『ボクの手塚治虫せんせい』『ボクの手塚治虫』『手塚治虫アシスタントの食卓』など最近読んだ手塚治虫関連コミック

ボクの手塚治虫せんせい / 古谷三敏

『ダメおやじ』『BARレモンハート』で知られる古谷三敏は1958年から3年ほど手塚治虫のアシスタントを務めており、その時の思い出を綴ったのがこのコミックとなる。1話8pで10エピソード、合間に古谷による手塚にまつわるエッセイが挟まれる。全体的に短く、ゆったりのんびりとした進行なのだが、にもかかわらずどのエピソードも非常に充実し読ませるものになっている部分に感心した。これはプロ中のプロ漫画家であった古谷の計算された構成と絶妙なテンポによるものなのだろう。古谷のコミックはあまり読んだことがなかったのだけれどもこれにはちょっと驚かされた(まあオレも年寄りなのでこのぐらいのテンポの古い漫画家の作品が性に合ったというのもあるのだろう)。

散りばめられた手塚エピソードは知っているものも多かったが、古谷自身の視点と切り口により新鮮に接することができる部分もポイントが高い。当時から手塚の仕事場は相当な修羅場の嵐だったのだろうが、これが古谷の手になるとなぜかほっこりクスリとさせられるエピソードと化してしまうのだ。これはもう古谷の人柄としか言いようがなく、手塚のエピソードを知るのと同時に漫画家・古谷三敏の暖かな人間観を知ることもできる作品であった。それにしても手塚先生、無免許(らしい。古谷の推測)なのにみんなを喜ばすために外車(ルノー)を購入していたってエピソードもこれまた可笑しかったなあ。それと1作書き上げた後は1時間以上もピアノを弾くっていうのも抜群にかっこよかった。

ボクの手塚治虫矢口高雄

ボクの手塚治虫

ボクの手塚治虫

Amazon

釣りキチ三平』の矢口高雄がその幼少時に手塚治虫の漫画に出会い衝撃を受け、いかに手塚漫画を愛し自らも漫画家を志すことになったかを綴ったコミック。1989年、手塚治虫死去後に追悼を込めて描かれた作品である。矢口の溢れんばかりの手塚愛の様も十分に心浮き立たせるものがあるが、それよりも幼少時の彼が住んでいた昭和中期の秋田県農村地帯での暮らしぶりの描写がなにしろ驚かされる。それは貧しく労苦に満ちたものであるが、その中で母を愛し漫画を愛し明るくけなげに生きる矢口少年の姿が胸に迫るのだ。いわばこの作品は矢口の自叙伝的な内容でもあるのだ。同時に当時の秋田における人々の生活を克明に綴った部分も興味が尽きない。さらにそれが矢口ならではの細微を極める画力で描かれるのだから脱帽するしかない。

手塚治虫アシスタントの食卓(1) / 堀田あきお&かよ

往時の手塚プロでアシスタントを務めていた堀田あきおとその妻かよによる回顧録的な漫画。『ブラックジャック』執筆時であり同時にアニメ『バンダーブック』製作も重なり修羅場と化していた手塚プロの内情をコミカルに描き、そこで堀田がどのような形で手塚を目撃し、夜食にどのようなものを食べていたのかを綴っている。「食事しばり」である意味は少々少ないとはいえ、当時の食事情を眺めるのはそれなりに楽しかった。手塚プロは食事に関しては結構太っ腹だったらしく、結構経費がかさんだろうなあと思わされたが、それはそれでプロダクションの矜持だったのだろう。手塚の漫画制作裏話についてはコミック『ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~』が相当詳細に描いているが、それとは別視点で関係者の姿と手塚のワーカホリックぶりを描いたという部分で面白かった。