーリーと言うよりスケッチに近いのかもしれない。京極堂シリーズを読んでいることが前提ですけど、読んでいなくてもこういう雰囲気が楽しめる人はいるかも。
今昔続百鬼―雲
今昔続百鬼-雲 (講談社ノベルス)
直接京極堂シリーズとは係わっていませんが、同時代の物語になります。主人公は妖怪研究家・多々良五郎先生。全編コミカルな展開のものが多いのですが、妖怪と絡められたミステリが実にしっかりしていて、これ、意外と拾い物ですよ。特に男達が夜な夜な消えて行っては、朝ボロボロになって帰ってくるミステリ「手の目」は、あまりに下らなくて可笑しくて死にそうになりました。しかも京極のドタバタ小説の中では一番良く出来ている作品だと思います。何しろ、笑える!雲も霧も晴れた明快な京極妖怪小説もいいものです。
巷説百物語 シリーズ
巷説百物語
巷説百物語 (C・NOVELS BIBLIOTHEQUE)
京極夏彦の新境地。江戸末期を舞台にした“仕掛け人”達の活躍を描く。京極堂シリーズからすっぽりと理屈っぽさを取り除き、文章を簡潔にしたら、意外とこれがマイルド。詰まる所人情話なんですが、江戸風情とマッチしていい味出してるんだこれが。最初は単なる小品集かな、と思ったんですが、“仕掛け人”達のキャラがそれぞれ明確になってくる頃から、作品同士が重合的に絡み合います。
巷説百物語
続巷説百物語 (文芸シリーズ)
前作で、“仕掛け人”達のキャラが紹介し終わり、実はここからがこの作品の真骨頂になるのです。ある意味この「続」が本編ではないかとさえ思います。6つの中短編が収められていますが、後半、気の狂った領主の収める地獄となった土地へと“仕掛け人”達が赴き、ここから猟奇と狂気と悲劇がドロドロに渦巻いた異様で重圧な物語が幕を開けます。そして巨大なカタルシスの満ちたクライマックス。この作品は京極小説の一つの頂点なんじゃないでしょうか。
後巷説百物語
後巷説百物語 (Kwai books)
時は変わり時代は明治。前作までに活躍した“仕掛け人”達はもうでてきません。たった一人の狂言回しだった人物が主人公です。前作までと多少趣を異にするにもかかわらず、これがまた、…面白い。特に1編目「赤えいの島」は強力な幻想小説に仕上がっています。どの物語も人間の愚かさ悲しさを描き、それぞれ読ませます。実に脂の乗った作品集といえるでしょう。そして印象的なラスト。この物語はまだ続くのでしょうか。
その他
嗤う伊右衛門
嗤う伊右衛門 (角川文庫)
東海道四谷怪談」を主題にした、悲劇的なラブ・ストーリーです。怪異は無いにも拘らず、人の心の闇の深さに遣り切れなくなってしまいます。そう、心の闇こそが最も恐ろしい怪異なのです。武家の妻としての誇りと立場を決して捨てないお岩の壮烈な生き方、そして、顔が醜く崩れていようとそんなお岩を何も言わず慕い続ける浪人、伊右衛門。しかし悪意と狂気に満ちた謀略がこの二人を踏み躙り引き裂くのです。名作です。
覘き小平次
覘き小平次
江戸時代を舞台にした人情と悲劇、その第2弾。これは幽霊のように生きる幽霊専門俳優、小平次と言う男の異様な物語です。京極小説は光と闇の中間、昼と夜の狭間、その逢魔ヶ時の薄暗くほの暗い瞬間を描ききるのが得意です。小平次という男は“逢魔ヶ時”そのもののような存在の曖昧なはっきりしない男で、常に押入れに篭っては女房の様子を伺っているような異常な男なのですが、その怪しげな立ち姿から芝居の幽霊専門俳優としてはぴか一の存在なのです。そして、ある男がそんな小平次の特異さに目をつけて…というところから奇怪な事件が語られます。最初は異常に思えた小平次の生き方も、読み進めるとどこか草木めいていじらしく感じてくるから不思議です。そんな彼でさえ、愛情には応えようとする様がまた胸を打ちます。しかし様々な人間の欲望や思惑が絡まり合い、そしてまた悲劇は始まるのです。
ルー=ガルー ― 忌避すべき狼
ルー=ガルー ― 忌避すべき狼
京極夏彦のSF?近未来?小説。悪いけどこれはいただけなかった。近未来の風俗が説得力無いの。タイトルも歯切れが悪くない?
どすこい(安)
どすこい(安)
京極ユーモア小説。もう、なんか、力士に無理やり引っ掛けた駄洒落だけで作られたような短編集。力士に対する偏愛の理由もわからない。この小説もニガテでした。
豆腐小僧双六道中ふりだし
豆腐小僧双六道中ふりだし
3月26日分参照.。
猫田一金五郎の冒険 MEPHISTO COMICS とり みき (著)  ISBN:4063645150
実は京極夏彦が漫画を書いてます!!とり・みき×京極夏彦の合作漫画『美容院坂の罪つくりの馬』です。マンガ的にはちょっと一昔前のセンスですが、それでも器用ですね。京極らしいうそ臭い形而上学を展開したメタマンガに仕上がってます。