■プリースト (監督:スコット・スチュワート 2011年アメリカ映画)
- 予告編を観た印象がヴァンパイア+サイバーパンクな世界観+でもゴシックな宗教世界で、「おおこりゃどんな映画になっとるんじゃろ」と思い観に行ったのである。
- ヴァンパイア対人類の戦いは長きに渡り、大地は荒廃し人類は膨大な死者を出したが、究極の戦士【プリースト】の登場によりからくもヴァンパイアに勝利していた、という未来。
- ヴァンパイアたちは居留区に押し込められ、人類は城砦に覆われた信仰を絶対とする全体主義の都市に住んでいた。
- この"全体主義国家都市"が陰鬱で『ブレードランナー』の都市みたいで、さらに「信仰しろ信仰しろ信仰しろ思いっきりハードに信仰しろ」と常にスローガンが放送されているところが『1984』あたりを思い出せて雰囲気があるのね。
- 主人公は究極兵士【プリースト】なんだけど、この時代には既に対ヴァンパイア戦争は終わっちゃってるからしがない退役軍人みたいに過ごしている。
- で、ある日主人公は兄夫婦がヴァンパイアに襲われ姪の女の子がさらわれたという事を知らされ、「助けに行きたい!」と最高為政者である協会に嘆願するんだけど「もうヴァンパイアいないことになってるからそんな話ありえないし外に出たら破門するからそこんとこヨロシク」とけんもホロロの対応、でも「ンなの知ったこっちゃねえ!」とばかり主人公は外の世界に出ちゃうんだね。
- このとき主人公が乗るのが『AKIRA』にでも出てきそうなカッコいいバイクで、このバイクは最後まで活躍する。
- 城塞都市を出るとそこは一面の荒野。朽ちかけた巨大な彫像の列が突然現れたかと思うと、過去に滅び瓦礫となった都市が広がっていたりする。
- この荒野の雰囲気もとってもいいんだね。ちょっと『ジャッジ・ドレッド』とか『最後の猿の惑星』あたりを思い出したね。
- で、主人公は仲間となったある青年と一緒にヴァンパイア追跡を始める。ヴァンパイアは荒野を走る鉱石貨車に潜んで都市を襲おうとしているらしい。
- でもこっからがなんかイマイチなの。
- サイバーパンクな世界がいきなり西部劇になっちゃうんだもの!
- バイクは馬で、荒野はなにしろ荒野で、なんだか宿場町みたいのがあって、悪漢の乗った列車を追跡するって、これまんま西部劇のコンセプトじゃん。
- いろんな要素をミックスして独特な世界を生み出そうとしたのはわかるんだけど、オチが西部劇って…いや、今度公開される『カウボーイ&エイリアン』は観に行くけどね!ってか『カウボーイ&エイリアン』も段々心配になってきたが…。
- 主人公は信仰を捨てた者として別のプリーストたちに彼の抹殺指令が出るんだけど、このプリーストたちがまたしょぼい扱いで気が抜けるのね。
- それと城塞都市の外を出たら神の恩寵を捨てたことになる、とか言いながら荒野に住んでいた兄夫婦とか宿場町の連中っていったいどういう扱いってことになるの?
- そもそも十字架をモチーフにしたサイバーな武器をいっぱい駆使してカッコイイ戦いをするのかと期待してたら、最後は結局殴り合いでさあ…。
- ハリウッド・アクションによくあるんだけど、「最後は殴り合い」ってあれどうにかならんもんか。昔『ユニバーサル・ソルジャー』観て現代科学の粋を凝らしたスーパー戦士が最後は泥臭い殴り合いで決着を付けるのを見てがっかりした記憶が蘇ったなあ。
- ダークな世界観を期待していたら西部劇だった、っていうのが乗れなかった原因かなあ。でもずっとダークな世界観だったヴァンパイア映画『アンダーワールド』もぱっとしない映画ではあったが…。
- 監督は『レギオン』のスコット・スチュワートで、そういえばあの映画も大風呂敷広げた設定なのにやってることはチッチャイという映画だったなあ。
- でもヒロインで出てきたマギーQが結構良かったかな。