奥様は元特殊工作員!?/映画『ノンストップ』

ノンストップ (監督:イ・チョルハ 2020年韓国映画

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「ただのおばちゃんや思うとったら、ほんまは元特殊工作員やった!?」という韓国映画、『ノンストップ』でございます。なぜ大阪弁で紹介したかというと、コテコテだったからであります!

《物語》揚げパン屋を営むミヨンは夫ソクファンと娘と暮らす平凡な主婦……だった。ある日ミヨン一家は懸賞でハワイ旅行が当選し、大喜びで旅立つ。しかし彼らの乗った飛行機がハイジャックに遭い、絶体絶命の危機に!?その時、ミヨンの秘められた能力が覚醒した!?ハイジャック犯を次々にぶちのめすミヨン!なんと彼女は元北朝鮮特殊工作員であり、脱北して韓国で暮らしていた女だったのだ!?

えー、「怒らせた奴は実は殺人マシーンだった!?」という、『96時間』や『イコライザー』あたりでもお馴染みの「元特殊工作員無双系アクション」映画であります。韓国映画でも「平凡な女子高生は実は記憶喪失の殺し屋だった!?」という『The Witch/魔女』や「売れない漫画家は実は死んだはずの特殊工作員だった!?」という『ヒットマン エージェント・ジュン』なんてェ作品がありましたな。全く「元特殊工作員無双系」の種は尽きまじ、といったところでありましょうか。

とはいえ、「元特殊工作員無双系」として新しい部分は元工作員が「おばちゃん」であるという部分でありましょう。こういった設定自体は「普通の主婦だと思ってたら元ギャングの用心棒だった!?」というベトナム映画『ハイ・フォン:ママは元ギャング』という作品がありましたが、『ハイ・フォン』がシリアス路線だった部分をこの『ノンストップ』ではアクション・コメディといった形で製作されているんですな。

なにしろ登場時のミヨン、コッテコテにおばちゃんしまくっています。髪型も化粧も服装も行動様式も、「絶対こんなおばちゃん近所にいるよな!」という生活感あふれまくった庶民派おばちゃんなんですよ。しかーし!ハイジャックにより家族に身に危機が及んだ時、元特殊工作員の血が目覚め、ハイジャック犯制圧に乗り出すのです!この突如ガラリと表情を変える瞬間がなにしろカッコイイ!ええでおばちゃん!悪いヤツらをいてこましてまえ!

舞台となるのはジャンボジェット、その細長く狭い通路を活かしたアクションが実に楽しい。ここでミヨンは鬼神の如く技を繰り出し、電光石火で敵どもをなぎ倒します!とはいえ敵もさるもの、ただやられてばかりいるわけではありません。隙を突かれたミヨンに危機が!?と思っていたら実は機内には力強い味方がいた!?その正体は!?という部分でまた面白さが倍加するんですね。旅客機の構造を活かしたハイジャック犯撃退の方法もこのテのハイジャックモノでは斬新なことをやっていたんじゃないかな。

ただ映画的に見るなら飛行機に乗るまでの展開が少々長く感じたのと、ハイジャック犯が普通に銃やナイフを飛行機に持ち込んでるのはどうなのソレ?と思ってしまいました。ハイジャックの理由も「なんも飛行機の中でやんなくてもええやん」と思わせるものだったな。コメディシーンは豊富に盛り込まれ、大いに笑わせてくれる反面、物語のテンポの妨げとなっている部分もあり、全体的に散漫に感じさせてしまったのも難でした。とはいえ、カッコイイおばちゃんをひたすら応援できて、所々クスクス笑いの挟まる娯楽作として観るならば及第点の作品だと言えるでしょう。