MCU映画『マーベルズ』がなかなか楽しかったぞ。

マーベルズ (監督:ニア・ダコスタ 2023年アメリカ映画)

オレはMCUよりもDC派である。MCU映画もとりあえず全作観ているが、最近のMCU映画はどれも軒並み凡作だった。そこにこのMCU新作映画『マーベルズ』の公開である。前作『キャプテン・マーベル』は悪い映画ではなかったが、それほど思い入れのある映画でもなく、だから劇場はスルーでいいな、と思って忘れていた。だがこの間の週末、特に観たい映画がなく、ふと気が付くと『マーベルズ』の文字が。ああ、こういう時ヒーロー映画は単純にサクッと楽しめていいんだよな、と軽い気持ちで劇場に行ったら。

なんとこれがとっても面白かったんですよ!

《物語》最強ヒーローの名をほしいままにするキャプテン・マーベル、まだ高校生の新参ヒーロー・ミズ・マーベル、新しい力に目覚めたモニカ・ランボー。この3人が、例によって宇宙を襲う未曽有の危機を救うのだ!

さて昨今のMCUは映画とDisney+ドラマにマルチ展開しており、全体の物語が綿密に・あるいは微妙に繋がっている。この『マーベルズ』も過去作やドラマとの繋がりがあるのだが、実際このオレはどこまで観ているのか?というと、

・『キャプテン・マーベル』を含めMCU映画は全部観ている。

・ドラマ『ミズ・マーベル』は観ている。これは面白かった。

・ドラマ『ワンダヴィジョン』は観ていない。

・ドラマ『シークレット・インベージョン』は観ていない。

……という状態なのだが、確かに「これ誰?」「これナニ?」というのは幾つかはあったが(単純に『キャプテン・マーベル』の物語を忘れている、という部分もある)、映画を楽しむうえではそれほど支障はなかった(でもちゃんと全部観ていたらもっと楽しめたかも?)、というのを最初に書いておく。

さて『マーベルズ』はなにがどう楽しめたのか?というと、

・まずなにより、MCUヒーローの中でも無敵にして最強のヒーローであるキャプテン・マーベルが決して完璧なヒーローではない(過去にとある星系で大失敗をやらかしていた)、という描写があったことがよかった。完璧すぎるヒーローはつまらないものだ。そのせいでキャプテン・マーベルも表情や人間味に乏しく感情移入し難い存在だった。ところが今作では笑顔をよく見せるしラフな私服も見せるし笑ってしまう展開もあり、とても親しみやすく、そして愛せるキャラクターになっていた。

・笑ってしまう展開、というのは突然のミュージカル展開や唖然とさせられるニャンニャンワールドの登場など、MCUらしからぬ肩の力の抜けまくったお遊びがあり、ある意味従来的なMCUストーリーへの挑戦のようにも感じた(『ソー』にもコメディ展開が多々見られたが、あそこまでコメディに舵を切っているわけではない)。とても自由で風通しがいいのだ。

キャプテン・マーベル、ミズ・マーベル、モニカ・ランボーの3人のキャラの違い、人間関係、役割分担がきっちり描かれていてこの3人の掛け合いにリズムがあり心地よかった。特にティーンのミズ・マーベルの存在感が素晴らしく、ヒーローストーリーにはやはりティーンの存在は必要だと思わせた。

・物語はこの3人があるパワーのせいでしょっちゅう入れ替わってしまう、という描写が続くが、この描写がドタバタを生んで笑わせ、あるいはスピード感を生んで楽しませ、優れたアイディアだと感じた。

・脇役も含め衣装がよかった。最近、衣装がおざなりに見えるMCU映画が多いのだ。他にも宇宙ステーションやスペースポッド、起動エレベーターなど、きっちりとしたSFデザインだった。

・全体的に女性監督らしさが出ていて、(女性監督だからいいという意味ではなく)男性監督とは違う見せ方がある部分に新鮮さを感じた。

・結局、全体から感じる軽やかさ、フットワークの軽さ、深刻ぶらなさ、そういった部分が好印象だった。

・そして重要なのが、上映時間が105分と最近のMCU映画の中では短いこと。長いのはよくない、短ければいい、ということではなく、重厚長大な作品ばかりだとどうしても疲れるし飽きるし敬遠したくなる。こういうサクッと観られてサクッと楽しめる作品があることは大切。

……よかった部分をあれこれ書いたが、これはMCU映画はこうあるべきだ、という意味ではなく、こういった作品もきちんと存在する事が大事だと思った。それによりMCU全体にメリハリができるじゃないですか。

そんななかなか楽しかった『マーベルズ』でした。MCU映画にはちょっと飽きてきたけど、今回の『マーベルズ』でMCU自体の今後の展開が楽しみになってきた。そういった部分でも良作だった。