エクソシスト映画2連発〜『ザ・ライト エクソシストの真実』『エクソシズム』

■ザ・ライト エクソシストの真実 (監督:ミカエル・ハフストローム 2011年アメリカ映画)


エクソシスト=悪魔祓い師」というのはホラー映画の話だけではなく、バチカン公認の正式な職業として実際に存在しているのらしい。この映画『ザ・ライト エクソシストの真実』は実在するエクソシストの体験を元に構成されたドラマだ。物語はアメリカ人神学生がバチカンに派遣され、そこでエクソシスト養成講座を受けるところから始まる。このアメリカ人神学生は自分の信仰を失いかけており、悪魔祓いという行為にも懐疑的で、そんなことよりきちんと心療内科の治療を受けさせるべきだと主張し、同席したエクソシストの儀式も殆ど眉唾物だと思っていた。しかし相次ぐ怪異を体験し、悪魔の存在を信じるようになっていく、といったオハナシ。
バチカンエクソシスト養成講座の教室がおそろしく近代的な作り(実際もそうなのらしい)だが、一見科学的に見せかけていてもやってることはやっぱり昔ながらの悪魔祓いでしかないというのが可笑しい。映画の内容も「神が存在する以上悪魔も存在する」というこのテの映画お定まりの「神様プロパガンダ」となって終了する。ただ、実の所、強烈な信仰心を持つ者の最終的な救済が神の赦しであるなら、それがプラシーボであろうと悪魔祓いは有効な手段だということもできるわけで、単純に否定できるものではなかったりする。日本のイタコじゃないが「死んだアノ人は空から見守ってるよ」と言われればそれがどれだけ非科学的なことであろうと心が安心する人々がやはり存在するというのと同じことだ。まあ日本と違い一神教キリスト教においてはマッチポンプなやり口なような気がしないでもないが。
映画の方はホラー映画とは思えないほど撮影が丁寧で美しく、バチカンのロケーションも観光気分で堪能できるところがいい。また俳優も、一人気を吐くアンソニー・ホプキンスの怪演はもとより、主演の神学生を演じたコリン・オドノヒューの知的で端正な顔つきは映画に程よいリアリティを与えていて好印象だった。どぎつい描写は殆ど無いが、良質なホラー映画として完成している。

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エクソシズム (監督:マヌエル・カルバージョ 2010年スペイン映画)


ウィリアム・フリードキン監督の『エクソシスト』は、もはや説明の必要も無いホラー映画の金字塔だが、その"恐怖"の本質は、悪魔に取り憑かれた少女の首が180度回ったり緑色のゲロを吐いたりベッドの上で空中浮遊することではない。科学や医療が発達したこの現代に生まれ、近代的知性を持ち近代的生活を享受しながらも、「悪魔祓い」というそれら全てを否定する前近代的で古色蒼然とした行為に全信服をおいて身を委ねなければ ならない、その不条理と不安が、映画『エクソシスト』の本質的な恐怖の源なのだ。
さてこちらの映画『エクソシズム』もタイトルから分かるように悪魔祓いの映画だ。ただしこちらはスペイン映画という事で、『エクソシスト』とはまた少し感触が違う。監督マヌエル・カルバージョの作品は観たことがないのだが、製作が『REC/レック』 『パフューム ある人殺しの物語』のフリオ・フェルナンデス、また脚本のダビ・ムニョスはギレルモ・デル・トロ監督の『デビルズ・バックボーン』も担当している。物語の方は家族とうまくいっていない一人の少女の様子がおかしくなる所から始まる。彼女の周りで起こる様々な怪異は、怪異とはいえ彼女自身の心因性ストレスが起こしたものなのではないか、と最初見せかけておいて、やはりどうも超常現象らしい、これは悪魔憑きに違いない、ということになる。そこで一人の神父が乗り出すわけだが、この冒頭あたりは『エクソシスト』のエピゴーネンとしか言いようの無い物語展開で、悪くは無いが新鮮味も無いなあと思って観てしまう。
ところが、これがクライマックスにいくにつれ、この悪魔憑きにはある"企み"が存在していたことが明らかになり物語の様相は一変する。まさにこの部分がこの映画の醍醐味なのだが、あちこちある映画紹介サイトでは全部ネタバレしていてちょっと惨いかも。まあざっくり言ってしまえば悪魔よりもヒデエことするのは人間だってことか。スペインらしい激しい宗教心(言い換えれば狂信)振りがこういったことを起こしてしまったと言えるのかも知れない。

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