リターン・トゥ・サイレントヒル(Prime Video)(監督:クリストフ・ガンズ 2026年フランス・ドイツ・セルビア映画)

亡くなったはずの妻メアリーから届いた手紙に導かれ、ジェイムスは霧に包まれたサイレントヒルへ。異形の怪物たちと対峙しながら、愛と罪、恐ろしい真実に向き合う。ゲーム『サイレントヒル2』を基にした映像化作品だ。主演はジェレミー・アーヴァイン、ハンナ・エミリー・アンダーソン。監督のクリストフ・ガンズは2006年の『サイレントヒル』でゲームの世界観を独特の霧とビジュアルで描いたフランス人監督で、今回20年ぶりにシリーズに復帰した。
中盤までは退屈だったのだが、最後まで観て印象が変わった。この映画を「普通のホラー」として見ると確かに物足りない。ジャンプスケアは少なく、ジェイムスは怪物と戦うより逃げて怯えて彷徨うばかりだ。しかし「失意の男の内面を描いたダークファンタジー」として観ると、途端に味わい深くなる。
監督クリストフ・ガンズは、ギリシャ神話のオルフェウスを現代的に翻案したとのだという。即ちこれは死んだはずの恋人メアリーを、霧の冥界=サイレントヒルに取り戻しに行く救出譚なのだ。ジェイムスが逃げてばかりなのも理にかなっている。ゲーム版では戦う行為が「罪と向き合うプロセス」だが、映画では戦わないこと自体が彼の弱さや否認の象徴になる。内面的投影として見ると、むしろ自然だ。
特に完全な絶望で終わらないラストの余韻が好きだった。霧の町の雰囲気、動きの不気味なクリーチャー、山岡晃の音楽アレンジも実に美しい。ゲームを冒頭しかプレイしていない私でも、「ちゃんとクリアしたくなった」と思わせる力があった。「怖いホラー」を期待するとガッカリするかもしれない。しかし心理描写重視の幻想譚として観る人には、静かで詩的な余韻が残る良作だと思う。
プリースト 悪魔を葬る者 (監督:チャン・ジェヒョン 2015年韓国映画)

『プリースト 悪魔を葬る者』は原因不明の発作に苦しむ女子高生ヨンシンに悪魔が憑依したと確信したベテラン神父キム(キム・ユンソク)が、神学校生アガト(カン・ドンウォン)を伴い、命がけの悪魔祓いに挑むオカルト・ホラーだ。監督は本作が長編デビューとなるチャン・ジェヒョン。2026年公開の映画『鬼胎(クィテ) 黒い修道女』はこの作品のスピンオフ作品となる。
韓国映画にはキリスト教の「悪魔祓い」をテーマにしたホラー作品が多いが、これもその一つ。韓国悪魔祓い映画は、欧米のそれとは一味も二味も違う部分に特色がある。それは西洋カトリックの伝統的儀式に、韓国シャーマニズムの要素を融合させた描写だ。道教と仏教の合体した儀式である中元節、護符、豚への憑依移し、塩の結界など、プリミティヴでアニミスティックな描写が次々と成され、一緒異様なカオスを見せつける。
本作最大の見どころは、クライマックスの悪魔祓いシーンにある。パク・ソダムが演じる憑依された女子高生ヨンシンの変貌ぶりが圧巻だ。声の変化、激しい痙攣、幻覚を誘発するような狂態をリアルに演じ切り、観る者を恐怖のどん底に突き落とす。また、悪魔祓い儀式が雑居ビルの住居で行われる部分も、猥雑な生活感に溢れていて実に韓国映画らしい。
もう一つの魅力は、キム・ユンソクとカン・ドンウォンのバディ関係だ。経験豊富なベテラン神父と若き神学生の対比が鮮やかで、信仰の葛藤や互いの信頼が物語に厚みを加える。二人が聖歌を歌うシーンは、ホラーの中で一瞬の清涼感を与えてくれる。ラストのカーチェイスを含むアクション展開は予想外のスケール感を誇り、単なるホラーに留まらず、信仰と人間の強さを描いたエンターテイメント性も高い。教会のしがらみや信仰の限界を背景に、緊張感と人間ドラマのバランスを秀逸に描いた韓国オカルト映画の傑作だろう。

