NOPE/ノープ (監督:ジョーダン・ピール 2022年アメリカ映画)
「空に何かいるけど空を見ちゃいけない!」というホラー?サスペンス?SF?な映画『NOPE/ノープ』です。2022年に結構話題になった作品で、オレも興味湧かなかったわけでもないんですが、以前監督ジョーダン・ピールの第1作『ゲット・アウト』を観たけどどうもイマイチだったもんですからね、劇場スルーしてついこの間やっとレンタルで観たんですけどね。というわけで公開から時間も経ってますが、ネタバレはなるべくしないようしてに感想を書きたいと思います。
田舎町で広大な敷地の牧場を経営し、生計を立てているヘイウッド家。ある日、長男OJが家業をサボって町に繰り出す妹エメラルドにうんざりしていたところ、突然空から異物が降り注いでくる。その謎の現象が止んだかと思うと、直前まで会話していた父親が息絶えていた。長男は、父親の不可解な死の直前に、雲に覆われた巨大な飛行物体のようなものを目撃したことを妹に明かす。兄妹はその飛行物体の存在を収めた動画を撮影すればネットでバズるはずだと、飛行物体の撮影に挑むが、そんな彼らに想像を絶する事態が待ち受けていた。
「空に何かいるけど空を見ちゃいけない!」というこの映画、「空にいる何か」というとやっぱり『未知との遭遇』みたいなUFO映画かな?と思っちゃうじゃないですか。でも映画の宣伝でも観た人の感想にもあんまりUFOって言葉が出てこないんですよね。どうみたってUFO映画としか思えないのにUFOって言わないのはUFOって言うこと自体がネタバレなの?昨今はみんなキビシイからそれならそれで構わないんですけど、なんだろなあ、と思ってたんですが、これが実際映画を観てみると「ああなるほど」と納得できる部分がありましたね。
確かに「未確認飛行物体」という意味ではUFOに間違いないけど、一般的にUFOでとらえられてるUFOと言い切っちゃうのはちょっと違うんですね。その違う部分がこの映画のユニークな部分なんですが、その「ユニークさ」がキモでもあるからやっぱりそれが何かは言わないことにしましょう。ただ、劇場公開時にSNSとか映画評とかで見かけた「これってXXXだよね」「これはXXXだね」という(まあある意味若干のネタバレな)意見は確かにその通りでしたね。ここに目を付けたのかあ、という部分においてやはり画期的な発想だったと言えるんじゃないかな。ただ「空にいる何か」の正体は別として、物語の流れ的にはオレは『ツイスター』みたいな、「太刀打ちできないほど危険なものにあえて関わってしまうような強烈な好奇心」の物語にも思えました。
それと冒頭の《猿》に関するスリラー展開には『モンキー・シャイン』を思い出せられましたね。あとなにがどう、ということは説明しませんが、オレ的には「ああこれ『エヴァンゲリオン』じゃん!?」とちと思ってしまいました。「空を見ちゃいけない」と言えば『ドント・ルック・アップ』なんていうシニカルなSF作品がありましたね。あと「何かのアクションによって死の危険に至る」といえば「音を出しちゃいけない」『クワイエット・プレイス』や「息をしてもいけない」『ドント・ブリーズ』なんて映画がありました。この2作は『NOPE/ノープ』を含めると「だるまさんが転んだ的ホラージャンル」ということができるのではないでしょうか。
映画的には、主人公の黒人青年がデクの坊すぎて、中盤辺りまでは見ていてどうも物語にノレませんでしたね。『ゲット・アウト』が今一つに感じたのも、やはり主人公青年がデクの坊だったからなんだよなあ。これって地味な白人オタク少年が主人公を演じる映画の黒人版なキャラクターなのかなあ。また、物語それ自体は、父親が亡くなってその跡継ぎになったのはいいけど、どうにもパッとしない人生を歩むことになってしまった青年の、その現実逃避的な妄想世界の物語のように思えました。とはいえこの映画で一番気持ち悪かったのは風でビロビロと動くチューブ型の人形(「チューブマン」とか「エアダンサー」とか言うらしい)でしたね。