有り得たかもしれない幸福な時代を描くMCU映画『ファンタスティック4 ファースト・ステップ』

ファンタスティック4 ファースト・ステップ (監督:マット・シャックマン 2025年アメリカ映画)

4人のスーパーヒーローが力を合わせて戦う物語

特殊能力を持つ4人のスーパーヒーローがチームを組み、人類を脅かす脅威と戦うMCU映画『ファンタスティック4 ファースト・ステップ』(以下『ファンタスティック4』)をIMAXで鑑賞しました。予告編を観た時から非常に楽しみにしていましたが、期待を裏切らない面白さでした。正直なところ、MCU映画にはやや食傷気味だったのですが、この作品を観て「まだまだこのジャンルはいける!」と強く感じたほどです。一体何がこれほど魅力的だったのか、そのポイントをまとめてみましょう。

本作の主要キャストは、『マンダロリアン』のペドロ・パスカル、『ミッション:インポッシブル』シリーズのバネッサ・カービー、『一流シェフのファミリーレストラン』のエボン・モス=バクラック、『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』のジョセフ・クイン。監督は、MCUドラマシリーズ『ワンダヴィジョン』を手がけたマット・シャンクマンです。

【STORY】 宇宙ミッション中の事故により特殊能力を得た4人は、ヒーローチーム「ファンタスティック4」として活躍。世界中で愛され、固い絆で結ばれた彼らは、スーの妊娠を喜びます。しかし、リードのある行動がきっかけで、惑星を食い尽くす宇宙神ギャラクタスの脅威が地球に迫り、滅亡へのカウントダウンが始まります。ヒーローである以前に一人の人間として葛藤を抱える4人は、世界を守るために立ち上がります。

懐かしくて温かみのあるレトロフューチャーな世界観

『ファンタスティック4』の最大の魅力は、これまでのMCU映画のイメージを刷新する、明るくカラフルな世界観が成功していた点ではないでしょうか。物語の舞台は、別の宇宙に存在する地球の1964年。この世界は、まさにレトロフューチャーと呼ぶにふさわしい、懐かしくて温かみのある未来感覚に満ちています。作品全体がこのレトロフューチャーを意識したデザインで統一されており、その美しさと楽しさは特筆すべきものです。

この「もうひとつの1964年」は、現実のアメリカ60年代を基盤としつつも、その暗い側面を排した世界として描かれています。実際の60年代は、冷戦の影や公民権運動、反戦運動など、社会不安が広がる時代であり、50年代までの豊かさへの反動でもありました。しかし、もし偉大なるアメリカ50年代の平和と科学の発展、人々の豊かさがそのまま続いていたら?それが本作で描かれる「もうひとつの1964年」なんです。

それは物語内の宇宙ミッションに象徴されるような、希望に満ちた未来の姿であり、映画に登場する一般市民が貧困や差別とは無縁に、誰もが明るい笑顔で生活する姿でもあります。『ファンタスティック4』の真の素晴らしさは、この「有り得たかもしれない幸福な時代」を映画の中で見事に再現し、観る者に「夢」を見せてくれた点にあるのではないでしょうか。

母としての深い愛情と強大な力

さらに特筆すべきは、「もうひとつの1964年」が、これまでの「マッチョなアメリカ」の延長線上にない、女性の存在が重要な要素として描かれている点です。ファンタスティック4のメンバーであるスー・ストームは、スーパーヒーローとして活躍するだけでなく、一人の母として深い愛情と強大な力を見せつけます。敵役として登場するシルバーサーファーもまた、母親としての強い愛と犠牲心ゆえに闇に堕ちた存在でした。そして、このシルバーサーファーが最初から最後まで圧倒的な強さと格好良さを見せつけているのも印象的です。そういった部分でこの作品は、2人の母同士の戦いと見ることができるかもしれません。

『ファンタスティック4』の物語自体は、特段目新しいものではありません。強力なスーパーヒーローが登場し、危険な敵が現れて世界を危機に至らしめ、最終的にヒーローがそれを排除するという、ありふれた構成です。しかし、この物語の単純さを補って余りあるのが、その世界観の素晴らしさです。それは、有り得たかもしれない幸福な時代の記憶であり、その美しい情景であり、仲間や家族との温かい絆であり、そして母の強い愛です。これらの要素が複合的に作用することで、『ファンタスティック4』は単なるヒーロー映画を超えた、感動的な作品として結実しています。スーパーヒーロー映画の奥深さを改めて感じさせてくれる一本でした。


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