今日一日

今日は忙しかった。はっきり言って殺人的であった。さすが年末、オレの会社の今年の実質就業日数もあと3日程だ。23日が祝日だから、忙しさも加速度的に倍増しているのだが、畏れ多くもやんごとなき御方の生誕日であらせられる為致し方ない。
10時頃まで残業。帰宅が11時。コンビニ弁当の夕食。それにしてもコンビニでは赤い防寒着を着た店員がケーキを売っていたが、閣下の誕生日は昨日だった筈なのに、今日売ってどうしようと言うのだろう。いや、閣下の誕生日の次の日でさえ祝いたい、という愛国心の表れなのであろうか。
実の所、天皇制自体に意見はないし、興味もなく、単なる非国民として頭を垂れつついじましく生きているオレではあるが、全国民的にこれほどまでに熱狂的なナショナリズムが台頭しているとは思っていなかったのだ。昨日の天皇誕生日も、夕食の食材を買いに近所のイトーヨーカドーの食料品売り場に行くならば、おびただしい数の焼いた鶏の肉や祝い酒やバースデーケーキの類が売り出され、何時もと違う店の様子に何事かと思ったが、ああそうか、天皇誕生日だからか、と気付いた時には溜飲が下がった。
しかし不思議なのは、天皇陛下閣下の誕生日を祝うのに何故西洋人の歌を流すのかだ。「甚句」だの「栗」だの「済ます」だの「法被(はっぴ)」だの、日本語は使われてはいるのだが、歌の主人公は「メリー」なる外国の人物のようである。…ここでオレはふと思った。海外では、たとえば千葉真一が「ソニー千葉」であったり、猪木が「アントニオ猪木」であったりするように、陛下も海外では「メリー」という愛称で呼ばれ親しまれているのだと言う事なのだろうか。だとしたら、これは日本国民だけでなく、全世界的に陛下のご生誕日を祝している、ということなのだろう。まさに日いずる処の天子たる所以である。
たしかに街は人通りも多かったしな。若い男女のカップルが特に多かったのは、今日という日に交合することによって、健全な日本国民を多く生み増やし、陛下の為の強力な国家を作ろう、という若者たちの愛国心の所為なのであろうか。見上げたものである。日本と言う国もまだまだ捨てたものではない。
街のあちこちには門松ともとれる背の低い木に電飾が飾られ、新年に向けての国民達の思いが伝わってくるようだ。赤い防寒着を着て白髭を生やした翁の像も、長寿と繁栄を願った、やはり縁起物ということなのだろう。
もう幾つ寝ると、お正月である。
唯一つ判らないのは、何故、トナカイなどという外来種の有蹄類に防寒着の翁が乗っているのか、ということだ。おまけに「ハイホー」とか言ってるし。まあもうオレも年寄りだしな。多分若者たちの流行なんだろう。新しいことにはなかなかついていけないものである。