■ラ・ラ・ランド (監督:デイミアン・チャゼル 2016年アメリカ映画)
- 『ラ・ラ・ランド』、やっと観れた。公開前から楽しみにしていたのだが、まだ引っ越し後の整理で忙しくて、なかなか劇場に行くことができなかった。というわけで3月も終わりになろうという時やっと時間が空き、レイトショーで観ることができた。
- 楽しみにしていた映画だったが、不安材料もあった。予告編を観た時、キモである筈のミュージカルシーンが、なんだかつまらなかった。監督のデイミアン・チャゼルというのも、なんだか引っ掛かった。『セッション』は観ていないが、その評判からオレの敬遠したい部類の映画であることがありありと分かった。
- で、ラララを観た感想だが、まあ、悪く無い。しかし、特に良くも無い。そこそこには楽しんだが、半分ぐらい退屈だった。退屈だったのは、ミュージカルシーン、その歌と踊りの殆ど。このミュージカル映画、ミュージカルじゃ無かったら最高だったのにね!とすら思った。
- 踊りには躍動感が感じられず、歌は説得力が無く、衣装はミニマリズムに頼り過ぎて詰まらなかった。ロケーションは綺麗だったが、観光マップを見ているみたいな薄っぺらさを感じた。お話は出会って恋をした二人が、それぞれの夢を掴んだことにより忙しくなり破綻する、というもので、ありきたりではある。
- きちんと丁寧に作られているのは理解できるが、突き抜けたものがない。この作品というのは、昔ながらのミュージカルっていいよね、で、昔ながらのジャズっていいよね、で、昔ながらのラブストーリーっていいよね、で、温故知新の役割もあるのだとしても、全体が保守的に感じるのだ。これって今のアメリカを反映しているのか?
- ただ否定批判ばかりしていても建設的じゃないので、この映画は何だったのかなあ、と考えてみる。オレはこの映画は、監督デイミアン・チャゼルにとっての『マトリックス』だったんじゃないかと思う。
- 『マトリックス』は、クンフーとコミックとSFがごった煮になり黒装束の麗人が登場する、監督したウォシャウスキー兄弟の「好きなものテンコ盛り!」といった作品だ。同様に『ラ・ラ・ランド』は昔ながらのミュージカル、ジャズといった監督デイミアン・チャゼルの好きなもので構成されている。
- 『マトリックス』はそのクンフー・シーンが注目されたが、コアなクンフー映画ファンの幾ばくかからは「あんなの本場のクンフー映画に比べたら子供騙しだよ」という意見もあっただろう。同様に『ラ・ラ・ランド』のミュージカルシーンは「あんなの本物を知らない人向けだよ」といった意見もあるようだ。
- だが誰もがコアなファンであるわけもなく、さらにどちらの作品も「一般客に改めてその楽しさを知らしめた」という役割は十分負っていただろう。そういった「掘り起こし」と「組み合わせ」の妙味が両作にはあるのではないか。両作に絶大な評価があるのはそういった部分からなのではないか。
- 『ラ・ラ・ランド』でよかったのはそのクライマックスだ。それまでミュージカル・ラブストーリーとして展開してきたお話が、いきなり『インターステラー』みたいに時空を飛び越えるのである。いやあれはおったまげた。監督は実はこのクライマックスから作品を発想して、そこから物語を構築したのではないかとすら思った。
- 『インターステラー』はSF作品だが、この『ラ・ラ・ランド』もこのままSF展開でラストまでゴリ押しすりゃあよかったんじゃないか、とド腐れSFファンのオレとしては思った。そんなことしたら作品的に大いに破綻するのは目に見えているが、そのぐらいの「ハッチャケ振り」が、若干32歳というまだ若いこの監督には必要だったんじゃないのか。
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