甲冑!血しぶき!…でもあとは何も無い!〜映画『インモータルズ-神々の戦い-』

インモータルズ-神々の戦い- (監督:ターセム・シン 2011年アメリカ映画)

  • ギリシャ神話の世界を舞台に神と人間の戦いを描いた物語です。
  • この映画の監督であるターセム・シンといえば『ザ・セル』『ザ・フォール/落下の王国』など、現代美術へのオマージュといいますか剽窃といいますかパクリといいますか、なんかこう著名現代美術作品を恥ずかしげもなくそのまんま映画に登場させ、「どうこれ凄いっしょ!?凄いっしょ!?」とあたかも自分の作品のごとく見せてしまうというちょっとイケナイ手癖のある監督なんですよねえ。
  • 現代美術コンプレックスとでもいうんでしょうかね。
  • だから今回もどんだけパクリまくってくれるのだろうか、と思ったんですが、しかし題材が題材だけに、そんなにパクる要素が無さそうなんですよね。
  • まあパクるにしても、もういい加減ネタ切れなんでしょうね。
  • で、そんな背水の陣に立たされたターセム先生が新たに挑んだもの、それが切り株血しぶき乱れ飛ぶ大スプラッタ大会だったというわけだったんですね!
  • 結局この映画を観終わった時に頭に残ってるのは石岡瑛子デザインの変な形の鎧兜と『300(スリーハンドレッド)』製作陣によるクイック&スローなVFXと、花びら大回転のごとく舞う血しぶきなんですよ。要するにターセム先生自身がこの映画でやったことって、結局血しぶきだけで、あとは全部虎の威を借りたなんとやら、とも言えるんですよね。
  • 甲冑!血しぶき!でもあとは何も無い!って映画なんですよ。
  • それにしてもターセム先生、現代美術コンプレックスから大スプラッタ大会への華麗なる転身、というのも落差が激しい、というか、なりふり構わなすぎですよねえ。まあターセム先生の中では何がしかの整合感があるのかもしれませんが。
  • で、この大スプラッタ大会、実際どうだったかというと、これがもう、笑っちゃうぐらい物凄くてですね、なんと言っても神サマ同士の戦いですから、人間なら有り得ない攻撃方法による有り得ない肉体の破壊ぶりを見せつけちゃってくれてるんですよ。
  • 空中で血しぶきあげながら縦横自由自在に千切れ飛んでくれる肉体をスローモーションでじっくりこってり描いてくれるなんざね、そういうシチュエーションを作るのが難しいという部分で、そんじょそこらのホラー映画でも真似できないでしょう。
  • このスプラッタ三昧に興味のない人にとっちゃあ、内容が全然無いような映画でしかないんですけどね。
  • しかしね、ホラーやらおバカ映画やらいわゆるナンセンスな映画が好きな身としてみれば、これは画期的な出来であって、今まで気取り腐った現代美術趣味をご開陳なさって悦に入っていた鼻持ちならないおっさんがやっと自分の下品さに気づいて下品の最たるものであるスプラッタに走った、というのはいわば快挙である、といえるんじゃないかと思うんですよ。
  • いうなればターセム先生はこの『インモータルズ-神々の戦い-』でやっとパンツを脱いだ、ということができるわけですね。
  • やっぱ人間はパンツを脱いでナンボ。これからのターセム先生の活躍に期待したいものです。


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