■最強のふたり (監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ 2011年フランス映画)
まともに介護なんかやったことのないスラムの黒人青年が、全身麻痺の大富豪の介護を任される、というヒューマン・コメディです。介護とか社会格差とかいろいろな問題を孕んでいる物語ではありますが、堅苦しい話は抜きにして大いに笑うことのできる作品でした。ロウアークラスの生まれとはいえ、黒人青年はいつも飾らず気取らず委縮することもなく、等身大の姿で大富豪の看護にあたるんですが、大富豪もそんな黒人青年の気安さ、そして自分の人生を謳歌する態度に次第に気持ちを開いてゆくんですね。
そしてこの映画が面白かったのは、そういったヒューマニスティックな部分よりも、あからさまな身体障碍者ネタで笑いをとっていることなんですね。でもそれは障碍者を馬鹿にしているとか下に見ているとかではなく、俺とあんたはこんだけ違うけど、でもあんたの人間性は微塵も否定しないぜ、といった態度がきちんと描かれているんですね。この、自分と他人は違って当たり前、という部分が同調圧力ばかり強いどこかの国とは雰囲気違うんだと思います。(それにしても今「障害者」って入力しようとしたら「障碍者」って変換しやがるんですね。今こっちの言葉で使われてるんだ?)
ただ、とてもよくできていたし素晴らしい映画ではあるんですが、「やっぱ病気したりなんだりして体効かなくなったら、最後の頼みの綱は金だよねー」としみじみ思わされましたね。社会保障制度の違いもあるとは思いますが、同じく全身麻痺の主人公を描く映画『潜水服は蝶の夢を見る』を観たときも「こんだけきちんと介護受けられるのは金持ってるからなんだろうなあ」と思いましたもん。いやあ世知辛いこと書いてスイマセン。
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