最近ダラ観した韓国映画

『鋼鉄の雨』

鋼鉄の雨(Netflix映画)(監督:ヤン・ウソク 2017年韓国映画

北朝鮮でクーデターが勃発し将軍様が瀕死の重傷、さらに韓国に宣戦布告!!北の特殊工作員オムは将軍様の命を守るため共に韓国に極秘入国するが、クーデター軍はこれを執拗に追撃!そして遂に核爆弾発射のカウントダウンが!?というミリタリー・サスペンス映画。オム役を『アシュラ』のチョン・ウソン、クァク役を『哭声 コクソン』のクァク・ドウォンが演じる。監督・脚本は『弁護人』のヤン・ウソク。

非常に荒っぽく荒唐無稽なシナリオで、トム・クランシー小説やゲーム『コール・オブ・デューティー』のキャンペーンみたいなお話なのだが、こういった大風呂敷拡げまくった馬鹿馬鹿しさは嫌いじゃない。オムがアクションを展開する一方、韓国側では外交官クァクが戦争回避の為に奔走し、この二人のコントラストがまた鮮やかだ。お堅い軍人のオムに対して外交官クァクはどこかとぼけた性格をしており、その対比が面白いのと同時にユーモラスな空気を生んでいるのだ。

二人は後に手を組んでクーデター軍を追い詰めるが、このバディ展開がまた熱い。こういった「北と南が手を取り合い真の悪を打倒する」という流れは、「北朝鮮が悪ではなく祖国分断が悪なのだ」という韓国人の心情を映し出していて観ていて胸を打つのだ。

ティール・レイン (監督:ヤン・ウソク 2020年韓国映画

『鋼鉄の雨』のチョン・ウソン、クァク・ドウォン、監督ヤン・ウソクが再び手を組んで製作されたミリタリー・サスペンス。原題は『Steel Rain 2: Summit』となっており『鋼鉄の雨』の続編的作品ではあるが、内容に連続性は無い。ただし南北統一協議の進む中の物語としては前作からの続きという見方もできる。

物語は北朝鮮において韓国大統領・北朝鮮委員長・アメリカ大統領による首脳会談が行われているところに北朝鮮クーデター軍が乱入して3人を拉致、そのまま原子力潜水艦に押し込んで韓国とアメリカ、さらに日本を脅迫する、というもの。そしてその背景には中国と日本の極右組織との陰謀が絡んでいた!?という訳なんだが、いやーそれにしても前作を超える荒唐無稽極まるシナリオにまず唖然呆然、しかし現実の世界情勢でも有り得ないようなこの強引極まる馬鹿馬鹿しさが逆に面白いのだ。

その中で南北朝鮮首脳はヒーローだがアメリカ大統領は単なる道化、中国は狡猾で日本は陰湿、という絵にかいたようなステレオタイプ描写もなんだかコミックタッチで悪くない。昔のハリウッド・ミリタリー・アクションだって荒唐無稽な強引さで一点突破する作品を数々生み出していたじゃないか。そして中盤からは潜水艦同士の緊迫に満ちた戦いが勃発し、遂には核爆弾の発射が!?という大盤振る舞い。実に派手派手しい展開に十分満足した。

夜叉 -容赦なき工作戦- (Netflix映画)(監督:ナ・ヒョン 2022年韓国映画

中国東北地方の大都市を舞台に、韓国・北朝鮮・中国・日本の特殊工作員が4つ巴となり、泥沼の策謀と闘争を繰り広げてゆくというスパイ・スリラー。

主人公となるのは目的の為なら手段を択ばない韓国スパイ・夜叉(ソル・ギョング)とそのメンバー、そこに本国からやってきた堅物の監査人ハン(パク・ヘス)が絡み、夜叉の行動にいちいちイチャモンをつけまくって反目し合う、という展開になる。夜叉チームの行動だけを描くなら単純なアクション作にまとまってしまう部分を、ハンの言動や行動によりちょっとしたユーモアや不確定要素が加味され、ユニークなスパイ映画となっているのだ。このハンが引っ掻き回したせいで作戦遂行に支障が出てしまうなど、単なるお邪魔虫キャラ的要素も無きにしも非ずだが、夜叉と対立していたハンが最終的にバディとなって、熾烈な作戦に参加してゆく過程を描くことでドラマが生まれるのだ。

いささかドタバタしてしまう部分のあるシナリオではあるが、裏切り、騙し合い、水面下の結託などスパイ・スリラーの定石もきちんと盛り込まれ、緊張感溢れるアクションも十分に満足できるものがあった。あと日本人スパイ役として池内博之が参加している。

チェイス 夜明けまで走れ(監督:オ・インチョン 2016年韓国映画

むさ苦しい中年刑事とその幼馴染の会社社長とが、ヤンチャ盛りの高校生集団に銃とスマホを奪われ、夜明けまでチェイスする!?というお話である。全体的に緩い展開で、そもそも高校生如きに翻弄されるオッサンのお話という点で情けなさ全開であり、DVDジャケットから想像しちゃう緊迫の展開はラストだけで、どちらかというコメディ寄りの作品と言える。高校生役の少年たちが当時の韓流アイドルだという点でファン以外は特に見所の無い、誰に勧めるつもりもない作品ではあるが、これはこれで面白く観ることができた。年上ナメんなよ!と言いつつとことんナメらるオヤジの話なんだよなこれ。

なにしろ主人公となる二人のオッサン、特に中年刑事のひたすら貧乏臭くセコくてしょーもない顔つきとキャラが、「生活感の滲み出まくったイイ顔のオヤジ韓国俳優」好きのオレのハートを鷲掴みにしたのである。もう一人の会社社長は三つ揃えのスーツ姿だがこれも整髪料臭いオッサンには違いない。この「三つ揃えスーツオヤジと汚いジャンバー姿刑事」という組み合わせは韓国映画でも稀有なのではないか。韓国映画では兎角スーツ姿はクソ野郎の代名詞なのである。しかも三つ揃えでオヤジ臭満開。でも戦うと結構強いのな!さすが兵役のある韓国!こういったキャラ立ちした部分で楽しめた作品だった。