『コクリコ坂から』は『おもひでぽろぽろ』が『耳をすませば』したみたいなアニメだった

コクリコ坂から (監督:宮崎吾朗 2011年日本映画)


60年代の日本、横浜を舞台に高校生少年少女が青春している様子を描いたジブリ・アニメです。いやなにこの大雑把なあらすじ紹介。非常に清純かつ清廉なドラマで、退屈しなかったし端整によく作り上げられた、文部科学省推薦映画になってもおかしくない、実に真っ当なアニメだとは思うんですが、なんかこう観ていてお尻のあたりがムズムズするお話でもありましたね。ジブリ・ブランドのアニメじゃなきゃこういった生真面目な文芸作品観たかどうかわかんないですけどね。というか高校生の時期なんざとっくに遠い昔の記憶になってしまったジジイのオレにとって、この『コクリコ坂から』に限らず高校生少年少女が主人公の物語ってなんかこうもうどうでもいいんだよなあとか思いながら観てしまうんです。同級生同士のなんやかやとか学校のありかたに対するあれやこれやとか初恋のドキドキ感とか、なんかこうそういうこともあったなあ、とか思いつつ、もうそういった初々しさとか若さゆえの心情とか行動とかにリアリティを感じない、というか、学校卒業して社会に出てからのしょうもない毎日のほうがはるかにリアルで、高校時代って夢みたいなもんだったナァ、なんて遠い世界の出来事見ているみたいな気分になってしまうんです。もうすっかり小汚いジジイなんですよええ。映画を観て漠然と思ったのはなんで今60年代の高度成長期の日本を描くんだろうなあ、ということですね。みんな上を向いて歩いてた時代だから、この時代みたいに元気出して生きましょうよ、ということなんでしょうか。そんなこと言われてもなあ。この時代のリアリティを、現代のリアリティにどう繋げるか、というのがこういったちょっと前の時代を舞台にしたドラマを作るうえでのポイントだと思うんですが、結局「懐かしいよねえ」「こういう時代もあったよねえ」で終わっちゃうのは、ドラマ作りに対する問題意識がちょい希薄だったのかもしれないんじゃないですかね。

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