少林寺三十六房

少林寺三十六房 [DVD]

少林寺三十六房 [DVD]

今オレの中で密かなブームになっているもの、それはカンフー映画である。バーチャファイターパイ・チェン風に言うならクンフー映画である。*1やはり男に生まれたからにはカンフーの技と精神に一度は憧れるものなのではないか。カンフー映画の歴史は古いので、今古典的な名作と呼ばれるものをちまちまと見ているところである。
という訳で《少林寺三十六房》である。オープニング、勇ましい音楽に乗せて主人公の拳法の演武が華麗に披露される。こっから既にテンション上げまくり、暑苦しさ全開と言って良い。掴みはばっちりである。
さてこの映画のタイトル、「三十六房」とは少林寺拳法の技を会得する為の36のステップであり、それぞれが様々なスキルを鍛え上げる為の修行の部屋となっているのである。(実際は最初三十五房であり、主人公が最後に三十六房目を作る、というストーリー)
この各部屋での奇想天外な修行の様子がこの映画のキモであり、見所。…えー、今見るとお笑いタレントが総出演するようなバラエティ番組状態なんですが、それを眉間に皺寄せ歯を食いしばってガムバッテいる様子がナイス!
例えばパチキ*2をキメる修行では吊るされた何十という砂袋に次から次へ頭突きでアタック!次第にヘロヘロになって尻餅をつく主人公に師範代は「立て!立つのじゃあ!」と無謀な喝を入れる!そして主人公、「やる!俺はやってみせる!」と鮮やかに復活してその後荒馬のように次々と砂袋にアタックして行きます!最後まで辿り着いた主人公、天晴れな笑顔を輝かせ「やった!俺はやった!」「そうじゃ!それでこそ少林寺を極めんとする男じゃ!」とかなんとかいう会話が交わされます!(だったような気が。うろ覚え。)男ってもんはなあ、理屈は二の次でいいんじゃあ!例えアホアホと言われようが取りあえず手と足動かすんじゃあ!遣り遂げて見せるんじゃあああ!という気迫が伝わってきます。一人の漢として、ここは涙を流さざる終えない感動的なシーンです。(ホントかよ)
ところで気になったのですが、少林寺三十六房、とかいいますが、三十六の修行場にそれぞれ二十人の修行者、五人の指導者がいるとして、36X25=900人あまりの人間がここにはいるのでしょうか?いえ、拳法の修行をしている人間ばかりではないのでその倍として1800人もの鍛え上げた肉体を持つ逞しい男達が、人知れぬ山奥で幾日も幾日も経文を唱え血と汗と泥にまみれて拳法修行し飯食ってウンコしているということになるのでしょうか。何かその光景を想像すると汗と線香の交じり合った饐えた匂いが漂ってきそうで喉元まで甘酸っぱいものが込み上げて来るような気がするのはオレだけでしょうか。
さて、少林寺の究極の技を会得した主人公は山を下り、水滸伝アストロ球団かと思わんばかりのユニークな仲間たちを集め、骨軋み肉裂ける血みどろの復讐へと繰り出すのです。
オレの高校時代の国語教師がこの映画を観て突如少林寺に目覚め、いきなり頭を丸めて授業に参上した時にはビビッた。いつもひ弱そうな笑みを浮かべる見るからに人畜無害そうな教師であったが、その内面にはきっと滾る様な「漢」の血潮が渦巻いていたに違いない。でも頭を丸めただけでは単に「罰ゲーム?」としか見えない所がひよわな人生を生きてきた男の悲しさではあるが。しかしだ。男とはある日こうして克己するものなのである。それが勘違いの場合がかなり多いにせよ、そもそも、男って奴はこういう間の抜けたロマンに憧れる生き物なのだと思う。でも、それでいいんじゃないかと思う。カッコつけてる暇なんぞあったら、馬鹿になるべきなのだ。オレはそんな奴の方が100倍信用できる。

*1:あなたにはクンフーが足りないわ!

*2:頭突き