最近ダラ観したDVDやら配信やら

アネット (監督:レオス・カラックス 2020年フランス・ドイツ・ベルギー・日本・メキシコ映画

実はオレはレオス・カラックス監督作が苦手で苦手とか言っておきながら作品は殆ど観ているだけでなく処女作『ボーイ・ミーツ・ガール』は劇場で2回も観た(意味が分かんなくて)口ではあるが、この『アネット』も劇場公開当時結構話題ではあったが「カラックスかー」と思いスルー、最近配信になったのでどんなものやらと怖いもの見たさで観てみたらやっぱり無理だった、どこに面白さを見出せばいいのかさっぱり分からなかった、まず主演のアダム・ドライバーアダム・ドライバーにか見えずマリオン・コティヤールマリオン・コティヤールにしか見えなかった、演技は健闘していたのだけれどどこかで「物語の人物」に成り損なっていた、作品はミュージカルらしいのだがミュージカルの必然性を感じなかった、スパークスによる楽曲は悪くなかったけれどもアダム・ドライバーの歌声が申し訳ないんだが聴くに堪えなかった、とはいえマリオン・コティヤールの歌声は良かった、それと途中から主人公夫婦に娘が生まれるのだが、この娘を人形で演じさせていてそれがとても気持ち悪かった、正直ホラーかよと思った、そしてそもそも物語それ自体に全く興味が持てなかった、だいたいあの終わり方は何なんだ、何が言いたかったんだこのオハナシは、と思ってしまった、という訳で今回もやっぱり無理でしたレオス・カラックス、ファンの方どうもスイマセン。

スワンソング (監督:トッド・スティーブンス 2021年アメリカ映画)

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かつてトップ・ヘアメイク・デザイナーとして君臨しながら今は老人ホームで空虚な日々を送る主人公パトリック(ウド・キア)に突然の連絡が入る。それは元顧客だった女性の死、そして彼女の「一流の死に化粧をしてほしい」という遺言だった。物語は、こうして老人ホームから脱出したパトリックの、いわば「徒歩によるロードムービー」であり、そこで見る懐かしい光景への「死に間際にある者の別れの挨拶」であり、さらにゲイであるパトリックの「ゲイという人生を生きた者の死にざま」を描いたのがこの作品だ。それはゲイという人生を選んだパトリックの、「(キャンプに)美しい人生と美しい死に方」を描いたものであり、総じて「人生ってなんだろう?」という映画でもある。ある種の「老人映画」のひとつだが、もはや老境に達しつつあるオレにとっては身につまされるシーンが幾つもあり、オレはゲイではないけれども、ゲイ独特の精神的たおやかさというのは時として心に沁みるものがあり、この映画もとても気に入って観てしまった。ウド・キア自身ゲイらしいが、実は彼の主演したドラァグクイーン映画『プリシラ』もオレは大のお気に入りなのだ。

ドライビング・バニー (監督:ゲイソン・サバット 2021年ニュージーランド映画)

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  • エシー・デイヴィス
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前科持ちで現在貧困生活を送っている女性が娘の親権を取り上げられとんでもない行動に出てしまうというお話。主人公となる女性は正義感が強く間違った事は許せないタイプだが、直情型かつ倫理観も希薄で、後先考えずに極端な行動に出る、そのせいで事件を起こし刑に服したという経緯もあるのだが、こんな感じで性格に強烈なバイアスが掛かっているがゆえに生き難い人生を送っていて、なにしろ人の忠告を聞く事ができず客観的に自分を見る事もできない、哀れだとは思うけれども手を差し伸べる事が非常に困難な人なんだよな。で、そういう人が至ってしまうどうしようもない悶着と不幸な結末を描いたのがこの物語なんだが、ええと、これ観ていったいどうすりゃいいの?という感想であった。

光の旅人 K-PAX (監督:イアン・ソフトリー 2001年アメリカ映画)

「私はK-PAX星から来た宇宙人だ」と主張する謎の男と「はいはい落ち着きましょうね」と言いながら彼の正体を探る精神科医の物語。ケヴィン・スペイシージェフ・ブリッジス主演。物語は謎の男が本当に宇宙人なのか心を病んだ男なのかを解明してゆこうとするが、それがクライマックスまでなかなか分からない作りがよい。これはニコラス・ローグ監督作『地球に落ちてきた男』やジョン・カーペンター監督作『スターマン』、あるいはカルト映画『ブラザー・フロム・アナザー・プラネット』の系譜を継ぐ「孤独な宇宙人」の物語の変奏曲であり、あるいはこの世界の暮らしに馴染むことのできない「孤独な自己」の物語としても捉えることができるのだ。そういうオレもたまに「オレはこの地球にたまたまやってきた記憶喪失の宇宙人じゃないか?」と思う事がある。

ラスト・ブラッド (監督:クリス・ナオン 2009年香港・フランス映画)

60年代の日本を舞台にオニと呼ばれる吸血鬼軍団と謎の少女サヤが血で血を洗う抗争を繰り広げるというアクションホラー作品。アニメ『BLOOD THE LAST VAMPAIRE』を『猟奇的な彼女』のチョン・ジヒョンと日本のモデル小雪の主演で『キス・オブ・ザ・ドラゴン』の監督により実写化したもの。いわばケイト・ベッキンセイル主演の『アンダーグラウンド』シリーズの日本版だと思ってもらえばヨロシ。日本が舞台だけど香港・フランス映画なので「変な日本」が奔出しまくり、「変な日本」大好きのオレはニマニマしながら観ていた。在日米軍子女の学校にセーラー服で転校してくる主人公ってどうなのよ!?全体的に端折り過ぎたようなお話ではあるが、奇想天外で血塗れの物語もワイヤーを使った香港アクションも実に楽しく、古びた日本の通りで刀を振り回して吸血鬼の群れと戦うセーラー服主人公の姿は狂ったタランティーノ映画を見せられているようで最高。これはなかなかの快作ではないか。

デンデラ (監督:天願大介 2011年日本映画)

姥捨て山伝説を下敷きに、70歳になると山に捨てられる慣習の村から捨てられた老婆たちが実は生き伸びて共同体を作り、村への復讐を企てていた所を人喰い熊の襲撃に遭い血塗れの攻防を展開するという物語。粗筋だけなら如何様にも面白くなりそうなところを映画自体は演出の拙さ構成の拙さ設定の拙さが噴出しまくり、一緒に観た相方は激怒していたぐらいだった。まず70過ぎたババアの集団が復讐に燃え戦闘訓練するのか?という基本的な問題もあるが、それ以前にババアどもを魅力的に描かなきゃ駄目だろ。汚いババアが屁っ放り腰で熊に突撃したって少しも盛り上がらないよ。監督は目先のスペクタクルを優先するばかりに登場人物への共感を御座なりにし過ぎたんだよ。とまあ映画としては駄目なんだが、この物語の持つアレゴリーというのは、高齢者問題や生の尊厳といった部分で、製作された2011年よりもこの2023年の現代にこそまさに同時性を持っており、今映画化されたらもっと議論を呼び起こしたんじゃないかと思うんだよ。映画に登場したババアたちは「もっと生きたい」と言う、その時社会は何ができるだろうって話なんだよ。だからネトフリで誰か企画書出せよ。おらおら。