ウッソーッ!?アタシ、殺人鬼と体が入れ替わっちゃったッ!?/映画『ザ・スイッチ』

ザ・スイッチ (監督:クリストファー・ランドン 2020年アメリカ映画)

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「うっそーッ!?わたしたち、入れ替わっちゃったーッ!?」 という「入れ替わりテーマ」の物語ってありますよね。これ、二人の人物の心と体が入れ替わっちゃってサア大変!?というお話なんですね。オレなんかは大林宣彦監督の『転校生』が頭に浮かんじゃう年寄り映画ファンなんですが、調べたら「入れ替わり映画」とか「入れ替わりドラマ」なんて検索ワードで山ほど作品が出てくるので相当お馴染みのジャンルという事になるんでしょう。

さて今回紹介する『ザ・スイッチ』、いたいけな女子高生と凶悪なシリアル・キラーの心と体が入れ替わっちゃう!?というトンデモなお話となるんですね!心が女子高生の殺人鬼のおっさんが「もーやだー!」とか言いつつ逃げ惑い、心が殺人鬼の女子高生が「ぐひひ!殺して殺して殺しまくったるわ!」とほくそ笑む、得も言われぬドラマが展開するのが本作なんですよ!製作は『透明人間』『ゲット・アウト』などを数多手がけたジェイソン・ブラム、『ハッピー・デス・デイ』シリーズのクリストファー・ランドンが監督を務めています。

さて物語。主人公は家でも学校でもうんざりした毎日を送っているイケテナイ女子高生ミリー(キャスリン・ニュートン)。ある日帰宅時間の遅くなった彼女は、今巷を騒がす連続殺人鬼ブッチャー(ビンス・ボーン)と遭遇、抵抗の甲斐なくナイフで肩を刺されます!しかしなんとその時、突然異世界との扉が開いた!?気が付くと、ブッチャーの心はミリーの体に、ミリーの心はブッチャーの体に入れ替わっているではありませんか!?理由はどうやらブッチャーの持っていた呪いのナイフのせいらしく、24時間以内にもう一度ナイフで体を突かなければ元に戻らないことを知ってしまいます!

なによりこのオハナシ、「女子高生の心を持った小汚いおっさん(殺人鬼)」と「殺人鬼の心を持ったうら若い女子高生」の、あまりに極端な見た目と行動の落差を楽しむコメディ作品として観ることができるんですね。おっさんの姿と化したミリーは「あいつは殺人鬼だ!」と通報されキャアキャア言いながら逃げ回り、女子高生となったブッチャーはか弱げな姿に身を隠して次々と殺人を犯してゆくんです。

面白いのは、「ミリーになったブッチャー」が殺すのが、かつてミリーをイジメていて連中で、ある意味「ミリー自身の復讐譚」となっている部分なんですよ。逆に「ブッチャーになったミリー」は、大きな体躯と鷹揚な仕草を持つ男になることで、今まで苦手だった世界が若干違ったものに見えてゆきます。別人になる事で確執のあった母の心情を理解することができるようになったりするんですよ。

この部分も含めて、この映画はミリーの家族の再生を描く物語ともなっています。実はミリーは父を失い、母は気落ちした毎日を過ごし、姉はそんな現実を忘れようと仕事に忙殺されています。そんなミリーの家庭が、どのようにもう一度結びつき合ってゆくかがサブストーリーとして存在しているんですね。その切っ掛けになるのが、皮肉にも殺人鬼との入れ替わり事件だった、という事なんですね。同時に、イケテナイなりにミリーを信頼し、殺人鬼と体が入れ替わった後もミリーを手助けする二人の友人たちの、篤い友情の物語も見逃せません。

物語的に言うなら、冒頭においてたっぷりスラッシャー描写を見せた後はそんなに殺戮シーンが描かれなくて、ガッツリしたホラー要素を期待すると少々物足りなく感じさせるかもしれません。殺人鬼の心も女子高生のか弱い肉体に宿っちゃうと力にものを言わせた行動に出られなくなって、その部分でこじんまりしちゃうっていう部分も、仕方ないっちゃあ仕方ないんですが、もっと別のアプローチがあってもよかったかな、と思えましたね。とはいえ、ユニークな「入れ替わりテーマ」の物語として十分見所を兼ね備えた映画ではあったと思えましたよ。

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