迷路の話、その他の話

またしても子供の頃の話。
冬になると雪が全てを覆った。オレの家の近所は空き地が多くて、どこもかしこも白い平原みたいだった。一晩で膝ぐらいの高さまで積もっていた。この雪の積もった空き地での遊び。誰もまだ踏んで無い雪を踏み締めて、大きな迷路を作るんです。そして、この迷路の線上で、追い駆けっこをするんです。線から線へ飛び越えるのはOK。迷路のドン詰まりに追い詰められたり、踏み締めて無い雪の上を踏んでしまうとOUT。
また別の話。
この雪の広場でのもう一つの遊び。それは「雪男の足跡」ごっこ。やはりまっさらな雪の上を踏み締めて、1mぐらいの大きさの裸足の足跡の形を作っていくんです。足の指が靴底の大きさぐらい。この大きな足跡を、右足、左足、と、あたかも大男が歩いていったような間隔で作ってゆく。出来上がってから眺めると、大きな雪の広場に、巨大な雪男がやってきて、そしてどこかへと去っていったような光景が広がります。
また別の話。
新雪の上にダイブする。すると雪の上にクッキー型みたいに人の形が出来る。この時、両手を上下に動かすと、人の形が、まるで翼が生えている人の形のように出来上がる。いつか読んだジェフ・ライマンという作家の「夢の終りに…」という小説で、おなじ情景が出てきてはっとした。小説では「天使の人型」と呼んでいた。小説は「オズの魔法使いのドロシーにはモデルがいた」という設定のフィクションですが、その現実のドロシーは、物語とは裏腹にとても悲惨で哀れな人生を歩んできた女性だった、というお話で、今でもこの物語の事を思い出すと奇妙に切なくなる。
また別の話。
その雪の道々によく、切り取られた鳥の鉤爪が落ちていた。多い日は、一日に2つも3つも見つける事があった。これは、怖かったですね。目の前にポツネンと橙色をした鳥の鉤爪だけが転がっているんですから。妄想ばかりしていたガキのオレは、またもや未知の怪生物の仕業かと思って恐れ戦いていました。真相は、近所の畜肉加工場で棄てられた鶏の残骸を鴉が取って来て、食べられないので捨てて行ったんだと思う。
また別の話。
天気のいい日、空を見上げていたら小さな輝くものが上空を横切っていた。人工衛星なのかな、と思った。でもその人工衛星は途中で直角に曲がり、そして消えてしまった。
また別の話。
その日も空を見上げていた。雲がどんどん流れていくのが見えた。オレはふと、これは雲が流れているんではなく、空は止まっていて、地球が動いているんではないか、と思った。そう思ってしまうと、地面が物凄い早さで回っている事が体に感じられてきた。地球すげえ、メリーゴーランドみたいだ、と思った。
そしてまた、別の話。