- 出版社/メーカー: キングレコード
- 発売日: 2003/08/06
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この映画は、デビッド・ボウイの曲がサントラで使用され、さらに彼自身も特別出演しているという曰くつきで公開されたんですね。主人公の少女、クリスチーネFがボウイのファンだったのですが、ティーンらしいロック・ミュージシャンへの憧れと、奈落へと落ちていく現実との対比がこの映画を独特のものにしているのかもしれない。
当時ボウイはベルリン制作の3部作を発表したばかりで、あの《LOW》《HEROES》の金属的でハードなロックンロールと冷たく重苦しいシンセサイザー音が、暗く沈んだドイツの町並みのBGMとしてとてもマッチしていた覚えがあります。
ドラッグを巡る物語というのは、日本で普通に生活していると理解し難いものがあります。映画で言うとドラッグストア・カウボーイとかトレイン・スポッティングの一場面とか。ただし裸のランチはクローネンバーグの幻覚イメージがグロテスクでありつつも秀逸で、これは楽しめた。あとP・K・ディックの後期の作品、暗闇のスキャナーやヴァリスなどは実はオレにはよく判らなかった。音楽だと、ロック・ミュージックはドラッグ・カルチャー無しでは語れない部分もあるだろうし、レゲエなども、「ガンジャ」を主題とした音楽が多く、強力にドラッグの影響下の元で作られているのは判る。クラブ・カルチャーなんていうのもドラッグ抜きでは語れませんしね。
でも、ドラッグ体験の悲惨さ、というのはやはりピンときません。海外では、ドラッグが手に入りやすい環境があって、海外に行ってきた知り合いなんかに訊いてもそれらしい話を訊くことはできるし、日本でも、そんな友人とクラブなんかに行くと、「あ、あっちで吸ってる」なんて露骨に判るらしいんですが。ただそれにしたって遊びの範疇で、人生が破綻するほどのドラッグ摂取って、日本じゃせいぜい三面記事ぐらいでしか見られないんじゃないかなあ。
物語のハイライトはやはりボウイのライブのシーンだろうか。ここで演奏されるのは名曲中の名曲「スティション・トゥ・ステイション」。ステージに登場するボウイさんは全身に緊張感を漂わせ、全ての動作が計算し尽くされているかのような素晴らしいステージ・アクトを見せます。このテンションでステージ全編見せられたら凄かっただろうなあ。ステージ衣装の赤いスイングトップは?だったけど。サントラのセレクトもこの時代のボウイを代表する曲ばかりで、ベストアルバムとして聞いても面白いかも。
映画ではボーイフレンドと仲良くなりたくてドラッグに手を出す主人公ですが、「その程度でドラッグ?」などとドラッグ禍の少ない日本に住んでいるオレなんぞは思ってしまいます。しかし逆に動機付けなんか必要ないぐらいドラッグが日常的に蔓延っている所では、その些細さがこのように容易く悲劇的な状況になってしまうと言う事なのでしょう。映画として面白いかどうかは観る人によると思いますが、いわゆる「ガールズ・ムービー」の一本として取り上げているサイトもあって、そういう観方をすればまた違った感想になるのかもしれません。
重苦しいテーマの映画ではありますが、前半の、登場人物の少年少女達が夜の街を駆け抜けていくシーンでは、バックにボウイの《ヒーローズ》が流され、そこだけ夢のような高揚感に満ちていて、その後の少年少女たちの”道行き”を考えると、とても切ない映像に仕上がっています。
- アーティスト: デヴィッド・ボウイ
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2001/09/19
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