インドのキラッキラな学園ドラマ〜映画『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』

■スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!! (監督:カラン・ジョーハル 2012年インド映画)


名門私立高校を舞台に、若者たちが「学園NO.1コンテスト」のトップを目指して競い合い、その中で恋や友情、ライバル同士の火花が燃える!という青春ストーリーです。今年日本で公開されマサラ上映で話題にもなった映画ですね。日本版DVDがリリースされたので観てみました。

舞台となるのは名門私立校・聖テレーザ学園。ここでは毎年、「スチューデント・オブ・ザ・イヤー(SotY)」と呼ばれるその年NO.1の学生を選ぶコンテストが開催されていました。資産家で学園の理事を務める父を持つロハン(ヴァルン・ダワン)はコンテスト優勝の最有力候補でしたが、転校生アビ(シッダールト・マルホトラ)の登場で雲行きが怪しくなります。ロハンはそんなアビを挑発し、最初は険悪な空気が流れますが、いつしか二人には友情が芽生えます。そんなアビにある日、ロハンの恋人シャナヤ(アーリヤー・バット)が近づき、「女たらしのロハンが私だけを見るように協力してほしい」と持ちかけ、引き受けたアビでしたが、そんなやりとりの中、シャナヤとアビは恋に落ち、そしてそれをロハンに知られてしまうのです。

高級車、ブランド品、自家用ジェット、もう「どこのバブルやねん」と思っちゃうほどゴージャス極まりないキラッキラの学園生活が描かれていましたね。インド経済自体は映画公開年の2012年には失速していますが、まあ持ってる人は持ってるってことでしょう。もちろん映画ならでは誇張もあるのでしょうが、こんなキラキラぶりを楽しむのもこの映画の見どころのひとつかもしれませんね。ただしこの物語では皆が皆お金持ちの家庭って訳じゃなくて、富裕層の学生と中流階級層の学生とではっきりと分かれているんですね。主人公であるカップル、ロハンとシャナヤは富裕層ですが、転校生アビは中流階級です。しかしアビ自身も「SotY」を獲得することで得られる特待制度を狙っているんですね。一方ロハンは富裕層のプライドを満足させるためにコンテスト優勝を狙っているのでしょう。

しかしこの映画ではそういった経済格差を描くのが主眼ではありません。また、アビがもともとスポーツ万能であること、そしてアビとロハンに早い段階で友情が芽生えることから、ハリウッドの学園ものによく見られるスクールカーストを描くものでもないんです。主眼となるのはシャナヤを巡るアビとロハンの諍い、そしてあくまでも「SotY」というコンテスト競技そのもののエキサイティングぶりなんですね。そもそもこの競技、クイズ・ダンス・トライアスロンの3つを競うんですが、トライアスロンはまだしも、クイズにダンスって、「なんじゃそりゃ?」って感じですよね。まともに受け取ると相当馬鹿馬鹿しいのですが、夢みたいにバブリーな世界と珍妙な競技を描くこの作品、これはこれでコミック的な展開を目指した青春映画なんだと思えば十分楽しむことができるんですよ。

しかし決してお気楽なだけのオチャラケ物語というわけではなくて、この作品には『きっと、うまくいく』にも通じる競争社会への批判や風刺がきちんと盛り込まれ、ピリリと締めているんですね。さらにヴァルン・ダワン、シッダールト・マルホトラ、アーリヤー・バットというインド映画界では今をときめく3人の若手スターを早い段階から起用し、話題になった作品でもあります。特にアーリヤー・バットのこの映画の後の大活躍ぶりには目を見張るものがありますね。そういった部分の新鮮さも魅力のひとつとなりでしょう。もうなにしろ男優二人がなんだか知らないけど頻繁に裸体を晒し、そのくっきり割れた腹筋を見せつけてくれちゃってるもんですから、一緒に観ていた相方さんが時折瞳孔開いた顔でよだれ垂らしてたぐらいですよ。いやー割れた腹筋ってねェ…生まれてこの方腹筋なんて割ったことのないオレには今後も無理っすよ!

http://www.youtube.com/watch?v=_g3zk1dTEhI:movie:W620