フランス行ってもやっぱり荒木はドォオォオォオォオォだったッ!?〜『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』荒木飛呂彦


国内外のグラフィック・ノベル・アーティストとルーヴル美術館をコラボレーションしちゃおう、という《ルーヴル美術館BD(バンドデシネ)プロジェクト》、なんと日本から『ジョジョの奇妙な冒険』で御馴染み、あの荒木飛呂彦が登場!当然これは正式にルーヴル美術館からオファーがあったもので、フランスのアートな皆さんも荒木飛呂彦の漫画にかねてからトレビア〜ンなものを感じていたのでありましょう!
しかし実はオレ、絵柄の独特さはスゲエなあとは思いつつ、ジョジョってちゃんと読んだことないし、今後も多分読む予定ないし、荒木にもあんまり興味が無かったりします。ファンの皆さん、ホントにスイマセン。でもジョジョ立ちとかゴゴゴゴゴ!とかは知ってますよ!なんかスタンドとかいうのが出てくるらしいというのもなんとなく知ってます!逆に言えばオレの荒木氏の漫画の認知度はその程度のもので、だから今作『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の主人公・岸辺露伴ジョジョのキャラクターだなんていうことはあとがきを読むまで知りませんでした。だからずっと岸部露伴じゃなくて幸田露伴のことだと思ってました。いや、幸田露伴のことも実はあんまりよく分かってないんですが!
そんなわけでこの『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』、これまで日本で発売された《ルーヴル美術館BDプロジェクト》の作品が実にBDらしいBD作品だったのと比べると、そんなの知ったこっちゃねえ!とばかりに直球ベタベタに日本のコミックしています!いやしかし、変にBDに色目を使った考えすぎな作品を描かれるよりも、ある意味清々しいほどに己の資質に素直で、これはこれで正解なんじゃないか、と思いましたね。多分フランスのコミック・ファンやルーヴル美術館の皆さんも、彼らにとっての日本のコミックらしいコミック、即ち彼らの見知った方法論で描かれたコミック=BD作品とは違った方法論で描かれている日本のコミックそのものを《ルーヴル美術館BDプロジェクト》作品に加えることが出来て喜ばしいことだったんじゃないでしょうかね。ただ荒木氏は荒木氏で、今作において初めてのオールカラー作品を、しかもBDを意識したカラーリングで描いたという部分で、自分なりに《ルーヴル美術館BDプロジェクト》に挑戦しているということが出来るんじゃないかと思います。
お話のほうは一枚の謎の絵を巡るホラー・ストーリーなんですね。物語冒頭、主人公・岸部露伴が若かりし頃に出会った薄幸な人妻とのエピソードが、後にルーヴル美術館へ渡った岸辺を襲う怪異とどう結びついてくるかが物語の鍵といえますね。で、この怪異というのが、結構派手なスプラッタ描写込みで、益々ルーヴルもBDもどこ吹く風な荒木氏の我が道を行く様が男前です!BDはアートを目指しますが、荒木氏はやっぱりエンターティメントを目指すんですね。ただちょっと怪異の理由を説明しすぎていて、この辺の分かり易さに徹底した部分も日本のコミックで鍛えられてきた荒木氏のサービス精神と言えない事無いんでしょうが、ホラーとしては怪しさ・不気味さが足りないものになっていたやも知れません。
というわけでルーヴル美術館に「モナ・リザ」と共に自身の絵を展示されたという荒木氏、でもルーヴルに行ってもやっぱり主人公はジョジョ立ちしているという所が潔いですね(↓)!でもこれ、ホントはミケランジェロの彫刻「瀕死の奴隷」をモチーフにしているんだそうですよ。ドォオォオォオォオォ!!

参考:氷河の下に眠るルーヴル美術館で出遭ったものとは?〜フランス・コミック『氷河期』:メモリの藻屑、記憶領域のゴミ
美術館地下に広がる無限の迷宮世界〜『レヴォリュ美術館の地下〜ある専門家の日記より』:メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

岸辺露伴 ルーヴルへ行く (愛蔵版コミックス)

岸辺露伴 ルーヴルへ行く (愛蔵版コミックス)