■Kochadaiiyaan (監督:スーンダルヤー・ラジニカーント 2014年インド映画)
2014年、インド映画界が新たに世に問う問題作、その名は『Kochadaiiyaan(コーチャダイヤーン)』!
インド映画界に君臨するスーパースター・ラジニカーント主演!
インド映画界最高の美貌を誇る若手女優ディーピカー・パードゥコーン共演!
そしてインド映画界最大の話題となったインド初の全編フルCGムービー!
さあ君も『コーチャダイヤーン』の世界を体感せよ!
コーヒーだい!緑茶だい!紅茶だいヤーン!!
…というわけで『コーチャダイヤーン』であります。ラジニカーント様とディーピカー様が共演!というのも凄いですが、映画全編がフルCGで制作された歴史ファンタジー作品である、というのがなにしろ話題になった作品なんですね。だからラジニカーント様とディーピカー様はモーション・キャプチャーで演じたCGの姿で出てくるというわけなんですよ。さらにアミターブ・バッチャンがナレーションを務め、音楽はA・R・ラフマーン!それと同時に話題になったのが、相当ヒドイ出来らしいということだったんですね!
【物語】はるか昔、いにしえの南インド。カリンガプリ王国の軍事司令官ラナ(ラジニカーント)は、国の奴隷たち全員を戦士に徴用し、敵対するコッタイパッティナム王国へと進撃する。相対するはコッタイパッティナム王国の王子センゴダゴン。しかし、戦いの火蓋が切られるかと思われたのも束の間、ラナとセンゴダゴンは固く抱擁しあい、ラナの兵たち全員をコッタイパッティナム王国へと連れ帰る。実はこれには過去の深い因縁があった。かつてコッタイパッティナム王国に伝説の戦士コーチャダイヤーンがおり、華々しい戦績を挙げていたが、カリンガプリ王国の陰謀により、全ての兵を奴隷として奪われてしまっていた。そしてラナはコーチャダイヤーンの息子であり、彼は父の汚名をそそぐ為に子供の頃にカリンガプリ王国へ潜入、奴隷となった自国の兵士を取り戻そうとこの日まで自らの出生を偽っていたのだ。ラナの凱旋と戦士の帰還に湧くコッタイパッティナム王国。しかしラナにはもう一つの計画があった。それは処刑された父コーチャダイヤーンの復讐を果たすことだった。
とまあこんなお話が、めくるめくようなフルCGで描かれるというわけなんですが、なにしろグラフィックが酷い。ゲーム画面並みのCG、なんて言い方がありますが、きょうびゲームだってフルHD仕様でびっくりするぐらい綺麗な映像を見せるっていうのに、この『コーチャダイヤーン』はレベルでいうとプレステ2並みのCG映像なんです。ええ、プレステ4でも3でもなく2。のっぺりした背景にのっぺりした登場人物が登場し機械仕掛けのように動いている、そんな感じです。モーションキャプチャーを使用しているはずの主要人物すらぎこちない動きを見せてしまっています。
なによりがっかりさせられるのが主演者たちの造形で、ラジカーント様はまあ分かるんですが、
ディーピカ様ともなるともう何が何だか…。おぉ〜い責任者出てこぉ〜いッ!!
そんなわけで、CGアニメ作品としてはどうにも稚拙さと粗さの目立つある意味失敗作ととってもいいような作品なんですが、ただ個人的にこの作品がどうしようもなくつまんなかったかというと、実はそうでもないんですよ。確かに最初はあのCGを見て「あー噂通りやっぱりヒドイ!」と半笑いこそ浮かびましたが、話が進んでゆくとまあこれも味わいの一つ、となんだか納得しちゃったんですね。確かにピクサーやドリームワークスみたいなアメリカのCGアニメ制作会社の凄まじいクオリティの作品と比べると見劣りどころの騒ぎじゃないんですが、ひょっとしたらこれ作ったインドのCGアニメーターは「あれと同じにやる必要はない、そもそもアニメというものはこの程度で十分」ぐらいの認識だったんじゃないのか、そしてこの程度のヌルい認識具合がインドらしくていいじゃん?なんて好意的に解釈しているぐらいなんです。
それに、お話の作りはそれなりにしっかりしているし、見せる所は見せていて、例えグラフィック的にしょぼくても、インドの王宮がドーン!と現れ、古代インドの甲冑を着た兵士たちが戦い、インド映画っぽい無茶なアクションが挿入され、ついでにインド映画らしい歌と踊りが入り(まあちょっとロボットダンス的ではありますが)、それらが実にインドらしい鮮やかな色彩で描かれているので、「うん、普通にインド映画じゃん」となんだか満足してしまえるんですね。で、変な所は変な所で「まあインド映画だし」ということでスルーできちゃうんですよ。
そんな具合に、自分はこの『コーチャダイヤーン』、ネタ的に満足できる作品でしたね。それに、この作品はインド映画界でもまだまだ第一歩を記しただけのCG作品なんですから、今後の展開を期待してあげればいいんじゃないでしょうか。なんでもラジニカーントのキャプチャーいっぱい撮ったから、次作はラジニカーントいなくても簡単にできちゃうよ?とかあまりにもイージーな話もどこかで読みましたが、面白いからまた一作作ってみてください。今度はインドの神様がいっぱい出て来るようなのが観たいなあ。