トラップ (監督:M・ナイト・シャラマン 2024年アメリカ映画)
仲睦まじい父娘が超人気ポップスターのライブに出かけたら、会場がなにやら物々しい警備体制を敷いている。ちょっとやりすぎじゃ?と思った父がこっそり会場スタッフから聞き出したところによると、この会場には世間を騒がすシリアルキラーが入場しており、警察は会場そのものをトラップとして犯人を追い詰めようとしているというのだ!……というM・ナイト・シャマラン監督・脚本によるサスペンス・スリラー映画『トラップ』を観てきました。
主人公クーパーを『パール・ハーバー』『オッペンハイマー』のジョシュ・ハートネットが演じ、『女神の見えざる手』のアリソン・ピルが共演しています。今回は極力ネタバレのないように書いてみました。とはいえ予告編の段階で既にネタバレしてるんだけどな!
《STORY》クーパーは溺愛する娘ライリーのため、彼女が夢中になっている世界的歌手レディ・レイブンが出演するアリーナライブのプラチナチケットを手に入れる。クーパーとともに会場に到着したライリーは最高の席に大感激の様子だったが、クーパーはある異変に気づく。会場には異常な数の監視カメラが設置され、警察官たちが会場内外に続々と集まっているのだ。クーパーは口の軽いスタッフから、指名手配中の切り裂き魔についてのタレコミがあり、警察がライブというトラップを仕組んだという情報を聞き出す。
シャマラン映画はとかく「ラストの思いもよらぬ大どんでん返し」が期待されることが多いですが、今作『トラップ』はどんでん返しがどうとかいうよりも、最初から無理筋の設定をどこまでも力技で押し通していくか、という部分で面白さを生んでいく作品でした。いくら超人気ポップスターのライブに犯罪者が訪れるからといって、会場をトラップに仕立てたりは普通しませんよね。そんなのかえって大混乱を生むだけでしょう。しかし、設定の新奇さには十分興味を引き付けるものがあるんですよ。
ライブ会場の描写も結構リアリティを無視していて、ライブではお馴染みの縦横に明滅するライティングが全く用いられていなかったり、大音量で音楽が鳴っている会場で普通に会話していたり、混雑しているはずの会場を主人公が始終出たり入ったりと煩雑すぎて、ホントのライブじゃこうはいかんだろ、とは思いますが、物語を進めてゆくための方便だと思えば十分アリだったりします。つまり「ライブ会場がトラップだという大前提」を生かすために全てを強引に納得させてゆくんですよね。
その設定の中で主人公には「できること」と「できないこと」が生まれてゆき、その障壁をどう突破してゆくのか?どう裏をかいてゆくのか?という知恵比べの部分にスリリングさが生み出されてゆくんですよ。そして遂には「ライブ会場がトラップ」という設定から逸脱し、「そっちに話を持って行くか!」というどんどんと先の読めない展開へと突き進んでゆくんです。こういった部分でシャマラン監督作にしては新基軸だと思ったし、十分に楽しむことができました。
なにより、最初は単なる背景の登場人物だと思われたポップスター、レディ・レイヴンが結構な活躍を見せ、これには驚かされました。レディ・レイヴン、歌よし踊りよしルックスよしで、本物のポップスターのようなカリスマ性を発揮していましたが、いったいどんな女優さんなんだろう、と思って調べたらこれが実際にもシンガーソングライターであるサレカ・シャマランという女性なんですね。……いやちょっと待て、名字がシャマランて、なんだよシャマラン監督の娘だって!?どうやら映画『トラップ』、「ラストの思いもよらぬ大どんでん返し」となるのは、「シャマランの実の娘が大活躍!」という部分だったんですね!?ってかこれってネタバレになりますかね!?