宇宙舟歌 / R・A・ラファティ

宇宙舟歌 (未来の文学)

宇宙舟歌 (未来の文学)

「九百人のお祖母さん」など、大法螺話=トール・テールを得意としたR・A・ラファティの連作長編。ホメロスの「オデュッセイア」を元にした宇宙船乗り達の「奇妙奇天烈:宇宙の旅」が描かれる。
登場するのはセイレーンやキュクロプス、キルケー、アトラスといった神話でお馴染みのモンスター、神々の宇宙バージョン。そして主役たる宇宙船乗り達も人間離れしたハチャメチャさ。勇猛果敢、勇壮豪胆、陽気で愉快、お茶目でちょっと間が抜けていて、でも神話世界によくあるように簡単に死ぬし簡単に殺す。ある意味生き死にも超越している存在なんだよね。つまりは神話世界の”ヒーロー”だからということか。ある意味彼ら自信も”神々”なんだろうな。
物語りも当然宇宙の物理法則も生命体の限界も完全に無視した奇想に次ぐ奇想の大法螺話。船乗り達は地球へ帰る道すがら、あっちの星へこっちの星へと、ふらりふらりとしながら騒動に巻き込まれる。この辺が「オデュッセイア」たる所以なのだろうが、オレ自身は原典を読んだことがないので、どの辺が「オデュッセイア」を下敷きにしているのか判らないところがちょっと悔しかった。でもコミカルな登場人物や奇想天外な物語展開は十分魅力的で、案外アニメなんかにしたら楽しいかもね。基本的に寓話的な御伽噺であり、大味な部分は否めないので、スリルやサスペンスは期待しないこと!「変な話だなあ」とおおらかな気持ちで読んでやってください。