■ホーボー・ウィズ・ショットガン (監督:ジェイソン・アイズナー 2011年カナダ映画)
- ホーボー=流れ者のホームレスが辿り着いた町は犯罪組織のボスが仕切る恐怖と暴力の町だった!そのあまりの非道さに遂にブチ切れたホーボーは,銃を片手に町のゴミどもを清掃することを心に誓う!…というお話なんですね。
- 暴力に次ぐ暴力!シャワーの如く噴き出る血また血!徹底的な肉体破壊!飛び交う切り株!飛び出すハラワタ!火を噴くショットガン!といったスーパーバイオレンスがウリのこの映画、映画『グラインドハウス』に挿入されたフェイク予告編の、そのコンテストで優勝した作品を映画化したものだということなんですね。
- ロドリゲス&タランティーノの『グラインドハウス』、本当に面白かったですね。『プラネット・テラー』と『デス・プルーフ』というインチキゾンビSFと残虐アクションの2本立て、わざとフィルム傷が施された映像、その合間のフェイク予告編、訳のわかんないアナウンス、これらが場末の映画館の雰囲気を醸し出していて実に楽しかったですね。楽しすぎてこの『グラインドハウス』、自分のゼロ年代ベストに入れたぐらいです。
- というわけでこの『ホーボー・ウィズ・ショットガン』、『グラインドハウス』の流れを汲んだ作品として製作されたのですが、ロドリゲス&タランティーノの『グラインドハウス』と比べちゃうとどうしてもパッとしないんですよ。
- 残虐趣味な見世物要素がてんこ盛りで、B級映画・エクスプロイテーション映画街道まっしぐらのこの映画、字義としての"グラインドハウス"そのもので、それが間違っているわけでもないし、それなりに楽しめたのは間違いはないんです。
- しかし逆に、最初っからB級・エクスプロイテーション映画を狙っているばかりに、なんだかそのまんま、といった感じの、少々志の低いものになってしまっているんですよ。
- いやそこはグラインドハウス映画、志が低くて何が悪い?と言われればそれまでなんですが、ロドリゲス&タランティーノが『グラインドハウス』でやったことって、グラインドハウス映画への批評行為としてのグラインドハウス映画だったんじゃないのかと思うんですね。
- だからB級・エクスプロイテーション映画を標榜しながらも、ロドリゲス&タランティーノの『グラインドハウス』は非常に完成度の高い、いや、完成度というよりは馬鹿馬鹿しい突き抜け方が凄みを生んだ作品として完成していたと思うんですよ。
- 一方『ホーボー・ウィズ・ショットガン』は、「グラインドハウスだからこれでいいんだよ!」みたいなシナリオの大雑把さが散見して、どうもそれがノレなかった理由だと思うんですね。
- だいたい社会逸脱者であるホーボーが、なんで突然正義に目覚めるのかわかんないし、そもそもこの映画、ホーボーである必然性があんまりなくて、ただ『ホーボー・ウィズ・ショットガン』というタイトルのインパクトだけで成り立っちゃってるんですよ。
- だからホーボーが何故乱れた社会に怒るのか?という理由付けと彼自身の背景が欲しかったし、そういった主人公のルサンチマンの在り処がわかれば、この映画はもうちょっと深みが出た筈です。
- あと、敵役である犯罪組織のボスとその息子連中が、単なるお茶らけた道化にしか見えない、というのも映画観てて白けた理由ですね。ゲーセンでガキ相手にカツアゲとかやることちっちぇんだもん。なんでこんな間の抜けた連中に町が仕切られてんの?と思っちゃいましたよ。
- 娼婦をやってるヒロインが、あれだけ乱れた町で商売をしているのにどうにも無防備なのも気が抜けましたね。『シン・シティ』ぐらいの武装したクールでコワモテな娼婦であってしかるべきじゃないですか。
- ただ、ホーボーとヒロイン娼婦との交流という筋書きは悪くなかったし、クライマックスで登場する"地獄の使者”2人組も馬鹿馬鹿しくてよかったです。
- そういった部分で、ちょっと惜しいなあ、と思えた映画でした。
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