最近妙にハマっている音楽は《ブラック・ジャズ》界隈の音である。《ブラック・ジャズ》、「そりゃあジャズは黒人の生み出したものだからブラックなんだろうな」と最初は思っていたが実はそうではなかった。1971年設立、5年の間にアルバム20枚のみを残した幻のレーベル《BLACK JAZZ RECORDS》のことである。
ブラックジャズは、アメリカ西海岸にて、1971年にソウルフルなピアニスト、ジーン・ラッセルと白人パーカッショニストのディック・ショリーの2人によって設立。1976年に休止するまでに、20枚の作品を発表。 発表された作品群に、共通して言える事は、ブラックネス溢れるものが多く、スピリチュアルジャズを語る上で、避けては通れないタイトルが多数存在しています。
実は音自体には随分昔に触れていた。オレはジャイルズ・ピーターソンが好きなのだが、彼のMIXアルバムに『Black Jazz Radio』という作品があり、内容というよりもジャイルズ・ピーターソン作品だったからというので購入して聴いてみたのだ。ただ当時(2012年)はジャズの音があまり耳慣れておらず、それほど聴き込むことはなかった。当然、《BLACK JAZZ RECORDS》の事は全く知らなかった。
次に 音源に触れたのはセオ・パリッシュのやはりMIXアルバム『Black Jazz Signature』だった。クラブ・ミュージックの鬼才と謳われるセオ・パリッシュのアルバムはとりあえず出たら押さえておくようにしていたのでこれも購入したが、ジャズ・サウンド全開のこのアルバムも、聴いた当初はあまりピンと来なかった。そしてやはりこの時も《BLACK JAZZ RECORDS》の事は全く知っていなかった(多分オレはバカなんだと思う)。
ところがだ。最近やっとジャズの音が耳に馴染むようになり、昔購入したままほっぽらかしていた様々なアルバムをもう一度引っ張り出して聴くようになった。そんな経緯でこの『Black Jazz Signature』も改めて聴いてみたのだ。そしてオレは驚愕した。
「なんだこの音は」

THEO PARRISH'S BLACK JAZZ SIGNATURE
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どこまでもどす黒く嵐のように吹きすさぶ音。溶岩のように熱く煮えたぎった情念が叩き付けられる音。それは、これまでBGM代わりに流し聴きしていたジャズの音とは異なっていた。そしてオレはやっと「これが一体何なのか」を調べることを思いつき、そこでようやく《BLACK JAZZ RECORDS》というものの存在に行きついたという訳である(多分オレはニブイんだと思う)。
そしてこのセオ・パリッシュMIXの中でも最もヤバかった音というのが、Rudolph Johnsonの「The Highest Pleasure」だったのだ。ヤバイよ。後半に行くにつれてどんどんヤバさが加速してゆくんだよこれ。
Rudolph Johnson - The Highest Pleasure
というわけでやっと《BLACK JAZZ RECORDS》のことを知ったオレは何かアルバムが欲しい、と思ったのだが、「幻の」と呼ばれたものが一度全アルバム復刻されたのだけれども、それらがまたもや入手困難となり、再び「幻の」レーベルと化しつつあった。例えばP-ヴァインからリリースされた全20アルバム収録のボックスセットなんて現在アマゾンで6万5千円のプレミア価格となっている。
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ブラック・ジャズ・ボックス [初回限定生産] [紙ジャケ仕様]
- アーティスト: オムニバス,ケリー・パターソン,ダグ・カーン
- 出版社/メーカー: Pヴァイン・レコード
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こんな値段のものを買う訳にもいかないので、MIXアルバムをさがしてみたらこれが結構出ていた。
まずはMUROの『Diggin' Black Jazz』。バランスが良く、またよりクラブ・サウンド的なMIXになっていると思う。

KING OF DIGGIN' "DIGGIN' BLACK JAZZ"
- アーティスト: MURO
- 出版社/メーカー: SNOWDOG/BLACK JAZZ
- 発売日: 2012/12/12
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そしてDJ Mitsuの『Solid Black』。こちらは若干メロウなのがお気に入り。全28曲を矢継ぎ早にMIXしてみせているので《BLACK JAZZ RECORDS》の持つ音のコアを十分堪能できるのではないか。

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オムニバス・アルバムも幾つか出ていた。
その名もズバリ『The Best Of Black Jazz』。しかし「とりあえず評価の高い曲を集めてみました」感が強く、統一感に乏しい上収録曲も少なく、面白みに欠けるきらいがある。

- アーティスト: Various Artists
- 出版社/メーカー: Universal Sound
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逆にソウルフルな曲に絞ってセレクトした『フリー・ソウル~ザ・クラシック・オブ・ブラック・ジャズ』は《BLACK JAZZ RECORDS》のもう一つの側面をクローズアップさせていて楽しめた。
一方、カフェ的なセンスでセレクトされた『ブラック・ジャズ・フォー・カフェ・アプレミディ』は"一般的に言われるジャズな音"をコンパイルしており、これはこれで正統派な《BLACK JAZZ RECORDS》の音を楽しめる出来になっている。
多分これらが《BLACK JAZZ RECORDS》のオムニバスとMIXアルバムの全てではないかと思う。この中で1枚だけ、というならやはりあまりにも暗く熱いセオ・パリッシュMIXの『Black Jazz Signature』だろうか。 次はバラエティと共に確かな統一感を感じさせるジャイルズ・ピーターソンの『Black Jazz Radio』かな。好みもあるかとは思うが参考までにどうぞ。面白かったのは殆どどのアルバムにもRudolph Johnsonの「The Highest Pleasure」が収録されていたことだな。やはり《BLACK JAZZ RECORDS》を代表する曲だったんだろうか。