オレの45曲

オレの近辺で今密かに流行っている【人生に影響を与えた45曲】。もとはとみさわさんのブログ『pithecanthropus collectus(蒐集原人)』を読んで知り、自分でもやってみたかったのだが、45曲並べるのしんどそうだなあ…と思い断念。しかし今度はdoyさんのところでやっておられるのを見て、これがまた実に楽しそうで、ええいやっつけちまえ!と意を決して並べ始めたのだが、意外とこれがしんどい…。というのはdoyさんの真似っこをしてYouTubeを貼ろうとしたからで、しかも動画の選定中、ついつい聞き入ってしまいなかなかはかどらないのだ。それと1アーチスト1曲という縛りにしたため(グループ・アーチストのソロは別)、「このアーチストそれ自体に人生影響されてるんだから1曲なんて無理だろ!?」とああでもないこうでもないと曲選定に逡巡しているうちに時間は経つばかり…。それにねえ、音楽の大好きなオレにとって、"人生に影響を与えた"曲を選ぶってぇことは、オレの49年間の人生そのものを遡る事にもなるんですよ。1曲1曲聴きながら、「ああ、あの時はあんなこともあったなあ、こんなこともあったなあ…」などと様々ことが走馬灯のように蘇り、追憶に浸ることもしばしば、ええ、作成完了までに休日深夜から早朝まで、ほぼ4、5時間は掛かりました…。だから誰か一人でもいい!貼ったYouTube全部聴いてくれ!頼む(哀願)!…というわけで便乗企画のはじまりはじまり〜。
1.冨田勲 / 火星
もうね、ロックなんか聴く前に、冨田だったんです、シンセサイザー・ミュージックだったんです。15の時かなあ、冨田のアルバム『惑星』を聴いてから、オレはずっとシンセサイザー・ミュージックの虜だったんですよ。

2.ELTON JOHN / PINBALL WIZARD
それまで映画音楽ばっかり聴いていたオコチャマのオレをロックに目覚めさせたのは映画『トミー』のこの曲だったんです。14、5歳ぐらいの頃だったろうか、ピアノを打楽器みたいに打ち鳴らすこの曲にオレは音楽の価値観全部が変わったような気がした。

3.DAVID BOWIE / TIME
ELTON JOHNのすぐ後に聴いたのがBowieだった。なぜBowieだったかというととってもSFだった当事のオレにとってBowieはとってもSFだったんです。オレにとってNo.1ロック・アーチストといったらBowieです。その神アーチストBowieの曲からたった1曲、なんてぇ馬鹿なことはとても出来ませんが、聴いてて一番キンタマきゅぅ〜っとなるのはこの曲!

4.ROXY MUSIC / IN EVERY DREAM HOME A HEARTACHE(LIVE)
Bowieと並んでオレの人生で絶対忘れられないロック・グループがROXY MUSIC、その中でも臓腑をえぐられるようなBryan Feryの唄声が胸を掻き毟って止まない決定版といえばこれ!

5.BRYAN FERRY / SMOKE GET IN YOUR EYES
RoxyのBryan Ferryソロ、スタンダード・ナンバーのカヴァーですが、いつ聴いても切ない気持ちでいっぱいだよ!

6.BRYAN ENO / EVERYTHING MERGES WITH THE NIGHT
元RoxyのEnoも本当に好きだったなあ、もとはエレクトロ色の強い人なんですが、アコースティックなこの曲にコーコーセーの頃のオレは胸をキュンキュン言わせてました!ギターはRobert Fripp!

7.FRIPP & ENO / EVENING STAR
そしてそのEnoとRobert Frippのユニットで作られたこの曲の、タイトルそのままである「宵の明星」を思わせる美しさと静謐さは今聴いてもひたすらに素晴らしい!

8.LOU REED / PERFECT DAY
Bowie絡みで聴いていたLou Reedの曲は他愛も無い日常がそれ即ち"完璧な日"だって歌う、でもなんだかそれがいつ壊れるか分からないようなはかなさに満ちた珠玉の名作!

9.THE DOORS / WHEN THE MUSIC'S OVER
オレを詩と死の世界に連れて行ってしまったThe Doores、エロスとタナトスと詩と暴力のせめぎ会うこの名作を聴け!

10.PINK FLOYD / WISH YOU WERE HERE
いやー、実は中坊のころからプログレ・ファンだったんですよ。そしてプログレと言えばPink Floyd、アルバム・タイトル邦題が『あなたがここにいて欲しい』、これはおキチガイ様になっちゃったかつてのバンド・リーダーに捧げた曲なんです。

11.KING CRIMSON / FRACTURE
そしてプログレ中のプログレKing Crimson!そのアルバムの中で一番聴いたのは『暗黒の世界』、その最終曲なんですが、長いこの曲のクライマックスの凄まじいテンションと緊張感は10代半ばの頃のオレの最もハード&ソリッドなロック・ミュージックでした!

12.YES / AND YOU AND I
どこまでも美しいアンサンブルを聴かせる超絶テク・プログレ・バンドYes、彼らの3枚組ライブ・アルバム『Yessongs』はロジャー・ディーンのファンタジックなジャケ絵も含め10代半ばの頃のオレのマストでした。

13.EMERSON,LAKE & PALMER / KARN EVIL 9
プログレと言えば忘れちゃいけないEL&P、アルバム『恐怖の頭脳改革』のこの曲のハイテンションなスピード感は聴いてて頭の中にヤヴァイ物質沸きまくりだった!

14.DEVO / (I CAN'T GET NO) SATISFACTION
そしてコーコーセーになったぐらいの頃、オレはプログレをさっさと見限りニュー・ウェーブ時代が到来。Devoのチープなペラペラ感とロボットみたいな感情の無さ、変なことに血道をあげるマニアックさはオタク音楽の走りだったのでしょう!

15.THE SPECIALS / GANGSTARS
ツートーン・スカ!初めて聴いたこのブリティッシュ・スカ・バンドのカッコよさといたら衝撃的でした!オレのコーコーセーの頃の代名詞とも言えるような曲ですね!

16.TUBEWAY ARMY(GARY NUMAN) / ME!I DISCONECTED FROM YOU
シンセを奏でるオタク青年が「友達なんかいらない。引きこもりで何が悪い?」と歌うどこまでもねじれた音色がひねくれたコーコーセー時代のオレのハートを鷲掴み!

17.XTC / LIVING THROUGH ANOTHER CUBA
ニュー・ウェーブといえばスティーブ・リリーホワイト・プロデュース・アルバム『ブラック・シー』のこの曲!

18.JOHN FOXX / UNDERPASS
GARY NUMANと並んでエキセントリックなシンセ・ロックを奏でていたJOHN FOXX、ヨーロピアンなセンス、美しくクールで非人間的な音色、狐目の美男子、いやあ心底カッコよかったですね。

19.PUBLIC IMAGE LTD. / MEMORIES
そしてニュー・ウェーブといえばなんといってもこのバンドP.I.L.!元Sex PistolsのリーダーJohn Lydonが結成したこのバンドのダビーで暴力的なベース音が地響きを上げるアルバム『メタル・ボックス』はニュー・ウェーブの生んだ最も重要なアルバムと言ってもいいでしょう!

20.POLICE / WALKING ON THE MOON
パンク・ニューウェーブの波に乗ってベテラン・ミュージシャン連中がこっそりパンクな音を出してデビューしたThe Police、レゲエのリズムを拝借したこの曲にはもってかれちゃったよなあ。これは学友の間で相当話題になりました。

21.JAPAN / GENTLEMEN TAKE POLAROIDS
ニューウェーブ界隈でも最も個性的で異彩を放っていたJapan、ビジュアル・バンドっぽく捉えられがちですが透徹した美意識と同時に非常に完成度の高い楽曲を生んでいたバンドでもあったんですよね。この曲は雨の日の定番ソングだったなあ(アルバムジャケットが雨だったから、ってだけのことなんですが)。

22.CABARET VOLTAIRE / WESTERN MANTRA
そして18歳になったオレは上京して世間の荒波に揉まれ、すっかり荒んだ気分でインダストリアル・ミュージックに走った!20数分間延々と続くザラザラのリズム・ボックス音!

23.THROBBING GRISTLE / THE OLD MAN SMILED
こちらも恐怖のインダストリアル・ミュージック!毎晩泥酔してヘッドホンで最大音量で聴いてたなあ!あん時はオレも若かったんだよ!

24.JOY DIVISION / TRANSMISSION
もう駄目だ…人生終わった…20歳になる前にすっかり負け犬と化したオレが毎日暗い顔して聴いていたのは勿論Joy Division!もう葬式のような音楽だったなあ!その中で最もダンサンブルであり同時に強迫観念に渦巻くボーカルが轟くJoy Division名曲中の名曲!

25.NEW OREDER / REGRET
そしてJoy DivisionといえばNew Order!彼らの最も有名な曲は「Blue Monday」ですが、オレがNew Orderで一番好きな曲はこれ!タイトルが「後悔」だなんてああもう胸がキュンキュンしまくりだぜ!

26.ROBERT WYATT / AT LAST I AM FREE
この18〜20歳過ぎのオレはもう毎日凹みまくってまたね〜。そんなオレの一番慰めになった曲はこの曲だったんだよ…。

27.BEN WATT / NORTHMARINE DRIVE
あの頃のオレには未来もないし希望もないし暗いしダサいしこんなオレが女子にもモテるわけもないしさあ、だからこんな曲聴いて毎日メソメソしてたんだよ…。

28.EVERYTHING BUT THE GIRL / NIGHT AND DAY
そしてフラれてはこんな曲聴いてたなあ。

29.原マスミ / 海で暮らす
海外アーチストばかり出てますが、日本人アーチストも聴いてなかったわけじゃないんですよ。この原マスミは知る人ぞ知る、といった超レア・アーチストなんですが、実はCMヴォイスやよしもとばななの本の表紙絵を描いてたりする、ちょっと芸術肌の人なんでけどね、なにしろ詩の世界が凄く独特、唯一無二の世界観を持っている人なんですよ。この曲は「部屋に帰ると君が死んでいた」というフレーズから始まって、「海の中から首を出して暮れてゆく町や山脈を眺めていたい」とかシュールに展開してゆくんですよね。

30.JAGATARA / でも・デモ・DEMO
そして日本人アーチスト・グループで、オレの中で燦然と輝くのはこのJAGATARAでしょう。ジャパニーズ・アフロ・ファンク・バンドなんてぇジャンル分けされてますが、カッコよさだけじゃなく、どこか、悲痛で、そして狂気とカオスに満ちてるんですよね。日本人って暗いね!性格が暗いね!ライブにもしょっちゅう行ってたし、とっても好きだったな、JAGATARA。でもバンド・リーダーの江戸アケミが変死してバンドは解散、あの時は本当に寂しかった。

31.MUTE BEAT / AFTER THE RAIN
JAGATARAと並んで好きだった日本人アーチスト、ジャパニーズ・レゲエ・バンドMUTE BEAT。彼らのライブもよく行きました。レゲエのくせに侘び寂びなんだよなあこのバンド。特にこの曲の煌く様な美しさと侘しさは無敵でした。

32.THE SMITHS / I KNOW IT'S OVER
さて人生ドン詰まったオレの青春時代に最後の止めを刺したのがこのThe Smiths。自意識過剰なだけの井の中の蛙みたいなダメ人間に「プライドばっかり高いけど、そんな君と今夜過ごしてくれる友人や恋人はどこにもいないよね?」と歌う内容のこの曲には臓腑をえぐられるような気持ちでしたよ!聴いててホントに辛かったよ!これ聴きながら「ホントにダメなんだなオレ…」って思い知ったよ!

33.RADIOHEAD / FAKE PLASTIC TREES
暗いトンネルをずっと歩いているみたいな20代も終わり30歳もすっかり過ぎたけどさあ、やっぱり暗いトンネルは終わんなくて、で、相変わらずオレはメソメソばっかりしてて、女の子にも当然モテなくて、「空っぽな人生だなあ」とか思いながらこの曲聴いてたら、日差しが眩しくて明るくて、空気はとても美味くて、世界はまだきちんとそこにあって、そしてオレはどうしてこんなに寂しいヤツになっちゃったんだろう、としみじみ思ったんだ。

34.MADONNA / INTERVENSION
2004年、はてなダイアリーを始めたばかりの年、オレは自分の日記にこんなことを書いていた。「マドンナはオレにしては似つかわしくないビッグネームですが、実はこのアルバムはマドンナにしては恐ろしく内省的で個人的で静かな祈りみたいな音楽だったんですよ。ギターに微妙にザラついたエフェクトを掛けて、どこか索漠とした孤独感や現実の味気なさを感じさせる音に仕上がってるんです。何しろよく聴いた。INTERVENTIONという曲はオレが心の中で何度も何度も何度も歌った曲だ。「全ては変わって行く 自分の生活と向き合わなきゃ 今日がその日 今日は新しい日 さあ目を覚まして 夢から醒めなさい」。生活も人生もドン詰まっていたオレにこのメッセージは傷薬のように沁みた。オレが覚めなければならない夢はオレを苛んでいた孤独感や飢餓感や嫉妬や憎しみだった。ただただ愛されない事が辛かったのだ。けれどその感情はどこへ行くでもなく、オレ自身を石臼のように磨り潰していた。でも、《全ては変わって》行かなきゃならないんだと思った。いつまでもこの感情の中に居る訳には行かない。そしてオレは、手慰みだったけれど、この《はてな》を始めたんです。」

35.PET SHOP BOYS / IT'S ALRIGHT
PET SHOP BOYSはデビューからずっと好きなデュオで、虚無感に満ちた曲を多く作っていたけど、その虚無感が、聴いていた頃の自分の心象にとてもフィットしていたんだろうね。でもそんなPet Shop Boysが、とうとう、「IT'S ALRIGHT」と歌ってくれた時に、自分はやっと「ああ、もういいんだ、きっとみんなよくなってゆくんだ」と前向きになれるように思えたんだよ。

36.FRANKIE GOSE HOLLYWOOD / TWO TRIBES
あの頃は暗い音楽ばかり聴いてたけど、Frankieのこの曲を聴いたときはなんだか体がムズムズとして無性に踊りたくなったよね。そして踊ると、開放された気持ちになったんだよね。音楽で踊る楽しさとかって、New Orderもそうだったけど、ニューウェーブ・バンドのこのあたりで知って、踊ることがとても素晴らしいことが分かったんだ。

37.THE TODD TERRY PROJECT / BANGO (TO THE BATMOBILE)
そしてハウス・ミュージックが登場する。延々と続くビートに乗り続けることの幸福感、忘我、開放感。もうウジウジとロック聴いてる場合じゃねーな、と価値観がぐるっと変わった。もうあとは踊るだけだ、と思ったんだ。
2004年に書いた日記より。「1988年、遂にハウス・ミュージックと遭遇する。トッド・テリー、コールドカット、ボム・ザ・ベースが最初だった。今から考えるとハウスではなくブレイク・ビーツになるんだろうが、この当時はこのテの反復ビートは全部ハウスで一括りにしていた。ただただビートが気持ちがよい、という機能のみを追った音楽。この辺の事は最近のことなんで全部はしょるね。この日以来、オレはありとあらゆるクラブ・ミュージックを聴いた。ヒップホップも、ドラムンベースも聴いた。レゲエもダブも。アンビエントトリップホップも。アシッドもトランスも。リズムと電子音の反復を聞いているだけで楽しかった。で、楽しい、だけで、いいじゃないか。そこには余計な観念性も人間らしさも存在しない。脳と身体に直接訴えかける音の振動と音圧、質感。心は無にしていればよい。というか、そもそも、音楽は、心を無にするものであるはずではなかったか。クラブ・ミュージックは進化した音楽ではなく、西欧文明が構築した平均率の支配から音楽を開放し、よりプリミティブなものへと還元する音楽なんだと思う。メロディーやハーモニーではなくひたすら音の大きさ、リズム、質感にこだわるのは、感情にではなく身体に訴えるためのものだ。そして人が踊るのは、人間であると云うことの観念性の底に埋没した自分の身体性をサルベージし、再認識する為の行為なんじゃないだろうか。ようするに、「人間もけだものであることを思い出せ」って事なんだが。踊ろう、そして、人間である憂いを忘れ、けだものである喜びに打ち震えよう。そもそも、犬や猫には幸福も不幸もねえ。なぜなら、ただただ、生きている、という状態そのものが、喜びであるのだから。」

38.BOMB THE BASE / BEAT DIS
このBOMB THE BASEもTHE TODD TERRY PROJECTと並んでよく聴いたなあ!

39.BABY FORD / OOCHY KOOCHY
BABY FORDの鬱展開アシッドも相当聴いた。

40.808 STATE / PACIFIC STATE
808 STATEもロックからダンス・ミュージックへと移行するきっかけとなった。踊るのってなんて楽しんだろう。

41.RHYTHIM IS RHYTHIM / IT IS WHAT IT IS
そして遂にテクノ・ミュージックに遭遇。RHYTHIM IS RHYTHIMDerrick Mayの変名ユニットだけど、この曲は、ある意味享楽的で刹那的なダンス・ミュージックとどこか違って聴こえた。なにか、【意志の力】みたいなものを感じたんだ。
2004年に書いた日記より。「音楽でしか救われない、という状況を想像したことがあるだろうか?世界の全てから拒絶された彼らにとって、ただ一つの救いは、音楽とダンスの歓喜と高揚の中で全てを忘我すること。世界が24時間の情事であるかのように生きること。射精は一瞬だがダンスの絶頂感は延々と続くからだ。永遠に続くかと思われる歓喜を生み出す為に発明された音楽。それがハウスミュージックである。そしてこのハウス・ミュージックの思想はその後のテクノ・ミュージックに受け継がれることになる。」

42.OCTAVE ONE / I BELIEVE
OCTAVE ONEのテクノ・チューン「I BELIEVE」は確信に満ちた力強いリズムと美しいメロディに乗って「I BELIEVE YOU AND ME」と歌う。

43.X-102 / GROUNDZERO
Jeff Millsの変名ユニットX-102は恐ろしくハードにドライブするエレクトロ・サウンドだった!

44.CARL CRAIG / AT LES
そんなテクノ・ミュージックにもこんな静謐で美しい叙情を湛えた曲があった。テクノ・ミュージックの奥深さに感嘆した。
2004年に書いた日記より。「日本にはわかりやすいゲットーもわかりやすい貧困もない。皆が皆同じ様な生活をしていると信じて幻想のプチブルジョアの世界で仲好しこよしだと思い込もうとする。そこには逸脱もなく脱線もない。しかし具体的な貧困なんかなくとも自分たちの世界・社会がどこかで空洞化・空虚化していっているのを気付いている人はいるんじゃないだろうか。例えばカール・クレイグの“At Les”というタイトルのテクノチューン。カール・クレイグはこの曲を、デトロイトの夜と、満月と、廃虚のサウンドトラックのような曲だ、と言った。オレはそんな事は知らなかったが、静謐で、孤独で、しかしどこかで魂の温もりを感じさせるこの曲を、東京の夜空を仰ぎながらいつも聴いていた。多分その時、オレは、カール・クレイグと同じものを心の中に見出していたのだと思う。」

45. GALAXY 2 GALAXY / JOURNEY OF THE DRAGON
そしてLaurent GernierのMixアルバムでこの曲を知った。力強く疾走感に満ち、そして美しい詩情と切なさを併せ持ったエレクトリック・ミュージック。なんて素晴らしいのだろうと思った。そして自分が今まで気に入って聴いていたテクノ・ミュージックが、全てデトロイト・テクノだったと初めて知ったのだ。全て繋がっていたんだね。それから自分は心からテクノと、そしてデトロイト・テクノを愛するようになった。そしてオレとテクノの旅はまだ終わらないんだ。
2004年に書いた日記より。「デトロイトの廃虚は日本にはない。しかし空疎化した世界という廃虚のような心象はどの世界のどの人間も持ちうるものなのではないか。オレがデトロイトテクノを聴き、その音楽を美しいと思い、その音楽に心を奪われるのは、システムからこぼれ落ちた一人の人間として、心象の中にどこか廃墟のような光景が居座り続けているからなんだと思う。そして“ここではないどこか”に救いと安らぎを求めたいと思う気持ちもまた。メランコリーと確信犯的な現実否定の音楽。アウタースペースとコズミックワールドを目指す音楽。約束されたサイエンスフィクション的未来についての音楽。廃虚の存在する世界のありとあらゆる心と場所で、デトロイト・テクノは鳴り続ける。時計仕掛けのソウル・ミュージック。それが、テクノ・ミュージックである。」

最後に一言…うわあ、自分語りし過ぎ…。