炸裂する銃撃戦、そしてインドネシア格闘術シラット!〜映画『ザ・レイド』

ザ・レイド (監督:ギャレス・エヴァンス 2011年インドネシア映画)

  • 麻薬王の篭城する30階建てのビルに突入したSWAT部隊が、殺し屋やゴロツキどもと熾烈な戦いを繰り広げながら最上階を目指してゆく、というインドネシア産のアクション映画です。
  • 東南アジア製アクション映画、ということで『マッハ!!!!!!』のような格闘主体の映画を想像していたんですが、どちらかというと銃撃7:格闘3ぐらいの配分になっていましたね。
  • 一つの建物を敵を倒しながら上階へ向かう、というコンセプトはブルース・リーの『死亡遊戯』を連想させますし、武装した敵が待ち構えるビルを強襲する、というのは『パニッシャー:ウォー・ゾーン』のクライマックスを思い出させました。しかし映画の感触として一番近かったのは、廃ビルの中でギャング集団とゾンビの群れが血みどろの戦いを見せる『ザ・ホード 死霊の大群』でしたね!
  • 倒しても倒しても後から後から湧いて出てくる敵はどこかゾンビチックでありましたし、画面の全体的な暗さ、荒れ果てたビルの殺伐とした雰囲気、そしてじっとりした空気感はホラーなテイストに近いものがあるんですよ。
  • それになんといってもこの映画、殺し方・死に方が所々エグい上に想像以上に血まみれで、ナイフなどを含めたその戦いの"痛い"描写は、スプラッタ・アクションと言っても過言ではない凄惨さを持っていました。
  • お話としてはSWAT陣に後方支援・増援部隊が存在しない、というのと、精鋭部隊にもかかわらず暗視装置、グレネード、レーザーサイトなどの装備を持っていないなど、オレのようなFPSゲーマーから見るとちょっと片手落ちの設定にも見えましたが、それだとSWAT部隊が強すぎちゃいますから物語が成り立たないので、細けえことはいいんだよ!ということにするべきでしょう。また、支援のない部隊、というのは後から理由が明かされていて、一応物語に整合感を持たせています。
  • グダグダ書いちゃいましたが、激しい銃撃戦は見所があちこちに設けられていて緊張感を高めています。特に銃撃の音声がよく録音されていて臨場感がありましたね。
  • しかしこの物語が本領を発揮するのは銃を捨ててからの肉弾戦になってからでしょう。まずSWAT部隊のサバイバル・ナイフ対敵の持つマチェーテの血飛沫飛び交う戦いは、狭い場所での近接戦アクションとして実に見せる部分があります。この辺の戦いは何かに似ているな、と思ったんですが、ゲーム『メタルギア・ソリッド』でも導入されていたマーシャルアーツ、「CQB(クロース・クォーター・バトル)」なんですね。軍隊や特殊部隊で訓練されている近接戦闘に特化した戦闘術なんですが、主役となるのがSWATなだけあって、鬼のような強さを発揮しているんですよ。このCQBバトルがこの映画のもう一つの見所となるでしょう。
  • そしてクライマックスに近づくにつれ、今度は銃を捨てたフルコンタクトの戦いが繰り広げられます。ここで展開される格闘術はインドネシア古来から存在する格闘技シラットと呼ばれるものなのだそうですが、ネットで探した記事の受け売りによると「円運動が多く複数の技を同時にかけてゆく」のが特徴なのだそうです。また、受け流しの多いこの技は護身術などにも多く流用され、さらにマーシャルアーツにも取り入れられており、先に書いたナイフによる戦いも得意としているのだそうです。
  • ただし実戦に特化した格闘術となっているので、ビジュアルとしての格闘技の美しさ、というものではなく、格闘アクション映画の爽快感を期待すると華のない部分があるかもしれません。
  • そういった意味で見るとこの『ザ・レイド』はシラットを生み出した国インドネシアが、SWATの繰り出すマーシャルアーツを通じて、母国のルーツである格闘技を世界に知らしめる映画として成り立っているように感じました。


The Raid/ザ・レイド[米版]

The Raid/ザ・レイド[米版]

死亡遊戯 エクストリーム・エディション [Blu-ray]

死亡遊戯 エクストリーム・エディション [Blu-ray]

ザ・ホード 死霊の大群 [DVD]

ザ・ホード 死霊の大群 [DVD]