地図で紐解く世界の不思議〜『世界不思議地図 THE WONDER MAPS』

■世界不思議地図 THE WONDER MAPS / 佐藤健寿

世界不思議地図 THE WONDER MAPS

『クレイジージャーニー』(TBS系)で話題沸騰!『奇界遺産』写真家・佐藤健寿による親子で楽しめる奇妙なワールド・ガイド
未確認生物から超古代遺跡、都市伝説から少数民族まで──世界各地の“奇妙なもの"を撮り続ける著者が、不思議な事件・出来事・物・場所・お祭りなどを膨大なイラスト、さらに写真と解説で紹介。好奇心あふれる子どもたちと、好奇心を忘れた大人たちへ贈る、空前絶後の不思議な世界地図。

オカルトの好きな子供時代だった。UFOやネッシーや幽霊の話が好きだった。怪奇現象や不可解な古代遺物の話が好きだった。世界は科学では解明しきれない不気味で怪しい謎と不思議に満ち満ちていた。
そして大人になってみると、世界には不思議なんて何も無いんだということが分かってしまった。UFOもネッシーも幽霊もいない。怪奇現象も古代遺物もみんな合理的な理由が存在する。だけれども、全てが説明された世界は、味気なく、つまらないものでもあった。
『奇界遺産』、そして「クレイジー・ジャーニー」で有名な佐藤健寿による新刊本『世界不思議地図 THE WONDER MAPS』は、そのタイトル通り地図で旅する世界の不思議を著したものだ。そこには昔懐かしい「UFOやネッシーや幽霊の話」「怪奇現象や不可解な古代遺物の話」で満ち満ちている。しかしこの本で扱われているのはそれだけではない。佐藤お得意の様々な"奇界遺産"がその中に含まれているばかりか、世界各国に存在する奇妙な文化や風習、伝説や神話、クレイジーな偉人、そして実在する異様な景色なども収められているのだ。まさに"世界の不思議"を網羅した、『世界不思議地図』なのである。
そこには、既に見知っていたものもあったが、多くは、聞いたことも無かったもの、名前こそ知っていたが詳しくは知らなかった"不思議"が溢れ返っていた。そして、見知っていたものですら、とても新鮮な気持ちで接することが出来た。これらは、地図の形で体系的に網羅されているがゆえなのだろう。これらは、以前から佐藤が運営していたオカルト関連のニュースを扱うウェブサイト『X51.ORG』の流れに則ったものだろう。
そして、「世界には不思議なんて何も無い」と思っていたオレにすら、これらの"不思議"は、新風のように心ときめかされるものを感じてしまったのだ。
左様。UFOもネッシーも幽霊もいないかもしれない。しかし人は、そういった"不思議"になぜか心奪われたり、語ってしまうものでもある。佐藤は本書の前書きでこう書く。「しかしそれらが本当か、あるいは実在したかどうかは、実は私にとって大きな問題ではありません。(中略)もしもそれが人間の想像の産物だとしても「人間はどうしてそんなことを考えるのか?」と、結局不思議に思えるからです」そして、これら地図を埋めたものを、【人類の想像力と好奇心が発見した奇妙で不思議な何か】と結論付けるのだ。
そう。この世界に不思議なものなど何もないかもしれない。だが、それらに不思議を見出す【人間】が、最も不思議な存在であるということなのだ。
併せて、本書でイラストを担当している阿部結氏のグラフィックがまた楽しい。最初は絵じゃなくて写真を載せてほしかったな、とも思ったが、版権などもあってこれに落ち着いたのかもしれない。だがしかし、この阿部結氏のグラフィックにより、ガチなオカルト本ではなく老若男女楽しめる"不思議本"として完成しているのだ。文章にはルビも振られ、低年齢層読者にも対応している部分が心憎い。お父さんお母さん、子供へのプレゼントにも最適ですぜ(ニヤリ)。
それにしても佐藤健寿、ひょっとしたら新時代の荒俣宏になってしまうのかもしれないな。今後の活躍も楽しみだ。

世界不思議地図 THE WONDER MAPS

世界不思議地図 THE WONDER MAPS

■奇界遺産 2 / 佐藤健寿

奇界遺産2
そんな佐藤健寿を有名にした大型写真本『奇界遺産』の第2巻。2014年に刊行されていたらしい。1巻目は随分前に入手していて楽しんでいたが、2巻目まではいらないだろう、と暫く放置していたものの、最近の佐藤健寿フィーバーについつい買ってしまったという訳である。するとこれがまた、面白い。確かにやっていることは1巻目とは変わりはないのだが、1巻目が選りに選った世界の奇観をじっくりと見せてゆく編集だったものが、この2巻では「まだまだいっぱいありまっせ!」とばかりにこれでもかとばかりの分量の"奇界"を見せつけてゆくのである。ページ数は1巻と同じぐらいだが、濃度が濃いのだ。しかも"奇界"自体のクオリティ(?)が、1巻にまったくひけをとらないのである。1巻目ではイラストを漫☆画太郎が担当していたが、この2巻では諸星大二郎が担当している、というのも嬉しい(あれ、両者とも名前に星がついてる!?)。つまりどういうことかというと、1巻目を持っている人も、2巻目も買い、ということなのである。

奇界遺産2

奇界遺産2

奇界遺産

奇界遺産