暗黒皇帝のクリスマス

クリスマスである。とりあえず美味いもの食い美味い酒を飲み友人なり伴侶なりもちろんおひとり様であろうとも「ぐはあうめいうめいたまんねえわこれ」と呻吟し悶絶し随喜の涙を流す日である。記憶に正しければ多分そういう日のはずだ。

クリスマスは毎回相方が「なにかの肉」をテーマに料理を作ってくれている。これまでもローストビーフラムチョップや鹿肉のソテーやトリッパなどを作ってくれた。どれも最高に美味かった。肉は正義であり人の道であり賢者の知恵であり爆走トランザムなのである。

そんな相方が今回は王道に「ビーフステーキ」にするという。すなわち肉料理の正道であり基本であり神髄であるビーフステーキである。「ビーフステーキの前にビーフステーキなくビーフステーキの後にビーフステーキなし」とかの兼好法師徒然草にしたためたあのビーフステーキである。

しかし一言でビーフステーキと言ってもさまざまである。和風、ガーリック、ニューヨークスタイル、ロッシーニ風、カッシーニ風、ボイジャーガリレオユリシーズと枚挙に暇がない。では今回相方さんはどのようなコンセプトによりビーフステーキに挑むのかをインタビューしてみた。そして彼女は一言こう言ったのである。

「タテだかヨコだかわからないビフテキ」。

……おおお!あの「銀河鉄道999」、「宇宙海賊ハーロック」で絶大なファンを持つ松本零士が、かつて青春ギャグ漫画「男おいどん」で世に知らしめた「タテだかヨコだかわからないビフテキ」ですかあ!?さすがオレの相方、お目が高い!

ちなみに「タテだかヨコだかわからないビフテキ」とはこのようなものである。

といわけで相方は日本でも珍しい「タテだかヨコだかわからないビフテキ肉」を取り扱う「タテだかヨコだかわからないビフテキ肉店」に注文を入れこれを入手、しばらく冷凍庫の中でアルマンディンガーネットの如く妖しく輝いていたそれはクリスマス当日、相方の手で賑々しく焼かれることと相成った訳である。

そして出来上がった「タテだかヨコだかわからないビフテキ」の写真がこれだ。

おお!デカい!デカいぞ!デカ役で登場したレオナルド・ディカプリオの如くディカい!「タテだかヨコだかわからない」というよりも「タテもヨコも超越したデカさ」といった風情だな!名付けるなら「ギャラクティック・インフィニティ・ビフテキ」!

そして「ギャラクティック・インフィニティ・ビフテキ」はこのように盛り付けられ献立として並べられたのである。この日はシードルが沢山手に入ったのでそれをたらふく飲みながらの食事であった。

ふざけないで書くと牛のヒレ肉なのだが、これがびっくりするほど柔らかくて、今までオレがこの人生で食っていたビフテキはなんだったのだろうか?とマゼラン星雲の彼方まで自問してしまいそうな素晴らしく美味いビフテキであった。相方よ今日もありがとう。そしてメリークリスマス。