『アイアム・ナンバー4』は石ノ森章太郎テイストの学園SF映画だった!

■アイアム・ナンバー4 (監督:D・J・カルーソー 2011年アメリカ映画)


予告編を観て「美男美女の若手俳優使ってキャッキャウフフさせてライトな観客層を狙ったありがちな学園超能力ドラマなのかなあ」とか思ってたら、冒頭いきなり「我々はロリアンという星に住んでいた異星人だがモガドリアンという悪い宇宙人に故郷の惑星を滅ぼされ地球に逃れてきた9人の中の一人なのだ」などといきなり大風呂敷を広げられてびっくりするんですよね。おおっとこれはちんまい学園物なんかではなくて宇宙の運命を賭けた壮大なSFドラマなのか!?と一瞬期待させられるんですよ。9人とはいっても地球に逃れてきたのはナンバー付きの9人だけじゃなくて、"ガーディアン"と呼ばれる大人の保護者がそれぞれ付き添っているようなんですね。そして宇宙人という正体を隠して町から町へ放浪をしなければならない彼らの様子が描かれ、物語は悲壮感たっぷりに始まるわけなんですよ。
…と思ったらその悲壮感はやっぱり冒頭だけで、身を隠さなければならない筈なのに主人公の男の子はいきなり「俺学校通うから」とか言い始め、お話は強引に学園物ストーリーへと持っていかれるんですね!なんだやっぱり想像通りかよ!まあ、山奥に隠れていてもナンバー3は殺されちゃったわけだし、人込みにいたほうがかえって安全だ、という主人公の主張も分かるんですが、まあこれは巻き込まれる人間の数も多くなるだろ普通、とやっぱり思っちゃいますけどね。そもそもこの秘められし超能力を持っているという9人とそのガーディアンがなんでバラバラに住んでいるのかよくわかんなくて、みんな一緒に行動していたほうがそれぞれの力を生かして敵をやっつけられるからいいんじゃないのかなあ?とか思いましたが、何か語られていない理由があるのかもしれませんね。この映画は原作付きだっていう話しだし。
でまあ、いきなり新入生になっちゃう主人公なんですが、非力なオタク君と彼をイジメる体育会系のイヤな学友と、その体育会系と昔付き合っていたけど別れちゃった、というヒロインが現れるんですよ。なんだかもうアメリカ学園モノドラマの定番過ぎる人物設定なんですよね。主人公は宇宙人の超能力を隠して生きなければならないのに、オタク君に対する体育会系のイジメの酷さに怒ってその能力を使ってしまい、なんとなく正体がばれちゃうんですが、こういう展開もありがちといえばありがちなんですよね。ただ、定番・ありがちだからこそという安定感もあるわけで、逆に超能力高校生が宇宙からやってきた悪もんと戦う、なんていう粗筋は、昔よく読んでいた石ノ森章太郎のマンガや、眉村卓ジュブナイル学園SF小説なんかを思い出せて、ちょっと甘酸っぱい気持ちにさせられたりしましたね。
さてこの敵役となる悪もん宇宙人というのが、みんなロン・バールマンみたいな顔つきで、ハゲ頭にタトゥーをほどこし、いつも黒いロングコートを着ている、というルックスなんですが、これが結構格好良いんですね。これからのヒャッハーッ!ないでたちはモヒカンじゃなくてハゲ頭にタトゥー、と確信させられる格好良さなんですよね。オレのブロガー知り合いにモヒカン頭のカトキチという若者がいるんですが、彼はモヒカン止めてハゲ頭タトゥーにするべきだ、とこの映画を観てしみじみ思いましたね。ただ、映画を観進めていくと、なんかこの悪モン宇宙人、単なるフーリガンみたいな性格で、頭があまり良くなさそうなんですよ。しかも歯が汚いというのがさらにポイントを落としましたね。ここは頭が切れて冷徹&冷酷無比のニヒルでクールな悪モン、といった性格設定にすべきだったと思いますよ。それになんでロリアン人をここまで付け狙うのかがよく分かんなかったなあ。
さて友情やら恋やら喧嘩やらと想定通りのベタベタな学園ドラマが暫く続き、なんとなく飽きてきたところでやっと悪モン宇宙人の皆さんが超能力高校生を見つけ、ここから映画は見違えるようなアクション連発の戦いになるんですね!いやー待ってました!チカチカと目まぐるし過ぎてなんだか良く分かんないけどなんだか凄いような気にさせられるSFXの応酬は、さすが製作マイケル・ベイと思わせてくれます!そしてここで噂のナンバー6登場!ナンバー6と言ってもプリズナーじゃないから要注意!このナンバー6、ちょっぴり憎ったらしい感じの美人女性なんですが、もう強い強い!ってか最初からこのナンバー6を主人公にして初っ端から戦いに次ぐ戦いのアクション映画にしちまえばよかったのに!しかもこのナンバー6の出場で、主人公の彼女になったヒロインの存在があっという間に霞むんですよ!ゆくゆくはナンバー4とナンバー6は付き合っちゃうんだろうなあとすぐ分かっちゃうし!
という展開のこの物語、「9人の超能力宇宙人」とか言いながら、最初に死んじゃったナンバー1〜3の他は4と6しか現れないんですよね。お話が終わって主人公たちは彼らを探す旅に出るようですが、要するにこのお話まだまだ続くみたいなんですね。原作自体も実は6話完結とかいって1巻しか出ていないみたいだし。全体的に映画の規模も物語展開もアメリカのケーブルTVのドラマみたいだったこのお話、この映画を第1話目ということにして、残りは案外TVドラマで続けられるのかもしれませんね。

■アイアム・ナンバー4 予告編


アイ・アム・ナンバー4  <ロリエン・レガシーズ> (角川文庫)

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