ロックよもやま話:オレと初期ブライアン・イーノ

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初期のブライアン・イーノ

ブライアン・イーノと言えば今はアンビエント・ミュージックの創始者のような扱いだが、オレはもっとロックなアルバムをリリースしていた頃から聴いていた。最初にアルバムを買ったのは1977年、その年発売のソロ5枚目となる『ビフォア・アンド・アフター・サイエンス』だった。

どのようにしてイーノの事を知ったのかは覚えていないのだが、1977年と言えばイーノの参加したデヴィッド・ボウイのアルバム『ロウ』や『ヒーローズ』がリリースされた年で、さらに当時からイーノが以前在籍していたバンド、ロキシー・ミュージックもよく聴いていたから、名前は知っていたはずだ。

とはいえ、オレが『ビフォア・アンド・アフター・サイエンス』で知ったイーノは既にすっかり頭頂部の寂しくなった中年男性だったが、その後ロキシー・ミュージック在籍時の写真を見たとき、そのド派手でグラムなルックスに椅子からずり落ちそうになった!なんだこの落差は!

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グラム時代のブライアン・イーノさん

というわけで今回はそのイーノのアルバムを、アンビエント・ミュージックが発動する1977年までの初期の頃に限定してざっくりと紹介。だいたいアンビエントは紹介してゆくときりが無いし、アンビエント以外でも中期以降のイーノはアルバムが山のように出ていて、結構聴いてはいるんだが全部は追い掛けきれない!あとコンピレーションとプロデュース・アルバムも省いた。

『ヒア・カム・ザ・ウォーム・ジェッツ』(1974年)

まずは1974年作の1stアルバム『ヒア・カム・ザ・ウォーム・ジェッツ』。ロキシー・ミュージック脱退後に製作したアルバムだが、本人が自らを「ノン・ミュージシャン」と呼んでいるように、楽器は全く演奏していない。ただ音作りのアイディアだけははち切れんばかりにあった人で、様々な実験の中から試行錯誤しながら生まれたアルバムとなっている。アルバム全体としてはハチャメチャな作りでまとまりも欠けているのだが、変な音があちこちから聴こえてくるのは楽しい。

それと併せゲスト・ミュージシャンが豪華で、ロバート・フリップジョン・ウェットンといったキング・クリムゾン勢、フィル・マンザネラらロキシー勢(除くブライアン・フェリー)が参加し、ハチャメチャなだけではない音を聴かせてくれている。特に中盤からロバート・フリップのギターが狂ったように唸りまくる「Baby's On Fire」がなにしろスゴイ!

『テイキング・タイガー・マウンテン』(1974年)

74年にリリースされた2ndアルバム『テイキング・タイガー・マウンテン』は『ヒア・カム・ザ・ウォーム・ジェッツ』の延長線上にあるアルバムで、多少の分別が付いたのか、『ヒア・カム・ザ~』よりもまとまりがよくなっている。同時にハチャメチャ度も抑えられ、ちょっと普通になりかけてはいるのだが、それでも十分茶目っ気に溢れたアルバムだろう。

なにより、どこをどう聴いてもロックぽくなく、かといって非ロックなジャンルというわけでもない音で、イーノがかねてから「ロックのその向こうにあるもの」を見据えていたことがここに現われているんだろう。このアルバムもゲストが豪華で、フィル・マンザネラ、アンディ・マッケイのロキシー勢の他、カンタベリー・ロック・バンドとして名高いソフト・マシーン出身のロバート・ワイアット、さらにあのフィル・コリンズがドラムで参加している!

アルバムから1曲というならこの「Put a Straw Under Baby」かな。奇妙なキュートさと儚さを感じる曲だ。ロバート・ワイアットのヴォーカルもイイ!

『アナザー・グリーン・ワールド』(1975年)

初期のイーノで一番好きなアルバムはソロ3作目、75年リリースの『アナザー・グリーン・ワールド』だろう。

収録された全14曲はヴォーカル曲とインストゥルメンタルが半々だが、そのどれもが今で言うエレクトロニカサウンドのような、淡く美しく実験的な音に満たされていたのだ。オレはイーノのこのアルバムを聴くと、いつも頭の中にミロの絵画のようなパステル調の様々な色彩と図形が浮かんでは消えてゆくのが見えた。色彩感が豊かなのだ。

曲はどれも短めの小品が並ぶが、時にミステリアスで、時に茶目っ気たっぷりで、時に穏やかな安らぎを感じさせたりと、様々な感情がふわふわと現れては消えてゆくような構成になっていた。曲によっては夏の乾いた空気の匂いや、手に触れられそうなぐらいに濃い湿り気を帯びた夜の闇、そしてまだ肌寒い早朝の曙光の煌めきすら感じるほどだった。それほど五感に訴え掛けてくる曲調だったのだ。本当に一時、オレの心象風景とまでなってしまった至宝のアルバムなんだ。

どの曲が、と言うよりも、そういった曲の一つ一つがピースとなってモザイクのように1枚のアルバムを形作っている部分が好きなのだが、1曲だけというならこの「Everything Merges With The Night」を聴いてほしい。

ディスクリート・ミュージック』(1975年)
Discreet Music: Remastered

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イーノ4作目は初めてフルネーム名義となった『ディスクリート・ミュージック』。このアルバムはその後のアンビエント・ミュージックの胎芽ともなった作品で、1曲目の表題作は30分に渡ってイーノの操作する穏やかなシンセサイザー音があたかも夕暮れ時の静けさの如くひたすらたゆたってゆくだけのものとなっている。

2曲目以降の組曲パッヘルベルのカノンに基づく3つの協奏曲」は『タイタニック号の沈没』で有名なミニマル・コントラバス奏者、ギャビン・ブライアーズによるもの。

最初アルバムを聴いたときは少々高雅に思えて取っつき難かったが、その後アンビエント・ミュージックを聴くようになってからもう一度立ち返って聴いてみると、やはりなかなか落ち着くのですよねえ。

『ビフォア・アンド・アフター・サイエンス』(1977年)

オレのイーノ初体験アルバム『ビフォア・アンド・アフター・サイエンス』は実に面白いアルバムだった。ロックのフォーマットにありながらそこからどこか逸脱したものを感じたのだ。さらにボウイに通じる知的な煌めきと美意識がそこにはあった。それと、レコードには4枚の美しい水彩画のリトグラフが封入されていて、当時それがとてもオレのお気に入りで、机の前に貼っていたりした(今でも持っているけど宝物だなあ)。

『ビフォア・アンド・アフター・サイエンス』はA面はロック的なサウンドが並んでいたが、B面は一転して静謐なサウンドで占められている。そしてそのB面の素晴らしさが、聴き続けているうちにジワジワと心に沁みてきたのだ。特にこの曲「By This River」などは、その後多くのアーティストによりカヴァーされたので、知っている方も多いかもしれない。

その他初期ブライアン・イーノ関連作

ロバート・フリップとのコラボ『No pussyfooting / Fripp & Eno』は1973年リリース。イーノが録音したギターのループサウンドロバート・フリップが様々にフレーズの変わってゆくギター音を乗せてゆく。ところでこのアルバム、2枚組CDが存在してたんだね。早速購入したけど、全部同じ音だね!(白目)

No Pussyfooting

No Pussyfooting

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もう一つ、ロバート・フリップとのコラボで『Evening Star / Fripp & Eno』は1975年作。実は『アナザー・グリーン・ワールド』と並んでオレの愛して止まないイーノ参加アルバムだ。あたかもそよ風が吹き抜けてゆくような静謐さと爽やかさがいい。

Evening Star

Evening Star

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クラウト・ロックのユニット、ハルモニアとのコラボ『Tracks & Traces / Harmoniaは76年製作だが実際にリリースされたのは97年のこと。

Tracks and Traces

Tracks and Traces

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『Cluster & Eno』クラウト・ロックのユニット、クラスターとのコラボで77年リリース。

Cluster and Eno

Cluster and Eno

  • アーティスト:Cluster
  • Bureau B
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1976年にフィル・マンザネラとイーノが結成したバンド、801の『801ライヴ』はインテリジェンス・ユーロ・ロックの名盤中の名盤だが、なんと2枚組バージョンが発売されたいたことはつい最近知った!もちろん即購入!

なお今回は「ロッキングオン2022年2月号 ブライアン・イーノ特集」を若干参考にさせていただきました。