オレのリングは血に飢えてるぜ

毎朝寄っているコンビニにオレと毎回同じ時間に店に来るばあさんがいる。
実はこのばあさんにオレは密かな対抗意識を持っている。
オレの買い物は昼飯のおにぎり。ばあさんの買い物は新聞。二人とも毎日同じ物を買っている。
この買い物を、どちらが先にレジに出すか、オレは心の中でばあさんと競争しているのである。
店の中でばあさんを見つけた時のオレの行動は早い。少しでも先に。少しでも前に。たとえ相手がばあさんだったとしても、オレは戦いに妥協はしない。むしろ、ばあさんが好敵手だと思っているから、全力で戦いに挑んでいるのだ。
そして、これだけの真剣勝負を挑んでいてさえ、オレはばあさんに敗北することがあるのである。この時の悔しさ、遣り切れなさは筆舌に尽くしがたい。
オレの戦いに負けは認められないのだ。
勝つ。きっと勝つ。あのばあさんに、オレは勝たなければならない。
そして今日も、ばあさんとオレの熾烈な戦いは続くのである。

「勝つことに慣れないとビッグな男になれない----アントニオ猪木