グラインドハウス3本立て!〜その1『悪魔の調教師』

■悪魔の調教師 (監督:アラン・ルドルフ 1973年アメリカ映画)


アメリカのどこぞの砂漠で女子を拉致っては鎖に繋いで監禁し、「ボクチンお前らを調教してサーカスをやるんだぞうー」などと訳のわからない事をわめきながら芸を仕込んでいたすっかり頭の膿み切ったお兄ちゃんのお話なんですな。おまけにこのお兄ちゃんのお父様っていうのが核実験の影響で全身アカムクレで頭もイカレており、旅行者を襲っては血祭りにあげてたりしています。要するに愉快な基地外クソ親子が今日も一日基地外三昧で楽しいな!というハートフル家族物語というわけなんですわ!

しかしこの映画、タイトルや粗筋から想像するほど陰惨じゃないのが逆に妙な映画なんですな。おぞましいサーカス小屋に拉致され調教される美女たち!と聞くとやはり淫靡!陵辱!変態行為!性の奴隷!いやんやめて!そんな恥ずかしいポーズなんか取れない!ああ!動物とあんなことやそんなことを!私もう壊れちゃう!ひいい!などなどどこまでも果てしなく鬼畜で愚劣な状況を妄想してしまい、観る前からハァハァと前かがみになりそうなものですが、実はこの映画、そういう爛れたシチュエーションは全然展開されないんですわ。

で、何やってるかと言うとこのクルクルパー兄ちゃんが普通に女子の皆さんに芸を仕込んでいるんですな!「はーい輪になってー。グルグル回るよー。はーい両手水平に上げてねー。そしてみぎひだりー。あ!そこそこ違うって!もーちょっと真面目にやってよー。これじゃサーカスにならないよー」とか「さ、蛇の真似するよー。そこでのたうって見せてー。ほらほらもっとウネウネしなきゃ蛇に見えないよ蛇にー」とか鞭振りながら言っちゃってるわけです。いやあ、実にマイルドなキ印ですね!しかもこのお兄ちゃん、割とイイ男なんですが演技がクサイ。『悪魔のいけにえ』の世界にジム・キャリーが紛れ込んだとでも言えばよいでしょうか。このなんだかミョーな雰囲気がこの映画をカルト映画たらしめているのかもしれませんな!

さてアカムクレお父さんのほうは言う事を聞かない女子を血祭りに上げたりしてそこそこ見せ場を作ってたりするんですが、これだったら最初からお父さんに芸を仕込んで見世物小屋に出したほうが客呼べそうなんじゃないのか?とかちょっと思っちゃいました。そもそも、息子に比べてこのお父さんの影があまりに薄い。しかも離れの便所みたいな小屋に住まわされて実に不憫。多分息子の方も「ジジイは便所にでも住んでハエにたかられてろ!ギャハハハ!」と思ってたんだと思います。そのせいでしょうか、最後の最後は大暴れ!溜まりに溜まったもんが噴出したのでありましょうや!あたりは血の海、屍の山!やんややんや!アカムクレお父さん、本当に強いのは俺なんだぞう、と堂々自己主張して映画は幕切れとなるわけです!

悪魔の調教師 [DVD]

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