オレ的戦争映画ベストテン!

■ワッシュさんの「戦争映画ベストテン」に参加するよ

ワッシュさんのブログ『男の魂に火を付けろ!』年末恒例企画である映画ベストテン、今年のお題である『戦争映画ベストテン』に参加したいと思います。
個人的には「戦争映画」というジャンルそのものに特に思い入れがあるわけでもないので、「戦争映画として優れている」というよりも「面白かった映画で戦争映画だったもの」のランキングになりました。ただそれだけだとポピュラーな作品ばかりになって面白くないので、ハリウッド作品を中心とする戦争と戦時下を描いた作品5作と、ヨーロッパ映画を中心とした戦争そのものから若干離れた表現のもの5作を選んでみました。それらは内戦を扱った作品、SF、コメディ、超現実的な作品、戦後の人々の心情を描いた作品が含まれます。
優れた戦争映画は数ありますが、自分は悲惨さのみを取り上げた作品というのはどうも苦手で、こうして並べてみると戦争それ以外のドラマがある作品が多かったような気がします。それでは行ってみよう!

■1位から5位

第1位:地獄の黙示録 (監督:フランシス・フォード・コッポラ 1979年アメリカ映画)

コッポラのあまりに有名なこの作品、冒頭の凄まじさこそ目を引きますが、後半にいけば行くほどグダグダになってゆく啞然とするような映画でしたね。しかし何度も観ていると、後半のこのグダグダこそが面白い。戦争そっちのけでインナートリップしてゆくんですよ。戦争の狂気だの不条理だのといったお題目よりも、このいびつさと混乱をそのまま映画にしちゃったところが凄い映画だなあ、と思います。 (レヴュー:『地獄の黙示録 3Disc コレクターズ・エディション』Blu-ray買った - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

第2位:フルメタル・ジャケット (監督:スタンリー・キューブリック 1987年イギリス/アメリカ映画)

やっぱりこの映画は前半のハートマン軍曹ですね。この傑出したキチガイを描いた部分で秀作なんですね。で、こんなキチガイなんて、よく探せば結構社会にいるもんなんですよ。戦争の狂気なんかじゃなくて、人間の社会はこの程度の狂気をホントはどこかに内包していて、それをあからさまにしたのがこの映画なんじゃないかと。だから後半の不条理劇は割とどうでもよかったですね。ただしミッキーマウスは最高。

第3位:シンドラーのリスト (監督:スティーヴン・スピルバーグ 1993年アメリカ映画)

ヒューマニズムを描いた作品ではありますが、ヒューマニズムだけなら別に面白くもなんともないんですよ。同じスピルバーグの『プライベート・ライアン』が冒頭以外は凡作だったのはヒューマニズムに寄っちゃったからでしょうね。じゃあこのシンドラーは何がよかったってその虐殺ぶりですよ。下手なホラー映画より陰惨でしたね。そして人間なんて時と場合によってはこの程度の残虐さを容易く発揮しちゃうもんだと思いますよ。

第4位:イングロリアス・バスターズ (監督:クエンティン・タランティーノ 2009年アメリカ/ドイツ映画)

これはタランテイーノらしい演出が楽しい映画でしたね。戦争映画ってのはいつ殺されてもおかしくはない状況への緊張と恐怖が描かれますが、同時に戦争という理由があればどんな人間でもどれだけでもぶっ殺せるやりたい放題の愉快さもありますよね。別に戦争が題材だからって悲惨とヒューマニズム描く必要はないんですよ。大虐殺する楽しみだって描いたっていいんですよ。 (レヴュー:いいナチスは死んだナチスだ!〜映画『イングロリアス・バスターズ』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

第5位:ブラックホーク・ダウン (監督:リドリー・スコット 2001年アメリカ映画)

なにしろ延々と銃撃戦ばかりしている映画で、最初に観た時は物語が全然無くてつまらなかったんですが(おまけに銃撃戦の音がうるさ過ぎるし)、なんだか気になってもう一度観た時にこの「物語無しで延々銃撃戦」という内容が段々気持ちよくなってきましたね。なんかもうとことん殺伐としてるんですよね。この殺伐さをひたすら味わうという部分で面白い映画でしたね。

■6位から10位(さらに次点)

第6位:アンダーグラウンド (監督:エミール・クストリッツァ 1995年フランス/ドイツ/ハンガリー映画)

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ドイツ侵攻とその後のユーゴ内戦にかけて20年に渡り地下に隠れ住んでいた人々を描くこの物語、戦争や国家分断の悲劇が物語の背後にはありますが、それよりもクストリッツァ監督のマジックリアリズム的手法が大爆発した非常にファナティックかつシュールな物語に仕上がっている部分が凄いんですよ。そしてこの幻視に溢れた光景は、現実の悲惨さを突き抜ける為のものだったのだろうと思う。 (レヴュー:これぞ映画だ。〜エミール・クリストリッツァ畢生の傑作映画『アンダーグラウンド』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

第7位:キリング・フィールド (監督:ローランド・ジョフィ 1984年イギリス映画)

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1970年代のカンボジア内戦により政権掌握したポル・ポト政権による大虐殺を描いた作品です。その犠牲者は70万〜300万人にのぼるといいます。実は自分、そういった史実を何も知らずにこの映画を観たものですから、その凄まじい殺戮の嵐に心底魂消てしまったんです。もうどこもかしこも死体と白骨の山。そしてこれを観て思ったのは、もっと歴史を知らなければならないということでした。

第8位:スローターハウス5 (監督:ジョージ・ロイ・ヒル 1975年アメリカ映画)

稀代の名作家カート・ヴォネガットの小説を原作としたこの作品は、第2次世界大戦中に2万5千人とも30万人とも言われる死者を出したドレスデン爆撃の悲惨をその中心として描きます。特筆すべきは現在過去未来を慌ただしく行き来する奇妙奇天烈なその構成であり、しかもSFであるということなんです。そして物語の核心にあるのは戦争に翻弄される人間存在の無力さであり人生の無常です。しかしそれでも生きてゆく為に希望を持とうとする部分で胸を打つ作品なんです。 (レヴュー:生きることのニヒリズムを超えて〜映画『スローターハウス5』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

第9位:まぼろしの市街戦 (監督: フィリップ・ド・ブロカ 1967年フランス/イタリア映画)

第一次大戦下にあるフランスのある町、爆弾を恐れて全ての住民が逃れたその町に残っていたのは精神病院患者だけだった、という物語です。戦争という"異常"が"日常"となった世界と、"妄想の中に生きる人々"だけが残されたことにより"妄想"が"現実"として取り扱われる町とが対比され、非常にアレゴリカルな構造を持った作品として完成しています。同時にそれは目を覆うような戦争の悲惨からどこまでも逃避し、そうあるべきだった真正な世界を夢想しようとする悲しい物語でもあるのです。 (レヴュー:まぼろしの市街戦 / 監督: フィリップ・ド・ブロカ (1967年 フランス・イタリア) - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

第10位:イーダ (監督:パヴェウ・パヴリコフスキ 2013年ポーランド/デンマーク映画

ホロコーストを描いた戦争映画は数ありますが、しかしそれはどこか「ホロコーストの消費」へと形骸化しているように自分は感じます。戦後70年が経った今でもヨーロッパはホロコーストの呪縛から逃れられないのでしょうか。そんな中映画『イーダ』はホロコーストを経た後に生きる人々の心情を描き、ポスト・ホロコーストの物語として特筆すべき作品であると思います。 (レヴュー:ホロコーストを乗り越えた未来にあるもの〜映画『イーダ』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ)

次点:吾輩はカモである  (監督:レオ・マッケリー 1933年アメリカ映画)

我輩はカモである [DVD]

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戦争をブラックな笑いで描き、その狂気を浮かび上がらせる作品といえばキューブリック監督作『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(1964)を真っ先に思い浮かべますが、この『吾輩はカモである』は主演のマルクス兄弟自体が既に狂っているので「戦争の狂気」どころかただひたすら「頭がおかしい」作品に仕上がっています。戦争への批判も当然盛り込まれているのでしょうが、戦争すらも「ネタ」でしかないマルクス兄弟のとんでもないスラップスティックぶりが楽しい作品だと言えるでしょう。まあとりあえず今回の「オチ」ということで。

■まとめ

という訳で集計しやすいように一覧にまとめておきました。ではワッシュさんよろしく!