ピザ怖いピザ怖いピザ怖い!〜インドの"ピザ"ホラー映画『Pizza』

■Pizza (監督:カールティク・スッバラージ 2012年インド映画)


「ところでインドのホラー映画はどうなっておるのだろう?」と思ったわけである。この間『Go Goa Gone』というタイトルのインド産ゾンビ・コメディは観たけれども、あれはあくまでコメディがメイン。今のところガチなインド・ホラーは観ていない。これは日本のインド映画ブログであんまり紹介されていないから、というのもあって、どれが面白いのかよく分からないのである。

そこで選んだインド産ホラー映画は、タイトルがその名も『Pizza』。タミル語のホラー映画である。なんでこの映画を選んだかというと、ただ単にオレがピザ好きだからである。大好物といってもいい。週末は宅配ピザを注文してビールごきゅごきゅ飲みながらDVDをダラダラ観る。もう20年位続いている習慣である。きっとこの間、オレは5万枚ぐらいピザを食ってるに違いない。当然飲んだビールは5万本、吸ったタバコは5万箱である。

そんなことより映画『Pizza』である。「ピザ」っていうぐらいだからピザにまつわるホラーに間違いない。ピザ・ホラー…。それは巨大化したトマトが人を襲うという映画『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』のように、巨大化したピザが暴れまわる、といったものなのであろうか。はたまた『八仙飯店之人肉饅頭』のように、ピザのトッピングが人肉ペパロニでした!というおぞましい物語なのであろうか。想像逞しくしながらオレは映画を観始めたのである。

物語の主人公はピザ配達人である。彼は注文されたピザをある屋敷に届けるが、屋敷の女主人が2階にお金を取りに行ったまま降りてこない。しかも屋敷は突然の停電。そして女主人を探しに2階に上ったピザ配達人が見たものは、女主人の惨殺死体だった!パニックに駆られ逃げ出そうとするピザ配達人だったが、屋敷から一歩も出られず、さらに電話もうまく繋がらない。そしてふと配達したピザを見ると、誰かが食った跡がある…。「この屋敷には誰かがいる!」閉ざされた空間の中でピザ配達人と謎の存在との攻防が始まる。

という物語なのだが、これが結構面白かった。ここまでの粗筋だとスラッシャーホラーのようなのだが、このあと実は心霊要素が絡んでくる。すなわちこの映画、「幽霊屋敷に閉じ込められたピザ配達人」といった物語なのである。映画はこうして「真っ暗なお化け屋敷で不気味な物音に怯え突然現れる亡霊の姿に腰を抜かしながら逃げることのできない恐怖を味わう主人公」を描いてゆく。暗闇から「わっ!」と出てくる亡霊の姿は単純なこけ脅かしと分かっていてもやっぱり怖い。オレは映画を観ている間10回位「ぎえええ!」と叫んで飛び上がった。そういった部分では、決して目新しいものではないにせよ、ホラーとして十分機能した及第点の作品といえる。

しかしだ。実はこの映画、これだけの映画では決してなかったのだ。なんと最後にとんでもないどんでん返しが待っているのだ。観終わって、その物語展開と構成の妙に驚愕するのと同時に、「してやられた!」と大いに感心させられた。オレもそこそこハリウッドのホラー映画は観ているが、ハリウッド・ホラーですらこんな展開を迎える作品はこれまでなかったのではないか。それだけ脚本のオリジナリティに優れていたのだ。この辺、ホラー映画マニアの方にも是非見ていただいて、このアイディアを吟味してみてもらいたい。ある意味、初めて観たインド・ホラーなのにも関わらず、こんな良作に当たったことがちょっと嬉しかった。

ちなみにこの映画、実は字幕無しタミル語音声のみの状態で観た。つまり台詞が何を言っているのか全く分からずに観たのである。たまに英語の単語が出るが、それもたいした助けにはならない。しかし「ホラー・ジャンルだったら言葉が全く分からなくとも面白く観られるんじゃないか?」といったちょっとしたチャレンジのつもりで観たら、これが案外映像と状況で理解できてしまった。ただもちろん、細かな部分は取りこぼしているので、この作品を日本で紹介している多分唯一のブログ「カーヴェリ川長治の南インド映画日記」さんの記事「【Pizza】 (Tamil)」を参考にさせてもらった。

この作品は2013年に続編『Pizza II: Villa』が制作され、これが1作目同様相当のヒットを飛ばしたらしい。また、2014年にヒンディー語でリメイク(しかも3D)され上映されたが評判のほどは知らない。

(↓この英語字幕付き動画見つけたの観終った後だったという…)