ストレンジ・ダーリン (監督:J・T・モルナー 2023年アメリカ映画)

衝撃の展開を見せるシリアルキラー作品
頭から血を流して逃げ惑う女と、銃を片手にそれを追い回す男。恐怖に顔を引きつらせる女と、殺意を燃え上がらせる男。そんな絶体絶命の状況から幕を開ける映画『ストレンジ・ダーリン』は、一見するとありきたりなシリアルキラー映画かと思いきや、観る者の予想を裏切る衝撃的な展開を迎えます。
”逃げる女”レディを演じるのは、『ジャック・リーチャー 正義のアウトロー』や『パルス』で知られるウィラ・フィッツジェラルド。そして”追う男”デーモンには、『Smile スマイル』で印象的な演技を見せたカイル・ガルナーが配されています。監督・脚本を務めるのは、本作で一躍注目を集め、スティーブン・キング原作の映画『死のロングウォーク』の脚本も手がけるJ・T・モルナーです。
【STORY】世間を震撼させるシリアルキラーによる連続殺人事件。そんな中、一台の車がモーテルの前に停まります。車中には、バーで知り合ったばかりのレディとデーモンがいました。やがてレディはデーモンに命を狙われ、銃を持った彼から必死で逃げ惑うことに……。
「叙述トリック」が仕掛ける非線形な物語
本作がユニークなのは、「この映画は全6章で構成される」と最初に明かした上で、いきなり「第3章」から物語が始まる点です。これこそが、冒頭に描かれる「逃げる女と追う男」のシークエンスなのです。さらにその後、物語はそれぞれの章をシャッフルさせながら、非線形的に進行していきます。
なぜ6つの章はシャッフルされているのか?その意味は何か?物語が進むにつれて、観客は自然とそう考えずにはいられないでしょう。そして、時系列を操作することで観る者の認識を惑わせる、いわゆる「叙述トリック」がこの作品に持ち込まれていることに気づきます。ミステリ作品に慣れ親しんでいる方なら、この仕掛けは容易に看破できるかもしれません。
真実が明らかになった先に待つもの
叙述トリックという側面だけで評価するならば、本作の出来は「まずまず」といったところでしょう。なぜなら、二転三転し謎が謎を呼ぶような複雑な構造を持っているわけではないからです。しかし、この映画の真骨頂は「真実」が明らかになってからこそ発揮されます。「真実は明らかになった、さあそこからどうする?」という部分から、物語はさらなる凄惨な展開を迎えるのです。
こうしたツイストの効いた展開を見せることで、最終的にはカタルシスを得られる映画として完成しています。全体を俯瞰すると、この「叙述トリック」という遊び心がなければ、特筆すべき点のない凡庸な作品に終わっていたかもしれません。その意味で、序盤のユニークな叙述トリックで観客の目を惹きつけ、中盤からの悪逆ともいえる新展開で飽きさせない構成こそが、本作の大きな魅力と言えるでしょう。