■恐るべきカルト・カンフー・ムービーッ!?
以前、侍功夫さんとお会いしたときに手渡された1枚のDVD。そのタイトルは『Return Of The Chinese Boxer』。そして侍さんは、「ボクが見た全てのカンフー映画の中で最高の1本です」とオレに告げた…。監督・主演はあの『片腕カンフー対空飛ぶギロチン』のジミー・ウォング!おおおおおこれは期待も高まるというもの!そして…家に帰ってから観たその映画は、想像を遥かに超えた、恐るべきカルト・カンフー・ムービーだった…。そしてオレは確信した、「これはカンフー映画版『エル・トポ』だッ!?」と!!今日はそんなジミーさんの大傑作を全篇紹介したいと思います。最後までネタバレしまくりますがそれもこの映画の楽しさを伝える為、どうかご容赦下さい。
物語は…物語はええと、字幕無しの英語版だったのでよくわかりません。オレにヒアリングなんて無理だよ!無理なんだよ!しかしね!悪い日本人が中国にやってきて、良い中国人に悪さして、そしてジミーさんがそれを懲らしめるというお話ということで間違いない筈だよッ!?もうね、オープニングのジミーさんの演舞からしていかがわしさ満載です。なんかゴミ袋みたいな人形と戦ってるんですが、そのジミーさんの演舞、殆ど特撮です。カンフー映画で身を立てた人がこれでいいんでしょうか。いや、いいんです。だってジミーさんだし!それらしく見えればそれでいいんですよ!
●これがオープニングの演舞だッ!?
■銃身の多い銃!そして凶器は大根!?
続いて悪い日本人たちのアジトお屋敷が描かれます。チョンマゲかみしもの悪い顔したお侍さんが英語で悪巧みしている時点で既にシュールさが漂っていますが、その後中国に渡ったらしいこのお侍さん集団、なんと蒸気機関車で大陸を横断してるじゃないですか!?いやまああの頃既にあったんでしょうが、列車の席にちんまり並んで座るお侍さんたちという絵ズラがさらにシュールさを増しているんです。そしてそこに襲撃者登場!それを迎え打ち、機関車からズドンズドン銃を撃ちまくるお侍さんたち!おいおいなんだそのやたら銃身の多い銃は!?ズドドドドとか撃ってるけど機関銃なのかよ!?普通に無茶だろそれ!?もはやこの時点で自分がカンフー映画観てるのか時代劇観てるのか西部劇観てるのか全く訳が分からなくなっています!
●これが【やたら銃身の多い銃】だ!?
さて場面は中国のどこかの山道。身分の高そうな人を輿に乗せた中国人の従者の列を、野菜を積んだ八百屋の人力車が突然阻みます!八百屋、いきなり大根を投げる!そしてなんとその大根が胸に刺さり絶命する従者!大根で死ぬのかよ!?と思ったらその大根、ナイフが仕込まれていたんですね!いわゆる大根手裏剣だったんですよ!スゲエ!ってか大根に仕込む意味全然ねーし!そしてその中国人一行の危機を救うべく現れた我らがジミーさん!ひゅーひゅー!向うところ敵無しの勢いで悪者を血祭りにあげるジミーさんです!しかしジミーさん、あんた、今までどこで何やってたの?
●うわああ大根が刺さったぁ!?
■ジミーさんに重力は存在しないッ!?
そしてまたまた舞台は変わり、悪い日本人の皆さん主催、『第1回・チキチキ武芸トーナメント・顔が不細工でも腕力あったもんの勝ちなんじゃい!』大会が唐突に開催されます!ってかこれ『片腕ドラゴン』でもやってなかったっけ!?ジミーさん間が持たなくなると異種格闘戦やって場を繋ぐ癖があるようです!そして今回のトーナメントは日本人(ぽい)武術家がメインなんですが、例によって怪しすぎる連中総出演、もうどこをどう突っ込んでいいのかわからないほど楽しく愉快な戦いが繰り広げられます!オレが気に入ったのは孫の手で戦うヤツだな!
●くらえ!孫の手拳!?
でまあそこで勝ち残った武蔵坊弁慶みたいなヤツが次の刺客として中国の偉い人のところに送り込まれます!得意の槍を振りかざし偉い人に襲い掛かる弁慶(もどき)!しかーし!「ちょっと待ったあ!」そうです、ジミーさんです、ジミーさんがやってきまし…ん?おーい!ジミーさんが垂直に地面に突き刺さった槍の柄の上に乗って「わっはっは」とか笑ってるよ!?なんなの!?なんなのこの無意味に難易度の高い登場の仕方!?なんでここで上海雑技団やってんの!?
●「高い所にいると、自分が偉くなったような気がするんだよ、うん」
映画ではこの弁慶もどきのみならず、全身ナイフだらけのナイフ使いや九の一やムエタイ戦士、さらに二丁拳銃どころか十丁拳銃みたいなガンマンが次から次へとジミーさんを襲ってくるのです!いずれも一癖も二癖もある憎々しい面構えの連中ばかりなんですが、ジミーさんのふてぶてしさにはある意味負けています!だってジミーさん、あまりに余裕たっぷりのドヤ顔で敵を倒すから見ていて時々イラッとくるんですよね。
■ゾンビ3兄弟の登場!?そして最後の卑怯な闘い!?
さて様々な刺客を放つ悪いお侍さんたちですが、どれもジミーさんにことごとく撃破、なかなか悪い事を成就できません。そこで悪いお侍さんたちは夜の闇の中とある儀式を執り行うのです…不気味な呪文により3つの箱の中から現れたのは3体のゾンビ…っておいおいッ!?今度はゾンビかよッ!?なんでもありすぎだよこの映画ッ!?カンフー映画で時代劇で西部劇で今度はゾンビ映画、まさにカオスです。「面白そうなことなら全部やってしまえ!」とばかりにやりたい放題詰め込んだ監督・主演ジミーさんの天晴れと言うしかない見事なエンターティナーぶりにもはや脱帽、しかし映画を観ている時に帽子は被っていなかったのでとりあえずパンツを脱いでしまったオレであります!ジミーさんあんたスゲエよ!
●3人揃ってゾンビ、ゾンビ、ゾンビ3兄弟♪
そんなゾンビ3兄弟の奇襲をジミーさん、機転を効かせてなんとか殲滅、いよいよ最後に残った十丁拳銃ガンマンとの雌雄を決する闘いへとなだれこんでゆくんですな!しかしジミーさんには作戦があった!ガンマンをとある屋敷におびき寄せます!屋敷に入ったガンマンはそこで見たものに驚き立ちつくします!なんと屋敷の中は、【ジミーさんそっくり人形】で溢れかえっていたのです!「くっ!どれが本物なんだ!?」狼狽するガンマン!そのガンマンの後ろに忍び寄り、ここぞとばかりにボコボコにする情け容赦ないジミーさん!いやしかしこの罠、正義の味方がやるにしてはあまりにも汚い手すぎないかッ!?ある意味悪モンよりも悪巧み巡らせてると思うぞ!?だいたい、こんな人形いつ作ったんだよッ!?この日の為に毎晩夜なべして1体1体シコシコ作ってたのかよジミーさん!?あんた…ホントはヒマなんじゃないのかッ!?
●さあ、ホントのジミーさんはどれ?
■それは『エル・トポ』だったッ!?
いやあ…堪能しました。本当にスゴイ映画を観せてもらいました。単なるカンフー映画の範疇にとどまることなく、様々な要素をぶち込んだごった煮感覚で作られていますが、にもかかわらず決してちぐはぐになることなく、最後は最強の男同士の闘いで〆る、というこの安定感。カンフー映画というのは料理で言うとカレーに似ていますね。どんな食材を使ってどんな調理をしても、最後にカレースパイスをかければそれはカレーである、みたいに、カンフーのスパイスによって全ての要素はカンフーに統一される、みたいな。そして、敷居が低く誰にでも愛される。
オレ、この映画を観て思ったのは、最初に書いたけどアレクサンドロ・ホドロフスキーの『エル・トポ』みたいだなあ、ということなんですよ。それも神秘主義の変わりにタオイズムを導入した『エル・トポ』ね。あらゆる要素を飲み込み全ての要素がカオスとなり、国境も時代も時空も超越したどことも知れぬ荒野の真っ只中で、超絶的な戦闘能力を持った男たちが果てし無く戦いを繰り広げる、荒唐無稽でサイケデリックでショッキングで、そしてなによりもアナーキーかつ狂ったカルト・ムービー、『エル・トポ』とこの『Return Of The Chinese Boxer』はそんなところが共通していると感じたんですね。そして『Return Of The Chinese Boxer』が『エル・トポ』より優れているところは、何にも考えずに楽しめる優れたエンターティメントだということなんですよ。かなり入手困難な作品で、一般の方はなかなか観ることが出来ないと思いますが、もし手に入れる機会があったら、是非観てほしい作品ですね。最後に、貸してくれた侍さんありがとう!
■『Return Of The Chinese Boxer』迷場面・珍場面集
■『Return Of The Chinese Boxer』DVDジャケットの謎
…これ、普通に『片腕ドラゴン』の時のジミーさんの写真だと思います。
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