車に仕掛けられた爆弾を巡る緊張感溢れるサスペンス作!/映画『ハード・ヒット 発信制限』

ハード・ヒット 発信制限 (監督:キム・チャンジュ 2021年韓国映画

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「お前の車に爆弾を仕掛けた。車から降りても通報しても爆破する」。二人の子供と共に車を乗った銀行支店長ソンギュの元にそんな電話が掛かってくる。「なにを馬鹿な……」そう思ったソンギュの目の前で、同じく脅迫を受けたという同僚の車が爆破された!韓国映画『ハード・ヒット 発信制限』はそんな異様な状況の中で突き進んでゆくサスペンス作品である。

主演は『SEOBOK/ソボク』のチョ・ウジンと『操作された都市』のチ・チャンウク。監督は『The Witch 魔女』『ミッドナイト・ランナー』などの編集を手がけたキム・チャンジュ。作品は2015年製作のスペイン映画『暴走者 ランナウェイ・カー』のリメイク作であるらしい。また、タイトルにある「発信制限」とは犯人から掛かってきた非通知電話=発信番号表示制限電話のことだとか。

映画が始まって早々に爆弾による脅迫が描かれ、そこから約90分に渡り延々と凄まじい緊張を孕んだまま物語は爆走してゆく。おまけに同僚の車が爆破した際、その破片により幼い息子が大怪我を負い、血を流しがらどんどん衰弱してゆく。しかし犯人は病院に連れてゆくことも拒否、しかも要求する身代金はおいそれとは捻出できない額で交渉も成り立たない。さらに爆破事件を捜査する警察がソンギュの車を特定し追い回す。八方ふさがりのソンギュに打開策はあるのか!?

とんでもない緊張感に満ち満ちたこの作品、映画館で観ていて胃はキリキリ・心臓はバクバクで「うおおこりゃヤッベー」と主人公のみならず自らの心身の危機さえ覚えてしまった。「爆弾による脅迫」から始まった物語は、それに加えて次から次と危機的な状況を作り出し、決して緊張を途切れさせないのだ。「一難去ってまた一難」どころか、その危機はどんどんと積み重なって雪だるま式に膨れ上がってゆくのだ。もはや出口なし、逃げ場なし、とことん主人公を追い詰めてゆくサディスティックともいえるシナリオが光る作品だ。そのサスペンスをふんだんに盛り上げる重低音の効いたBGMがまたひたすら怖くていい。これなどは是非劇場で体験するべきだ。

後半にかけてはサスペンスとなるべきネタが尽きたのか、少々練り込み不足の展開が目立ち、若干失速気味になるのだが、それでも映画総体としては十分に及第点以上の出来となっているだろう。また、主人公ソンギュの第一印象がどうにも胡散臭く、「こいつ実はなにかやらかして恨みを買ってるんだな」と観客誰もがうっすら気付いているだろうが、その真相が明らかになる段階でまた別のドラマが盛り上がるもいい。危機的状況の中に置かれた子供たちの健気さがまた胸を打ち、親子の絆で盛り上げる韓国映画らしさも悪くない。予告編を観ただけだとネトフリ映画レベルの小品に思えるが、決してそんなことはない堂々たる娯楽作だった。

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